桐山登士樹が選ぶ 注目のデザイナー

COLUMN 樹幹通信 桐山氏の近況やデザインの話題をお届けします

2015年12月

伝産全国大会のヴジュアルデザインは、羽田純さん伝産全国大会のヴジュアルデザインは、羽田純さん
AXISでは、富山の「伝統工芸・ヘルスケア・ロボット」の3部門を展示アピールAXISでは、富山の「伝統工芸・ヘルスケア・ロボット」の3部門を展示アピール
蓮池槇郎氏と次女のナオミさん、三女のミドリさん。共に建築家蓮池槇郎氏と次女のナオミさん、三女のミドリさん。共に建築家
ミラノトリエンナーレ美術館ゼネラルディレクター、アンドレア・カンチェラート氏ミラノトリエンナーレ美術館ゼネラルディレクター、アンドレア・カンチェラート氏

11月は怒涛のような一ヶ月だった。これだけ展示会やイベントが続く月は珍しい。

第32回伝統的工芸品月間国民会議全国大会(富山大会)は盛会のうちに幕を閉じた。伝産を成長産業にプロデュースしていくのは大変難しい仕事だ。でも可能性がないわけではない。歴史に覆いかぶさった柵を一枚一枚丁寧に剥がしていかなくてはならない。富山県で言えば能作みたいな会社が、この後10社くらい現れれば伝統産業は大きく変わる。TOYAMA DESIGNはその一例だとも言える。そして地域が新しいスキームを模索する時期にも来ている。ロボット産業などで富山県東部地区を新たな開発研究拠点化にすることも可能だ。

ミラノから蓮池槇郎氏をお呼びしてミニイベントを行った。自ら起こしたブランド「MHway」を含め、デザインを切り開いた一人として尊敬している。そのスタイルは、今後は娘さん達が片腕となり、さらに強固になろうとしている。52年に及ぶ成功例をより多くのデザイナーに知ってほしい。

特別博覧会として来年4月、21回目となるミラノトリエンナーレが復活する。その責任者の一人、アンドレア・カンチェラート氏を富山に招き、地元の会社やデザインセンターを見ていただいた。カンチェラート氏からは、世界でも画期的で最先端な活動をしていると褒められ、嬉しかった。1993年当時、デザインの素地が薄かった富山県だったが、94年からコンペをスタートし、これまで7000人を超えるデザイナーに参画いただいた。そして現在、100名を超えるデザイナーと地元企業が隔りなく開発を行っている。

「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」に久しぶりに「KANAYA」が出展した。地元の特色である茶錆、黒錆、白錆で処理したインテリアグッズである。国内外のバイヤーさん達に評判がよく安心したが、いよいよ売りに力を入れなくてはならない。デザイナーの紺野弘通さん、小林幹也さんは頼もしい存在だ。

そして、26日からロンドン、ミラノに渡航している。夜の食事会以外は、時間をやりくりして美術館などに足を運んでいるが、充実度は最高。2017年秋オープンの新富山県立近代美術館(仮称)が日本で初のアートとデザインの美術館となるように最善の力を注ぎたい。

萩原修さんのお誘いで、12月12日(土)に明星大学で公開講座「仕事とデザイン—これからの仕事に活かす これからのデザイン力」を行います。お時間のある方はぜひお越しください。また、この日の夕方は伝産アカデミーの最終講評会。地域の若者と会えるので楽しみです。移動がスムーズだと良いが。

» 仕事とデザイン—これからの仕事に活かす これからのデザイン力

  • KANAYAは、独自の和モダンをアピールKANAYAは、独自の和モダンをアピール
  • 久しぶりのロンドンは刺激がタップリ、また来よう久しぶりのロンドンは刺激がタップリ、また来よう
  • ロンドン風景

2015年11月

AnyTokyo デザインの質はピカイチAnyTokyo デザインの質はピカイチ
TOYOTA FCV PLUSTOYOTA FCV PLUS
 ミラノ万博で賑わう人々 ミラノ万博で賑わう人々
 ポップアップショップ「伝産ミラノスクエア」ブレラ地区 ポップアップショップ「伝産ミラノスクエア」ブレラ地区

