ポートランドの魅力を構成する、クリエイション、スポーツ、オーガニックフード、クラフト、コーヒー、スタートアップの分野で、街にインパクトを与えているプレイヤーに都市計画コンサルタントの山崎満広がインタビュー。インディペンデント、イノベーティブ、サステイナブル、オープンなカルチャーから生まれる、街をクリエイティブにする方法論。
林厚見(SPEAC共同代表/東京R不動産ディレクター)おすすめコメント
「ポートランドが、ポートランドたりえている理由」
本書の冒頭に登場するジョン・ジェイに僕が会ったのは14年前。東京ではむしろ場末ともいえる場所でパンクのライブが鳴り響くパーティにたまたま出くわして入ってみたら、それは意外にもルイ・ヴィトンのパーティで、それを仕掛けた“かの有名な”ジョンがいたのだった。まだ何の実績もない僕に対していきなり「来週オフィスに来な。話そうぜ」と言った彼の印象は強烈だったが、そこに表れていた“あの街”のノリを当時は知らなかった。
ポートランドに関心がある人は、さまざまに語られる話を読んだり実際に訪れたりしてこの街のことをそれなりに“理解”した感覚を持っている気がするし、自分もそんな感じがあった。だが本書を読んだ後には誰しもがその“理解”は大きく前進し、同時にポートランドという街や“メイカーズ”の話の範疇を超えて多くの発見と勇気がもたらされることになる。ポートランドを知るためであっても、これからのものづくりを知るためでも、はたまたそのどちらでもないにせよ、ともかく読む価値があるだろう。
この本で著者の山崎氏は、ポートランドという「街」について直接的に問いかけていない。MAKERSという軸を設定してはいるものの、街のイメージやあり方を仮説として先に立てることもせず、あくまで個人の活動や思いを辿ることから結果的にこの街が、この街たりえている理由を浮かび上がらせている。本書に登場する6人が何をどのようにやっているかをひと言で表そうとすれば、サードウェーブ、ハンドメイド、コラボレーションとクリエイティビティ、オーガニックといった具合に、このところ多く語られるキーワードでまとめられてしまうかもしれない。だが山崎氏の素直なスタンスは、そうした文脈ありきのメッセージにとどまらない多様なヒントを見事に引き出しており、それはポートランドをよく知る者ならではの迫り方なのかもしれない。
著者の前著『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』は街のマネジメントについて語られたものであったが、読者にとってより深い洞察を生むという意味では、私はむしろ本書を先に読んだ上で前著を読むことをおすすめしたい。
発行 | 学芸出版社 |
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編著 | 山崎満広 |
著 | ジョン・ジェイ、南トーマス哲也、田村なを子、冨田ケン、マーク・ステル、リック・タロジー |
装丁 | 藤田康平(Barber) |
仕様 | 四六判、208ページ |
価格 | 2,000円(税抜) |
ISBN | 978-4-7615-2642-9 |