NYを拠点に活動するアーティスト、Olga Bellの最新アルバム「Tempo」のリードトラック「ATA」のミュージックビデオ。
作業は完全に遠隔で行いました。彼女はNY在住で、撮影に行くほどの予算もなかったので、むこうにいたフォトグラファーに街の中で撮ってもらっていました。カメラで撮影することで一旦平面に焼き付けられたものを、僕の想像でまた奥行きを勝手につけなおしてやる、ということをこの映像では試しています。あえて白黒写真として送ってもらって、さらに陰影や前後関係のヒントが消えた状態で、出っ張っているのか凹んでいるのか、視点が左右どちらに回り込んでいるのか錯覚させるような効果を出しています。
実はそれほどテッキーなことはしていなくて、Kinectもフォトグラメトリー(さまざまな角度から撮影した写真から立体を再構築する技術)も使っていません。ちょっとしたエフェクトをつくるためにopenFrameworksを使っていますが……。そのopenFrameworksの開発者のひとり、Zach Liebermanが彼女のミュージックビデオを昔撮っていたこともあり、ザックに対する自分なりのアンサーというか、彼のつくったツールを僕のスタイルに織り交ぜてさり気なく使う、というのは裏テーマ的に意識していました。
CGのいろんな機能をぐじゃぐじゃ使っているうちに、「たまたま画像が妙な変形をしちゃった」みたいなところも大事にしているので、そこで自分であまり緻密にデザインしすぎず「自然に生まれた造形をただ眺めているだけ」みたいなちょっと突き放された感じが、結果的にいい意味で力を抜いてつくれたと思います。
【スタッフクレジット】
director/Baku Hashimoto
concept/Baku Hashimoto & Olga Bell
photography/Josh Wool
makeup/Stephanie Peterson
http://bellinspace.com/