巷では、東京デザイナーズウィークで都内各所でイベントが開催されている。その幾つかは拝見したが、多くは見逃してしまった。しかし、ネット社会の現代ではデザイナーやオーディエンスがすぐさまソーシャルメディアで上げてくれるので、断片的な情報だけが増幅して見た気になってしまう。1/1のスケールで見ることによって、理解度や傾向を知ることができるので見るエネルギーだけは失いたくない。

一方、同時期に並行して東京モーターショーが開催されている。化石燃料に変わる新たなエネルギーとして、いよいよ水素時代に突入した。併せて、自動操縦機能の実用化が見えてきた。これらの新技術は今後改善改良がなされ、その精度、性能は磨かれていく。新たなモータリゼーション時代に期待したい。

この時期、私は相変わらず飛び回っている。月の1/3がオフィス、1/3が富山のデザインセンターと美術館勤務、そして1/3は国内外へ出張している。昨日、ミラノ万博が閉幕した。この開催に合わせて、全国各地222の指定産地から選んだ伝産品の販売も終了した。このポップアップショップ「伝産スクエアミラノ」からは、販路開拓のヒントを多く学んだ。これで年に10回にも及んだ渡航も来年からは半減することだろう。

今月は富山県関係のイベントが目白押しだ。そのいくつかを上げてみると、11月6日~8日の3日間、高岡テクノドームほか3会場で開催される「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」や、11月10日~15日に六本木のAXISシンポジアで開催される「TOYAMA DESIGN展」。初日の夜18時からは展示会場で交流会を開催。13日の14時~18時までは、伝統工芸・ヘルスケア・ロボットの3テーマのシンポジウムをAXISギャラリーで開催する。同日夜には、AXISギャラリーでミラノを拠点に半世紀以上一線を走り続ける巨匠・蓮池槇郎さんの懇親パーティがあり、14日は同会場で記念トークも開催される。22日は、富山の国際会議場で新美術館の未来を考える国際シンポジウム「デザインが未来を拓く −新美術館に向けて−」が開催される。

また、12月1日まで西新宿の三協アルミのショールーム内で「納谷新の360°住宅解剖展」も開催されているのでこちらもぜひご覧いただきたい。そして11月末からは海外出張。1年があっという間に終わる…あと2ヶ月走り抜きたい。

» 第32回伝統的工芸品月間国民会議全国大会(富山大会)

» TOYAMA DESIGN展

» 国際シンポジウム「デザインが未来を拓く −新美術館に向けて−」

» 第1回 SACLAB建築デザイン展「360°住宅解剖展」

  • 11/10~15まで「TOYAMA DESIGN」展11/10~15まで「TOYAMA DESIGN」展
  • ポルトジェノバのナヴィレオ近くの蓮池邸にて、蓮池槇郎氏と次女のナオミさんポルトジェノバのナヴィレオ近くの蓮池邸にて、蓮池槇郎氏と次女のナオミさん
  • 三協アルミ首都圏ショールームで開催中の「納谷新の360°住宅解剖展」三協アルミ首都圏ショールームで開催中の「納谷新の360°住宅解剖展」

2015年10月

富山駅構内に貼られたトリエンナーレポスター富山駅構内に貼られたトリエンナーレポスター

東京から富山へ月に2度ほど通う生活が23年続いています。最近はその頻度が急激に増えました。それまでは飛行機が主な交通手段でしたが3月に新幹線が開通し、いつでも往来できる自由度が増し、より身近な場所となりました。

さらに、10月1日付けで富山県立近代美術館の副館長(デザイン担当)に任命され、今後は更に富山にいる時間が長くなりそうです。しかし生まれながらのフットワークは健在で、じっとしていることが嫌いな人間ですから、これまでと変わることはないでしょう。

