山梨県にある、人口500人あまりの関東一小さな村の村役場。都内から甲府に抜ける青梅街道の道中にあり、周囲は奥多摩の山々に囲まれた谷間の小さな集落。村に通ううちに村の生命線は2つの人の流れにあると考えるようになった。一つは青梅街道を通る交通、もう一つは山村留学や地域おこし協力隊といった都市とのつながりとしての人の流れだ。新しい役場はこの2つの流れをテーマに据えることにした。

まず、街道と山の平面的な角度のズレをそのまま平面計画に落とし込み、そのズレが生む場に主要な機能を当てはめていった。さらに、村民やそうでない人も分け隔てなく受け入れ、同じ場にいて心地よい場をつくるために個室を排除して大きな一室空間とした。一室空間をつくる大屋根と平面のズレが噛み合うことで、つながりつつも分節された場をつくることを目指した。

写真：吉田誠