クリエイティブな街づくり

クリエイティブな街づくり

数年前、恵比寿のオフィスでMITメディアラボ所長の伊藤穣一さんにお会いした時、伊藤さんが何度も口にされた「serendipity」という言葉が刺さり、その後よく使わせていただいている。

8月27日よりスタートする「とやまD’DAYS」のテーマは、「気づき」である。「serendipity」と類似の言葉であり、通常の業務では偏りがちの思考をリセットし、クリエイティブな思考で新たな価値を探る試みだ。デザイン先進県と言われる富山のリソースを再検証し再構築するための機会である。

日本海側で一番の工業県と言われる富山県は、素材加工に長けており、訪れる建築家やデザイナーは数多い。昨年8月に誕生した富山県美術館アート&デザインも8月の全面開館以来120万人の入場者を数え、「文化」と「産業」の両輪で新たな県イメージを押し出している。「とやまD’DAYS」はこうした一環として、富山県総合デザインセンターの置かれている高岡市オフィスパークを「デザインの街」として高めていくための活動だ。

併せて、新人デザイナーの登竜門として毎年開催してきた「富山デザインコンペティション」は、今年25周年を迎える。これまでに8,000人のデザイナーに応募いただき、この機会に知り合った200名強の方々に富山県企業にデザインを提供いただいている。この方々の活躍や成長は、富山県のブランディングに貢献している。10月3日には記念すべき25回目の公開審査が県民会館で開催される。

富山デザインコンペティション2018一次審査会

富山デザインコンペティション2018一次審査会

1999年に県の直轄の試験研究機関として富山県総合デザインセンター(前身のインダストリアルデザインセンターから改組)が誕生し早20年弱。さまざまな試みは、他県のベンチマークとなってきた。さらに昨年、センター内に「DESIGN_HUB」をオープンし、来年3月には本格的なVR、ARスタジオも完成する。完成の暁には、共に考え、最新の機器や環境で試作検討し、完成まで持って行ける一体型のものづくりが可能なセンターとして機能が強化される。さらにこうした機会からベンチャー企業が誕生するようなことになればパーフェクトだ。

いずれにしてもこれまでの産業形態のままの未来はない。新たなスキームの元で、新産業の検討、新価値の創造、新業態の創出に取り組んでいかなくてはならない。そのためにも若い世代に参加いただき、共にコミュニケーションする場を提供していきたい。

とやまD’DAYS
https://www.toyamadesign.jp/ddays/

toyama design wave
https://dw.toyamadesign.jp

富山県美術館では、「第12回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2018」を10月8日まで開催。この機会に富山に足をお運びいただきたい。

http://tad-toyama.jp/exhibition-event/4764

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/