日本独自の進化を遂げるケータイアイテム
毎回、新たな発見や刺激に満ちているミラノサローネ。世界中から何万ものデザイン関係者が集まるこの時期は、諸外国のデザインに触れると同時に、改めて世界のなかでの「日本」を知る絶好の機会でもあります。
日本のオリジナリティーや強みとして、世界をリードする革新的テクノロジーや、伝統と確かな技術に裏打ちされたディテールの美しさなどが挙げられます。今回もキヤノン、カネカ等のハイテクノロジー系企業から、上出長右衛門窯やマルニをはじめとする伝統工芸や木工家具メーカー等が作品を発表しました。
そんな中、日本が世界に誇れるジャンルの一つである「ケータイ」のモバイルアクセサリーも、日本独自の進化を遂げるアイテムとして見逃せないものとなりました。
「ケータイにアクセサリーを付ける」行為は、日本独自の文化?
なかでもKDDI「iida」とイタリアの老舗ステーショナリーメーカー「NAVA」のコラボレーションによるモバイルアクセサリーは注目を集めました。カリム・ラシッドやジェームズ・アーヴィン、ミラノ在住デザイナー伊藤節・志信氏などビッグネームのデザイナーによる、スマートフォン向けアクセサリーのプロトタイプが発表されました。
そもそも、我々日本人には一般化している「ケータイにアクセサリーを付ける」行為も、欧米では浸透していないようです。そのため、今回のプロジェクトでも海外デザイナー達にデザインを依頼する際に、まず「ケータイアクセサリーとは何か」の説明から始まったのだとか。
伊藤節氏/志信氏は、革新的な衝撃耐性を持つポリプロピレンを素材に、スマートフォンケースをデザインしました。軽量で特有の触感をもつポリプロピレンを、ユニークなかたちで取り入れています。【写真3】
カリム・ラシッド氏は、非対称のフォルムをもつデジタルプリントレザーのスマートフォンケースをデザイン。テクノポップ時代のデジタルツールと、新しい美的感覚を融合させています。プラスティックの穴にはストラップを通せるようになっています。【写真4】
レザーとストレッチ素材で構成されたスマートフォンカバーは、ジェームズ・アーヴィン氏のデザインです。バイク用ジャケットのようにタイトでありながら、開けるとスマートフォンが現れます。【写真5】
デザイナー達にとってもモバイルアクセサリーのデザインは未知の領域だったそうですが、デザインだけでなく素材の組合せも革新的で、新鮮な印象を受けました。
日本ならではの繊細なモノづくりをモバイルアクセサリーにも
iida以外にも、日本発モバイルアクセサリー新ブランド「JUNIJUNI」のプロトタイプ展示が、イタリアのPCバッグメーカーTUCANOにて行われました。「JUNIJUNI」のプロデュースを手がけるのは、iida及びauのデザインディレクションを担当する小牟田氏率いるKom&Co.Designです。ブルートゥースによる着信を受けて発光するイヤホンやスピーカーなどが展示されていました。
「モバイルアクセサリーとしての新しさとオリジナリティを特に意識した。日本ならではの繊細なモノづくりを世界の人に知ってもらえたら嬉しい」と、担当デザイナーの迎さん。こちらの会場でも、来場者の方々は皆、「モバイルアクセサリー」について興味深げに見入っていました。
携帯用ストラップは、江戸時代の根付の文化と繋がっているとも言われるように、「モバイルアクセサリー」は日本独自の進化を遂げています。今後の可能性を大いに秘めたフィールドとして、日本から世界へ向けた新たな価値観の提案となりました。
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※クリックで拡大
 【 1 】 iida and NAVA展示会場 NAVAショールーム

 【 2 】 展示会場でのレセプションパーティー

 【 3 】 伊藤節/志信 デザインによる、革新的な衝撃耐性をもつポリプロピレンのスマートフォンケース。

 【 4 】 カリム・ラシッド デザインによる、非対称のフォルムをもつデジタルプリントレザーのスマートフォンケース。

 【 5 】 ジェームズ・アーヴィン デザインによる、レザーとストレッチ素材で構成された、スマートフォンカバー。
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