the flower funeral〜cattle〜

2017

東日本大震災以降、「死と生」をいうものを強く意識するようになり、経済的で合理的な現代社会から死生観を見出し、作品を展開しています。その作品が「the flower funeral」シリーズです。

「the flower funeral〜cattle〜」は、社会を見渡せばもう一つ餞(はなむけ)をしなければならないことに気がつき制作した作品。その対象となったのは家畜です。大きなきっかけになったのは、震災後すぐに起きた福島原発事故。避難エリアに家畜が置き去りになってしまい、多くの家畜を餓死させてしまった出来事です。その時に報道された酪農家は、涙を流しながら牛たちにとても惨い殺し方をさせてしまったと謝っていたのを覚えています。原発事故の悲惨さは言うまでもなく、酪農家の方の家畜への思いや、生き物の命を頂いて生きているということを再確認した出来事でした。

命を頂き感謝することは、死を悼む心を養うことだと思いました。本作品は人の都合で起こした原発事故によって犠牲にしてしまった家畜達への葬いであり、そして命への感謝の想い、もう二度とこのようなことを起こしてはならないという決意を形にした作品です。

Photo:橋本憲一

髙橋賢悟(金工作家)

髙橋賢悟(金工作家)

鹿児島県出身。東京藝術大学工芸科卒業、同大学修士課程鋳金研究室卒業。同大学の教育研究助手、非常勤講師をしながら作家活動を行う。第7回佐野ルネッサン鋳金展大賞、伝統工芸日本金工展新人賞、東京藝術大学エメラルド賞など、他にも数多くの賞を受賞。また、独自に研究してきた生花をアルミニウムで精巧に鋳造する現物鋳造法は高い評価を受け、「驚異の超絶技法!明治工芸から現代アートへ」に参加。作品は、TV、雑誌、webマガジンなど多くのメディアにも紹介されている。現在はその技法と表現をさらに研究するために、東京藝術大学博士課程に在籍している。 (Photo:橋本憲一)

http://www.kengo-takahashi.jp/

2018/10/17 10:30