現在、ファッションデザイナーの三宅一生さん、文化庁長官の青柳正規さんを中心に、「日本におけるデザインの重要性についての教育普及活動を行い、国立のデザイン美術館設立に向けての機運を高めてゆくことを目的」とした国立デザイン美術館構想が立ち上がっています。富山県立近代美術館は、こうした動きも踏まえつつ独自のデザイン文化を確立したいと思っています。新美術館は2017年秋、富山市の富岩運河環水公園に誕生します。建築は内藤廣さん、屋上の庭園は佐藤卓さんが担当されています。

さて、今月末から東京デザイナーズウィーク、東京モーターショーなど、デザインの祭典が開催されます。今後のデザイン力を確かめたいと思います。

2015年9月

最近知り合いのデザイナーに会うと必ず、オリンピックの話が持ち上がる。逃げているわけではないが、真実を確認する時間が持てず、露出(報道)された情報だけでは客観的に捉えることができない。自分の意見をまとめずにいる。

しかし、改めて感じるのは1964年の東京オリンピックの亀倉雄策先生のロゴ・マークの力強さだ。また、このオリンピック推進に力を注いだ勝見勝先生の存在だ。先生の事を調べてみたが、期せずして肩書きはデザイン評論家、デザインディレクター。私が最初に名乗ったと思っていたが、勝見先生が一番だったのかもしれない。いずれにしても遠く及ばない存在だが、デザインにはディレクションする人が必要な事をいち早く感じていた方だったに違いない。

ミラノ国際博覧会も閉会まで2ヵ月を切った。準備までの時間を考えると、会期が短く感じる。このところの日本館は3時間待ちなど、凄い事になっている。そろそろパビリオンのメダルが決まるが、テーマである『「地球に食料を、生命にエネルギーを」Feeding the Planet, Energy for Life』に忠実な展開をしたパビリオンか、日本のように多様性を謳ったパビリオンが評価されるのか、結果が待たれる。

  • 会場ゲートのエクスポセンター会場ゲートのエクスポセンター
  • 英国館英国館
  • 1964年のオリンピックに合わせて発行された硬貨1964年のオリンピックに合わせて発行された硬貨

2015年8月

8月1~2日の両日は、ミラノ万博日本館のイベント広場は富山県が担当の日。この催事は地元代理店さんが担当され、とかくアピール下手な富山県の印象が強かったので心配でしたが、石井隆一知事を筆頭に富山県の魅力を紹介し、桝田さん(満寿泉)、能作さん、松井さん(城端しけ絹 松井機業)ほか、慣れたもので堂々とアピールしていたのには驚きました。

私は10年以上交流のあるトリエンナーレ美術館を借りて、富山プロダクツ50点、永井一正さんデザインの世界ポスタートリエンナーレトヤマの公募ポスター19点ほか展示を行いました。

地方都市のモノづくりは、ものの価値に重点が置かれます。しかし、海外、なかでもトリエンナーレでは歴史、その時代の様式、生活、文化、風俗まで捉えた上で展示を組み立てています。その中で大切なのは「質」です。今回の展示は、アンドレア・カンチェッラートゼネラルディレクターから高い評価をいただきました。「桐山の仕事は心配していない」とまで、おっしゃっていただき、嬉しい限りですが浮かれているわけにはまいりません。

日本館のプロデューサーの一員でもありますから他を揶揄するわけにはまいりませんが、「質」が担保されていないイベントは様々の形で耳に入ってきます。良くも悪くもイタリアは個人主義(自由に意見が言える)の国です。

さて、今回の最大の収穫は、先のアンドレア・カンチェッラート氏、アンドレア・ブランジ氏、蓮池槙郎氏、さらには現地で活躍する建築家やデザイナーと次に繋がる意見交換ができたことです。

  • トリエンナーレでの石井知事のレクチャー、手前はカンチェッラート氏トリエンナーレでの石井知事のレクチャー、手前はカンチェッラート氏
  • レストラン大阪では、特別に富山の商品、食材を使用したメニューに協力していただきましたレストラン大阪では、特別に富山の商品、食材を使用したメニューに協力していただきました
  • 蓮池槙郎氏のスタジオにて。写真左は蓮池槙郎氏。写真右は富山県の石井知事。その後蓮池邸でパーティでした蓮池槙郎氏のスタジオにて。写真左は蓮池槙郎氏。写真右は富山県の石井知事。その後蓮池邸でパーティでした

