栃木県那須塩原市の地域アイデンティティでもある「森」に足を踏み入れると、私たちは、季節や天気、動植物たちによる僅かな機微といった刻々の変化を感じ、そのうつろいをマルチモーダルに受け止め、心を動かされます。
「那須塩原市図書館 みるる」では、館内に点在する言葉(アフォリズム)や展示物、活動や人々によって起こる多様なうつろいを緩やかな境界に表出させ、その機微の重なりの中をまるで森の中のように自由に歩き回ることで、共感覚を生み出し、新しい気づきや学びにつながることを意図しています。
木立の樹冠の下端を模したリーフラインが、その高低差で緩やかに多様な適所を生み出し、放射状の本棚が木立の間から見通すように活動が重なり合う風景をつくり出しています。さまざまな目的を有する利用者たちを緩やかに包み込む“森”のようなひとつながりの空間を目指しました。
公共図書館は、単に人が集まるサードプレイスとしての第三世代を終え、そこで生まれる市民の豊かな学びや交流が広域の人々へと連鎖し、社会関係資本として循環し、まち全体の発展に寄与することが求められています。那須塩原市図書館での個々人の気づきや学びは、そのひとつひとつが“言葉の森”で生まれた活力の資源となってまちに還元され、次第にまちに波及し大きな変化を起こし、新たな気づきが持続する――そのような公共図書館を形にしました。