
ネット上のレビューシステムやSNSの誕生で、誰でも製品やデザインに対して「批評」を行いやすくなりました。しかし本来の「批評」というものは、好き勝手に意見を述べたり、フィードバックという名のもとに権威を主張したり、計画をごり押しするためのものではなく、デザイン・制作に関わるすべてのひとが、本来の目的にそってその成果物をよりよいものにするために行うべきものです。
デザインにおいて何が機能しているのか(あるいは機能していないのか)、目的を達成するために、今採用しているデザインは正しいのかどうか。そういったことを建設的に議論できる場を制作のプロセスに取り入れれば、もっともっとよいデザインが生まれるはずです。
本書では、デザイン・コミュニティで著名な2人の著者が、その豊富な経験から生まれた教訓を活かし、よいフィードバックと悪いフィードバックについてや、「批評」を制作プロセスに組み込むためのヒント、実行可能なアドバイスや会話のテクニック、チーム内や対クライアントとのコミュニケーションやコラボレーションの構築のしかたなど、本来目指すべきかたちで、よりよいデザインを生み出すための方法を解説しています。
デザイナーだけでなく、作っているもの、生み出されるものをもっとよくしたいと思うすべての人に読んでもらいたい一冊です。
伊藤千紗(ビー・エヌ・エヌ新社)おすすめコメント
他者とともに恊働(=コラボレーション)し、1つの成果物を作り上げるという機会は、多くの人が持つものだと思います。そして、伝えたかった本当のことがうまく伝わらず、もどかしい思いをすることも多いのではないでしょうか。「あのときこう伝えていれば、もっと良くなったかもしれない」「もっと早いタイミングで、目的をきちんと共有しておくべきだった」「事前に確認をとったはずのことが、通っていなかった」「なぜこの選択をしたのか、もっと説明してほしい」などなど……。
本書は、そのような思いをすることなく、本来の目的にそってより良いデザイン(成果物)を他者と建設的に作り上げていくための、コラボレーションスキルあるいはコミュニケーションスキルとしての「批評」の方法を教えてくれます。
タイトルでは「デザイン批評」としていますが、他者とのやり取りが必要となるどんな場面でも応用可能な内容です。読んだ後、あのクライアント(あるいは上司)にも読ませたい!ときっとみなさま思うのではないでしょうか……。私自身も、そう思われていないといいな、と思いながら編集しました。
発行 | ビー・エヌ・エヌ新社 |
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著者 | アーロン・イリザリー、アダム・コナー |
訳 | 安藤貴子 |
デザイン | 中西要介 |
仕様 | A5判、216ページ |
価格 | 2,200円(税抜) |
ISBN | 978-4-8025-1020-2 |