2015年7月

ロシア館の半月形状のミラーロシア館の半月形状のミラー

ブローニュの森の近くに住む友人からルイ・ヴィトン財団美術館の工事の進捗状況を聞かされていたが、やっと念願叶って7ヶ月遅れで訪れることができた。フランク・ゲイリーの建築は、ガラスウォールが構造部の存在感を見事に消していた。森と同化する建築手法と言えよう。この秋、21_21 DESIGN SIGHTで開催されるゲイリー展が待ち遠しい。

ミラノ国際博覧会の会場には万博特有の、思い思いの建築(パビリオン)が並ぶ。日本館の隣にあるロシア館のエントランスに突き出る半月形状のミラーは、下を通る人々を映し出している。会場内に東西に横切るデグマグスと南北の角に立つダニエル・リーベンスキンドの塔のモニュメントは、太陽の光を浴びて光る素材感が好ましい。その一角には、友人の建築デザイナー森ひかるさんが手がけたIRPINIAのパビリオン。支柱と部分を受けているフィンとソーラーをミニマルにまとめた建築。オープンシアターの背面には、蓮池槙郎さんによる四色の照明灯と街路灯。ここにも要所要所にデザインと関わるクリエーターの思いを知る。

7月はかつて無いほど過密な一ヶ月となる。国内6回、海外2回の出張。3度の審査会、2度のレクチャーなどなど。旅先で出会える建築・デザインの今(変化)を体感しながら時間を過ごしたい。

第22回目となる「とやまデザインコンペティション」の応募の締め切りは、7月23日 17時必着です。

http://dw.toyamadesign.jp/compe03.html

「桐山 登士樹と富山のデザイン展」が、7月26日までD&DEPARTMENT TOYAMAで開催中です。

http://www.d-department.com/event/event.shtml?id=7873754169326276

  • ダニエル・リーベンスキンドの塔ダニエル・リーベンスキンドの塔
  • IRPINIAのパビリオンIRPINIAのパビリオン
  • ルイ・ヴィトン財団美術館ルイ・ヴィトン財団美術館

2015年6月

DENSAN MILANOの外観DENSAN MILANOの外観
千代鶴直秀製作所の森田直樹さんによる実演千代鶴直秀製作所の森田直樹さんによる実演
ブレラ美術館の近く、Via Marco Formentini 2ブレラ美術館の近く、Via Marco Formentini 2

現在、ミラノのブレラ地区で伝産品をテスト販売するポップアップショップを10月31日までオープンしています。名前は「DENSAN ―JAPAN TRADITIONAL CRAFTS MILANO SQUARE」です。月曜日定休以外は、現地スタッフが毎日お客様の意向を聞き対応しています。ちょうど一ヶ月が過ぎ、様々な事がわかってきました。

私たちが日常的に使用している伝産品を、海外で暮らす文化や生活環境の違う人に理解していただくにはコミュニケーション活動が必要で、長期的な視点でマーケットエデュケーションをしていかないとダメだという事。一方、デザイナーが関与した現代的な道具やギフト品の関心は高く、併せて日本国自体の魅力も高まっている事もあり、マーケットとしての潜在的な可能性が高いという事。また、入り口商材となるお土産品は、ある一定のニーズがコンスタントにある事もわかってきました。

これからの課題は、たぶん90%以上は占めるであろう産地のこれまでの生産活動をどのように継承し、継続的な事業としていくかです。そのためには、高度な視点で一緒になって考えること、生み出すデザイナーと海外マーケットでモノづくりの歴史や技、使われ方などを対面でコミュニケーションする機会(例えばカルチャースクールの様な場)が必要です。こうした機会を作れば、納得して買っていただき、ますます関心を持ってもらえます。一見地味な活動こそ、いま必要なんだと感じています。

後、輸出に関する様々な手続き、価格調整、在庫数などクリアーしなくてはならない課題が次々に現れます。しかし、確実にマーケットを形成できる手応えを感じます。多くのデザイナーに関心を持っていただき、この2~3年で日本のものづくりを元気にしようではありませんか。

