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ミラノサローネ2010 分析レポート
西中川 京 レポーター
桐山登士樹
Toshiki Kiriyama

デザインディレクター 株式会社TRUNK代表、富山県総合デザインセンターデザインディレクターを兼務
JDN関連コーナー:「桐山登士樹の注目デザイン&デザイナー」
http://www.trunk-design.jp/
西中川 京 レポーター
西中川 京
Miyako Nishinakagawa

株式会社TRUNK勤務。展覧会 / セミナーのキュレーションとコーディネーションを担当。

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ミラノサローネ2010のデザイン傾向

イタリアデザインの行方

 私たちの年代が魅了されたイタリアデザインは、すでに過去のものとなった。今年のサローネの印象を45年間ミラノで活躍するデザイナー蓮池槇郎氏に尋ねると、「最後の足掻きだ」と冷ややかな返答が返ってきた。私は、2015年に開催予定されているミラノEXPO (テーマ : 地球を養う、生活のためのエネルギー、プロデューサー : ステファノ・ボエリ)に向けて、イタリアデザイン界は巻き返しに出ると予測している。また、そうあって欲しい。イタリアのモノづくりの現場は中国ほか他国に移っているが、確かなモノづくりとセンスはまだ歴然と残っている。これからもイタリアの底力を信じたい。

 今回、フィエラ、フォリ等を限られた時間内で視察し目についたのは、メンフィスデザインの復活だ。リナシェンテデパートの地下一階のデザインストアでは復刻モデルが販売されていた。市内を歩くとカンペールのショップで什器として使われていた[写真1]。他の店舗でも80年代メンフィス風デザインが目についた。

 イタリアデザイン界が出口を求め80年の全盛時代を取り戻したいという気持ちは分からないでもない。また、前回より顕在化し始めた環境への取り組みも興味深い。ハイテクを使わないスタイルは、地球規模での汎用性を考えると重要だ。いずれにしても「DOMUS」誌の編集長に一年限りで復帰したアレッサンドロ・メンディーニ、アンドレア・ブランジ、ミケーレ・デ・ルッキらイタリアデザイン界の重鎮たちの動きに注目したい。


見本市会場

 見本市会場フィエラは、クッチーナによる効果もあり予想以上に人出があった。 なかでもパトリシア・ウルキオラの会場デザインのMOROSO、アントニオ・チッテリオによるVITRAのホームスタイリングの提案、フィリップ・スタルクを筆頭に相変わらず存在感を維持するKartell(ブラック&ホワイト)、コンスタンチン・グルチッチ、マルセル・ワンダース、深澤直人ほかトップデザイナーがデザインを提供するMAGIS、いずれもイタリアを代表する会社だけに持ち味をアピールするのには十分な内容・構成だった。

 個人的には、ロンドンベースで活躍する安積伸がLapalma社より発表した「AP Stool」が印象深い。本人曰く、柳宗理のバタフライチェアへのオマージュだという。スツールの完成度は高い。

 サテリテはすっかり定着し、さらに総合展示コーナーが新たに設置され全貌が見やすくなっていたのが好印象。休憩スペースにおかれたMAGISのトーマス・ヘアールウィックによる轆轤で作られた様な「Spun Chair」に座り楽しむ姿が印象的だった。センプレのオーナー田村昌紀氏のお嬢さん田村奈緒さんがサテリテアワードの最優秀を獲得。この賞は活躍デザイナーの登竜門となっている。


日本企業

 日本企業には、もっと奮起して欲しいと思っている。日本の存在が危うくなっている現況で、日本の持つ技術力、デザイン力にプラスして会場、スペース、演出など、さらに完成度を上げて欲しい。ミラノで展示会を行う以上、不透明な日本的感覚ではコミュニケーションが成立しない。明確な見せ方、空間や商品の魅力度、短い時間で回遊する人たちに向けて端的に伝える演出などサローネは完成度を上げないと怖い場所だ。もちろん費用対効果も生まれない。

 サローネがモノありきの展示会にしない為にも、日本企業が新たな価値を提供しリーダーシップを取っていく事が大切だと思っている。


来年へ

 ミラノサローネは来年で50回目となる。当然、イタリア企業を含め参加企業、更にはオーガナイズするコスミット、メディア各社も自ずと力が入ると思われる。低迷する現況から脱客する為にも強い企業(=提案企業)でなくてはならない。そして魅力あるプレゼンテーションが必要だ。

 世界のプロが大挙して集まる場は、未だサローネしかない。この機会を文化的にもビジネス的にも高めて行く事が必要だと、25回目の取材とキヤノンNEOREALのプロデュースを終えて改めて実感している。

 デザインの傾向については、百花繚乱。次からのページをご覧下さい。
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ドーモ前のCAMPER SHOP
【1】ドーモ前のCAMPER SHOP

深澤直人/B&B /Piccola Papiliom
【2】深澤直人/B&B /Piccola Papiliom

Sakura Adachi/Campeggi/ Trick
【3】Sakura Adachi/Campeggi/ Trick

Antonio Citterio/Vitra/Suita
【4】Antonio Citterio/Vitra/Suita

Philippe Starck/Kartel/Magic hole
【5】Philippe Starck/Kartel/Magic hole

Denis Santachiara/Pallucco/Tabard
【6】Denis Santachiara/Pallucco/Tabard

Marcel Wanders/Magis/Sparkling
【7】Marcel Wanders/Magis/Sparkling

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Thomas Heatherwick/Magis/Spun
【8】Thomas Heatherwick/Magis/Spun
   
安積伸/la palma/Ap
【9】安積伸/la palma/Ap
   
吉岡徳仁/Kartel/Invisibles
【10】吉岡徳仁/Kartel/Invisibles



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ミラノサローネ2010レポート
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