JDN編集部の「そういえば、」2020年6月

JDN編集部の「そういえば、」2020年6月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

With マスク 快適グッズ

そういえば、マスクにまつわるグッズを集めています。

電車でも、会社でも学校でも、どこでもみんなマスク!ファッションブランドや大手メーカーが、こぞってオリジナルのマスクを発表し、服装と同様に“自己表現”の一つとなり、楽しみを見出している人も多いのではないでしょうか。そんなブーム(?)の中、私がお気に入りなのは、「soilのマスクケース」です。

soil マスクケース

soil マスクケース

人の少ないところでは着用せず、電車内や会話する時にだけマスクをする人は私だけではないはず。そんな時に一度つけたものをポケットにしまったり、蒸れたマスクを再着用するのは少し抵抗がありますよね。

そんな悩みを一挙に解決してくれるのが、このマスクケースです。「soil」は保湿性・吸水性が優れている“珪藻土”を用いて、バスマットやコースターなど水回りのプロダクトを中心に展開しているブランド。

soil マスクケース

soil マスクケース

このマスクケースは、ジッパーを開けるとポケットが大小2つに分かれており、使用済みと未使用のものを収納することが可能。ポイントである“珪藻土”は、ベースとなる生地の糸に練り込まれているのと、内ポケットに不織布で包まれた珪藻土の粒が入っているので、さらさらとした状態を保ってくれます。調湿のほかに、消臭効果も期待できるとのことなので、再度つける時にも気になりません。素材の特性と、商品の需要をデザインで結びつけた好例ですね。

サンタ・マリア・ノヴェッラのハーブウォーター

サンタ・マリア・ノヴェッラのハーブウォーター

もう一つは、ジメジメした気持ちをリフレッシュさせてくれる、サンタ・マリア・ノヴェッラのハーブウォーター。こちらはさらさらとした香り付きの上品な水(笑)で、香料がオーデコロンほど強くないのが特徴です。持ち運び用の携帯スプレーに入れ替えて、マスクにシュッと吹きかければ爽やかな香りに包まれますよ。400年以上の歴史を持つ老舗ブランドとあって、ボトルのパッケージデザインも厳かで美しく、置いておくだけでインテリアのアクセントになります。ほかにも保湿液としても使えて、枕やシーツにふりかければぐっすりと安眠できそう…!

生活様式や価値観が変わる中、いかにして「変化」するかが求められているように感じます。デザインの知恵と工夫をうまく使っていきたいですね。

(栗木 建吾)

「Borjack Horseman」の優しさ

そういえば、この前YouTubeでたまたまアメリカのイラストレーター、Lisa Hanawaltが話す動画を見つけたのですが、なんというかちょっと楽になるような気持ちになったスピーチでした。

Netflixのアニメシリーズ「Borjack Horseman」のプロダクションデザイナーであり、プロデューサーを務める彼女ですが、スピーチの冒頭からシニカルなトーク満載で、けっこうあけすけな語り口に笑ってしまうと同時に、彼女が「Borjack Horseman」の生みの親であることにとても納得してしまいます。

「Borjack Horseman」は、落ちぶれた中年俳優であるボージャックを主人公としたシリーズですが、ぼくがこのものがたりにのめり込んでしまったのは、ボージャックを含めてあらゆる登場人物の“vulnerability(傷つきやすさ)”を、とことん描いているところなのだと、このスピーチを観て改めて思いました。不安といったネガティブな感情や、からだが麻痺してしまったようになにもやる気が起きないこと、そういったことが、クリエイティブにおけるある種のモチベーションとなっていることを、彼女はブラックなユーモアを交えて語ります。

「Borjack Horseman」の物語は、そういった生きづらさの中で生きている人たちの日々の葛藤や、浮き沈みの中でなんとか歩みを進めようとする人たちのこころに対して、“I See You”と語りかけるような、そんな優しさを感じるのです。

ぼくがこのシリーズのキャラクターを見ていてぐっと来てしまうのは、登場人物のほとんどが、ふとした会話の時にひじの裏側や頭をかいたしぐさをするところです。気づまりに感じたり、困惑した表情をしながら、たびたびそういったしぐさを登場人物たちがするのですが、なんともそれがいじらしくて、見るたびにこころが締め付けられる感じがします。

「Borjack Horseman」は、ローファイなタッチのアニメーションではありますが、エピソードによってはほとんどセリフがなく動きだけで展開するものや、虚と現実が入り乱れたサイケデリックなもの、ほとんどワンシーンの語りだけで構成されるものなど、かなり攻めた表現をしているのも魅力です。とはいえ、けっこう相性を選ぶのですべての方におすすめはできないのですが、なんとなくここで書かれていることにひっかかるものがある人は、少しでものぞいてみて損はない世界だと思います。

ちなみにぼくが好きなエピソードは、シーズン5のEP2「The Dog Day Is Over」。いま思い出しても涙腺が緩んでしまいます。

(堀合 俊博)

本自体も宝物のような『石の辞典』

そういえば、少し前に『石の辞典』という本を購入し、長い自粛期間に少しずつ読み始めました。

『石の辞典(雷鳥社)』著:矢作ちはる/絵:内田有美

『石の辞典(雷鳥社)』著:矢作ちはる/絵:内田有美

昨年春に発売され、Amazonのベストセラーにもなっていたので知っている方もいらっしゃると思いますが、本書は、本の企画や執筆を行う「ワタリドリ製作所」の矢作ちはるさんによる、鉱物の魅力を余すことなく伝える一冊です。イラストレーターの内田有美さんの描きおろしイラスト115点が、石の魅力を増幅させています。

ただ見ていて綺麗で終わらず、鉱物の知識も豊富に紹介されていて、「あ、この名前知ってる!」という身近なものから、出会ったことのないものまで幅広く網羅されています。

石の辞典

本の終わりにある索引ページ

購入する際は、表紙の質感や絵だけでもぐっときたのですが、“ページをめくるたびに紹介する石が硬くなっていく”という仕掛けがとどめの一撃でした(笑)。これは、読む人に石の個性をもっと身近に感じてもらうため、鉱物の硬さをあらわす「モース硬度」と呼ばれる硬さの尺度をもとに施された仕掛けだそう。

一般的に「辞典」というと重厚感あふれるイメージがありますが、この本はA6判変形の手のひらサイズ。日々、そっと開いて石を身近に感じられるような、宝物の一冊です。ちなみに本書の出版社である雷鳥社は、「海の辞典」「空の辞典」「草の辞典」などそのほかの辞典シリーズも発売しているようなので、気になった方はぜひ調べてみてください!

(石田 織座)