» DENSAN ―JAPAN TRADITIONAL CRAFTS MILANO SQUARE

2015年5月

写真は工事が進む「City Life」写真は工事が進む「City Life」

ミラノサローネが終わり、落ち着く間もなくミラノ国際博覧会が始まりました。しかし、約3~4割のパビリオンの工事は現在も続いています。この内容は改めて記したいと思います。

今回のミラノ滞在で一番興味を引いたのは、「City Life」と名付けられた都市開発事業。通い慣れた旧フィエラは国際都市に生まれ変わろうとしています。磯崎新氏による202メートルの高層タワー、その足元には商業施設、高速鉄道駅、公園、周囲にはザハ・ハディド氏によるアウトラインの美しい集合住宅、さらに別の一角にはクリスチャン・ド・ポルザンパルク氏の集合住宅。
昨年視察したガリバルディ地区の再開発と合わせて、ミラノの都市イメージは大きく変容の時を迎えています。その背景には、世界の企業を誘致したいという思惑がここにもあります。世界の都市開発と同様に外国企業の誘致、不動産の投機対象化によるマネーゲーム。これらを決してネガディブに捉える必要はありませんが、私にとって好きな音楽都市、デザイン都市のミラノも様々な要因と絡み合いながら変化していかざるをえません。

一方、ロシアの景気後退、アラブ諸国の紛争、中国の内政等により一部の計画に影響が出始めているのも事実です。リーマンショック以降非常に不安定な世界情勢の中、計画が遂行されているように映ります。都市のハードの中に住む者として、いかに快適で個性的な街であるかということが重要です。世界の同質化現象に巻き込まれないオリジナルなこだわり(開発)こそ、ミラノにふさわしい風景だと思います。

2015年4月

DENSANイメージ図DENSANイメージ図
経産省での記者会見経産省での記者会見

いよいよ4月14日から通い始めて30回目となる第54回Salone del Mobile.Milano(ミラノサローネ国際家具見本市)が始まります。

この一ヶ月は、ミラノサローネと同時並行で5月1日に開幕を迎えるミラノ国際博覧会日本館のプロデューサーの一人として準備を行ってきました。

まずは、海外販路開拓を模索している伝統的工芸品産業振興協会(DENSAN)の初参加をお手伝い。100年以上のものづくりの歴史を持つ全国指定産地219箇所の産業振興は重要課題です。海外での和食ブームにも乗り、文化とデザインを軸にどこまでマーケットエデュケーションができるのかが試されます。タイトルは「NEW DENSAN 100」、会場はドゥオーモ広場前のイタリア商工会議所の一角。デザインは、イタリアで活躍している建築デザイナーの森ひかるさん。イタリアの建築界で活躍していますが、私とはかれこれ25年以上プロジェクトを一緒に行っています。

次に世界的なクルマのトランスミッションメーカー、アイシン精機(愛知県刈谷市)。企画を練っていた時にまず思い描いたのは、アーティストのクワクボリョウタ(IAMAS)さんにアイシンの精巧な機器を作品にしていただこうと思いました。さらにロボットの分野で輝かしい実績を上げられているfuRoの古田貴之博士率いる最強のロボットクリエーション軍団。さらにはミラノで活躍するデザイナーの伊藤節さん、伊藤志信さんにアイシンデザイン部が加わり、NEOREALで団結硬い遠藤豊さんも加わり最強チームができました。「IMAGINE NEW DAYS」会場は、トルトーナ地区のスーパースタジオです。21世紀はサプライヤーの独自技術とデザインの時代だと思っています。担当します二つのパーティ会場で、お会いできれば幸いです。

5月1日の会期まであと残すところ僅か、日本万博の一つのテーマである「COOL JAPAN DESIGN GALLERY」の記者発表会を3月27日に経産省で開催しました。nendoの佐藤オオキさんのデザインを受けて、全国13箇所の産地が選ばれ開発が行われました。nendoの初期の頃、目白のマンションオフィスで何度かアドバイスをしたこのデザイナーは、ここ10年間で世界のトップランナーになりました。サローネ期間中は、ペルマネンテ美術館全館を借り切って大展覧会を開催するそうです。凄いです。

