デザインの秋

デザインの秋

今月末からのイベント準備の合間を縫って、ヴェネチア、ミラノに渡航した。この時期に次の春の準備とヴェネチアビエンナーレ見学を兼ねた2日間の夏休み。

ヴェネチアビエンナーレ 会場入口

ヴェネチアビエンナーレ 会場入口

ビエンナーレはこの10年以上アートと建築を欠かさず見てきたが、そろそろ終わりにしようと思った。交互に開催される2つのテーマも、多様化する時代の流れの中で完結する機会ではなく、現状確認と課題共有の場となっている。そういう意味では、わざわざヴェネチアまで来なくてもさまざまな場や機会がある。もちろん個人的な意見であり、若い建築家たちにはSANAA、ピーター・ズントー、ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツなど、それぞれの建築家の考え方を知る有効な場である。

今回のテーマは「フリースペース」で、GIARDINIの各国のパビリオンはハッキリ言ってさまざまだった。もう一つの会場、ARSENALEも世界各地の地域性や著名建築家のアプローチ知る機会とはなったが驚嘆するような作品は少なかった。

日本館の様子

日本館の様子

銀獅子賞を受賞したイギリス館

銀獅子賞を受賞したイギリス館

一方、この期間中開催されていた「the Venice Glass Week」は、ガラス素材の可能性を新たに拡張した完成度の高い作品があり楽しめた。さすがヴェニスである。アカデミア橋横のCORILAでは、懐かしいMEMPHIS作品のほぼすべてを見れて感激した。写真NGだったのが惜しまれるが、階段を上がると梅田正徳氏のタタミリングが迎えてくれた。

さて、帰国後の21日からは富山県高岡市の総合デザインセンターで開催するデザインイベント「D’DAYS」に取り組んでいる。すでにJDNでも予告済みなので詳細は公式サイトを見てほしいが、会場でお会いできればさらに嬉しい。できるだけ若い世代と話す機会を設けたいと思っている。
https://www.toyamadesign.jp/ddays/

また、9月25日から10月8日まで日本橋のとやま館日本橋で、「明治150年記念 日本橋で出会う 富山のいま、むかし」を開催する。長きに渡り「継承」と「創造」により産地で受け継がれてきた今を再確認する機会であり、さらに持続可能なコト展開の一歩でもある。御菓子(9月30日)や日本酒(10月4日)、伝統工芸(10月5日)の夜にはトークセッションもある。興味のある方はご参加いただきたい。

10月20日から27日までは、私がプロデュースしているグランドセイコー、ミラノデザインウィークで発表した「THE FLOW OF TIME」の東京展開催をする。場所は、246に面した「polygon 青山」、26日は吉泉聡さん、阿部伸吾さん、デザイン部長の種村清美さんと私のトークセッションも予定している。
https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/milandesignweek/2018/tokyo/

さまざまな機会を通じて、デザインの力を今後も提示に語り合う場を設けていきたいと帰路の機内で執筆しました。

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/