岐路に立つデザイン

岐路に立つデザイン

週末、日本経済新聞に掲載された日立製作所 東原社長の「製造業はなくなる」の記事を面白く拝読させていただいた。感度の良い人だったらすでに共通の理解でいると思うが、そのダイジェストを引用させていただきたい。

『2つの意味で従来型の『製造業』はなくなる。まず大量生産を前提とする工場の価値が減る。膨大な生産データをビッグデータ解析し、人工知能(AI)で分析すれば、製造工程の不具合や生産ロスを効率的に減らせる。工場の品質が均一化する可能性を秘めるが、技術者が担ってきたこの分野こそ日本の製造業の強みだった』

『デジタル化はそこに付加価値を見いだすことを難しくする。3Dプリンターなど最新技術を駆使すれば、データを基に設計図面を自動生成し、金型や製造プロセスに落とし込める。データから何でも作れる。しかも少量多品種で。そんな時代が目の前に来ている』

※出展元:2018年10月14付 日本経済新聞 朝刊

センセーショナルな内容であった。少子高齢化で国内需要は見込めない。海外のマーケットに活路を求め、コストの安い現地生産化を推し進めたが、その場所も技術力、製造力を上げ世界的なメーカーまで出現し、すっかりお株を奪われてしまった。これから日本は何で勝負するのであろうか。若い世代に託された課題は重い。

リコンストラクションを進めるにあたり、いくつかの可能性は残されている。長く継承してきた伝統工芸は課題は多いが、次のステージに移行しなくてはならない。

製造業を支えてきた工作機器は持ち前の改善改良型でより進化をたどるであろう。新たな素材開発も可能性が残されている分野だ。AIやロボットなどの先端技術の開発にさまざまな経験値を持つデザイナーが参画すれば、より高度なモノが生まれる可能性が高い。

こうした時代を迎え、デザイナーはどのように対応したら良いのかが問われている。私は長年の課題であった、デザイナーがより強い存在として浮上するチャンスだと思っている。日本人デザイナーのこれまでの経験値は強みである。提案を絵にして示すことができる。エンジニアであれば誰もが考える第三のポイントを具体で示すことができるのである。

また、改善改良を得意とする特性はより柔軟にさまざまな場面でイニシアチブを取れると思いたい。さらに、個人個人がこれまでの歯車型役割から創造型のモーターへチェンジできればさらに可能性は高まる。しかし、すべてを楽観的に捉えるわけにはいかない。日本人の本質に潜む「寄らば大樹の陰」から脱却する意識がないと低空飛行が続くであろう。

さて、前々回の記事でもご紹介し、10月10日まで開催された「とやまD’DAYS」には、デザイナーで医学博士の川崎和男さん、世界の金属作家の畠山耕治さんとテキスタイルデザイナーの須藤玲子さん、そのほか多くのデザイナーが富山県の高岡に集合し、密度の濃い機会となりました。

「とやまD’DAYS」会場での様子

「とやまD’DAYS」会場での様子

同じく富山関連で、25回目の記念すべき年となった「富山デザインコンペティション2018」の受賞者も決定しました。グランプリは、阿部憲嗣さんの「ARMADILLO」、準グランプリは松下陽亮さんの「Colonia」、黒木靖夫特別賞はYonanpの「actex」。

(下段左から)黒木靖夫特別賞のYonanpのお二人、準グランプリの松下陽亮さん、グランプリの阿部憲嗣さん

(下段左から)黒木靖夫特別賞のYonanpのお二人、準グランプリの松下陽亮さん、グランプリの阿部憲嗣さん

さて、今週からはDESIGNART TOKYO 2018である。青山・原宿ほか東京がデザインの話題で溢れる。今年は隣国からの訪問者も多そうだ。私もミラノデザインウィークで担当したグランドセイコー「THE FLOW OF TIME」の巡回展で参加する。表参道のPolygonで10月27日まで開催しているので、ぜひ多くの方にご高覧いただきたい。

10/16まで銀座・和光で展示されていた「THE FLOW OF TIME」。初めて和光のウィンドーディスプレーをやらせていただき緊張しました。 次は10月20日より27日まで表参道Polygonでミラノの巡回展を行います。

10月16日まで銀座・和光で展示されていた「THE FLOW OF TIME」。初めて和光のウィンドウディスプレイをやらせていただき緊張しました。次は10月20日より27日まで表参道Polygonでミラノの巡回展を行います。

https://www.grand-seiko.com/jp-ja/special/milandesignweek/2018/tokyo/

designディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/