最後は、富山に3月14日に新幹線がやってきました。2時間8分で食の宝庫、デザインの盛んな富山に行くことが可能となりました。同日には、20年近く交友のあるナガオカケンメイさんのD&DEPARTMENT TOYAMAがオープンしました。この店舗の気持ちの良いこと、6月頃には「富山県総合デザインセンターと桐山登士樹」の展覧会を開催する予定です。展覧会になるかな?

  • D&DEPARTMENT TOYAMA石井店長 D&DEPARTMENT TOYAMA石井店長
  • アイシン本社にて伊藤節、伊藤志信の両氏アイシン本社にて伊藤節、伊藤志信の両氏
  • アイシンコアセンターの展示アイシンコアセンターの展示

2015年3月

DENSAN(伝統的工芸品産業振興協会)のブース全景DENSAN(伝統的工芸品産業振興協会)のブース全景
trends 2015 のスタイリング展示trends 2015 のスタイリング展示

2月13日よりフランクフルトで開催された国際消費財専門見本市アンビエンテは、今後の展示会出展を考える上でも良い機会となりました。
一つは、もの展示だけではなく、いかにバイヤーさんへアピールするか、その手法として、「trends 2015」の様な高度なスタイリング展示が有効だと思いました。さらに空間的に余裕があれば、モノづくりの背景、リソースやフィロソフィーやヒストリーを伝えることも大切で、その上で時代感覚=トレンドを感じさせれば商談確率が高まるでしょう。事実「trends 2015」のセレクトされ、スタイリングされた展示の商談確率は高かった様です。今では勝ち組のブランドの一つと言われている「能作」の商品はこのコーナーで幾つも目につきました。

もう一つは、展示会(見本市)そのもの可能性です。展示会(B to B)にバイヤーが押しかける時代が終わろうとしています。されど展示会なので今日明日なくなることはありませんが、ビジネスの形態が少しずつ変わろうとしています。そんな事に気付き始めている経営者もいます。例えば、アッシュコンセプトの名児耶秀美さんは、「展示会の限界を感じている」と話す。東京の蔵前、メルボルンKONCENT、湘南T-SITEにお店を出すようになって、旗艦店舗によるマーケティングやバイヤービジネスの可能性も日増しに増している。更にこれまでの顧客データがあれば、展示会を介さなくてもコミュニケーションが取れる。関係性を深める場づくりの形態が変わろうとしています。注意が必要です。

いよいよ来月14日からはミラノサローネです。更に5月1日からは、ミラノ国際博覧会が開催されます。私は、サローネで二つのプロジェクトをプロデュースしています。来月のこのページで紹介したいと思います。フィエラのサローネ会場で特に注目しているのは、「Workplace3.0/サローネウフィーチョ」。今回は、ミケーレ・デ・ルッキ氏の監修です。画一的なオフィス空間から次世代のオフィスデザインへ、関心のあるテーマ領域です。万博日本館は開幕前二ヶ月を切り今が佳境です。3月5日の木曜日には、開幕二ヶ月前のプレス発表を行います。いよいよ全貌をお伝えできる予定です。

» ミラノサローネ

» Workplace3.0/サローネウフィーチョ

» 2015年ミラノ国際博覧会日本館

  • 左から木本誠一さん、澄川伸一さん、安積伸さん左から木本誠一さん、澄川伸一さん、安積伸さん
  • trends 2015trends 2015
  • DESIGN PLUSでは、大森謙一郎さん、深澤直人さんのデザインが選ばれていたDESIGN PLUSでは、大森謙一郎さん、深澤直人さんのデザインが選ばれていた

2015年2月

NEW DENSAN PROJECTの成果発表

今月は、三つの案内です。

2月6日(金)の18時からSACLAB(サクラボ)のデザインフォーラムを開催します。SACLABは建材メーカーの三協アルミ社が中心となり、第一線で活躍するクリエイターと環境や生活、コミュニケーションを共に考え、活動するラボラトリーです。SACLABを起案した背景には、既に今の時代は企業のインハウスだけで考え、デザイン提案していく時代ではないという思いがあります。様々な知見を持つ実践者達と緩やかなスキームで探求する時代です。フリーであろうと、インハウスであろうとプロジェクトの時間、費用、効果、価値、法規、規制など数ある難関を紐解き、生み出していかなくてはなりません。そのためには、アーカイブ(探求の記録)とラボラトリー(探求の場)がマストです。
このSACLABは、なんとか実現に漕ぎ着けました。まだよちよち歩きです。でも参加していただいている建築家、デザイナーの意識や実績は高く、互いのモチベーションも高いです。金曜日は、メンバーの千葉学、禿真哉、永山祐子、納谷学・納谷新、原田真宏・原田麻魚、安東陽子、藤森泰司の各氏にお話しいただき、参加される皆さんと意見交換できれば幸いです。自由に参加いただけますのでお越しください。

現在、地域に受け継がれてきた伝産事業の活性化プロジェクトを担っています。来週からはフランクフルトで行われるアンビエンテに出展します。ブースは、GAL.0 Stand:A04/A05です。アンビエンテにお越しの方は、是非お立ち寄りください。デザインは、石上純也氏をサポートしてきた建築家の萬代基介さんに依頼しました。彼の提案いただいたデザインを実現するために苦心しました。

また、2月25日(水)の16時からは、青山一丁目の伝統的工芸品産業振興協会で「NEW DENSAN PROJECTの成果発表」を行います。今年度、産地とデザイナーとのマッチングとそのデザイン審査を山田遊、長山智美、田中智子(伊勢丹三越)、酒井正明の各氏と私で行ってきました。産地は後継者問題と産業の構造変革と販路開拓が急がれています。長年継承されてきた全国の産地の伝産事業を再構築するためには、「デザインの力」が必要です。興味のある方はこの会にご出席ください。新しい伝産を多くのデザイナーと一緒になって、開発していきたいと思います。

» SACLAB

» アンビエンテ2015 (PDF)

» NEW DENSAN PROJECT (PDF)

2015年1月

一線で活躍する方々に富山にお集まりいただきました一線で活躍する方々に富山にお集まりいただきました
コミュニケーション部会コミュニケーション部会

今年も注目デザイン&デザイナーおよび樹幹通信をよろしくお願いいたします。可能な限り様々なジャンルから気になるデザイン、デザイナーを紹介させていただきます。地方で脈々と実践している人や海外で活躍している方にも目を光らせていきたいと思います。

12月8日、富山で「デザイン会議2014」を開催しました。分科会と全体会議、懇親会の三部構成とし、プロデューサーやディレクターとして活躍されている方々総勢30名に富山にお越しいただきました。これからのデザインは、異能(デザイン外)と交わり生み出す新たなスキームが必要とされ、その中心となって調整する「クリエイティブ・ファシリテーター」が必要だという提言がありました。しかし、この人材の確保や養成は簡単ではありません。でも最も近いところにいるのが企業に在籍しているデザイナーです。事業戦略の経験とマネージメント、国内外のトレンド動向、新領域との関わりが多いことなど、企業内デザイン部の人材活用がもっとも近道ではないかと思います。

先日の繊研新聞に、コムデギャルソンの川久保玲さんのインタビュー記事が掲載されていました。そこには「いかにクリエーションのビジネスを作りあげるか。これが私の大きな仕事です」と、記されていました。デザインは実践であり、ビジネスをないがしろにしてはいけないことを改めて強く思った次第です。2015年がデザインの飛躍の年であり、新たなイノベーションの年でありたいと思います。

  • ものづくり部会、他にマネージメント部会の三部会ものづくり部会、他にマネージメント部会の三部会
  • 全体会議は公開で行いました全体会議は公開で行いました
  • 懇親会には、石井隆一富山県知事(中央)も参加されました懇親会には、石井隆一富山県知事(中央)も参加されました