北条SANCI

有機質と無機質の一定のコントラストで、性格が異なる空間を繋いだオフィス兼住宅

デザインコンセプト
担当:長坂常/スキーマ建築計画

鎌倉の緑豊かで閑静な住宅街の中にオフィス兼住宅を計画した。

周辺環境もそうだが、敷地内にも豊かな庭があり、緑が覆い囲っている。建物は典型的な日本家屋で、どの部屋も屋外に接しており、襖をはずせば広い間が生まれるつくりになっていた。床は地面から60cm上がっていて、おもに畳が使われていた。築80年以上になるこの建物に使われている壁や天井の素材は味わいがあり、そのまま放置するか剥がして下地を見せれば、なかなか素敵な表情になることが予測できた。特に我々は床に注目し、それらのあり方を考えることで性格分けをし、ゾーニングすることを考えた。

まず、玄関の土間より40cm高い畳をベースにそれぞれの広さと素材を操作し、さらにその上に設置される家具によって、より各々の部屋の性格分けを行った。さらにレベル差に緩急を与えることで、内外問わず上下左右に多様な目線を生み、どこにいてもいつでも豊かな自然と活気を感じられる場が生まれた。西側には縁側を介して庭と繋がった非の打ち所のない和室、北東側には多様なレベル差のある板の間にキッチンを配置した共用空間がある。その間に特に特徴的な空間要素である玄関をそのまま中央まで拡張させた土間部分があり、そこを囲うように無機質なグレイのデスクを設置することによって、両側の性格の異なる空間を緩やかに分けつつ繋いでいる。

このように本計画は床を操作することで空間を更新させていったが、その操作によって生まれた多様過ぎる表情を少しコントロールするために、ところどころで無機質なグレイの家具を挿入した。緩やかに繰り返される有機質と無機質の一定のコントラストが全体の表情を繋ぎ止め、空間の多様性をコントロールした。

設計 長坂常/スキーマ建築計画
建築担当 林昂平、佐藤駿
家具担当 上野黄、宇戸平星樹
所在地 神奈川県鎌倉市
用途 オフィス兼用住宅
施工 株式会社TANK
協力 PARTY、株式会社&Co.(UXプランニング)
家具製作 関美工堂(漆テーブル)、中村修平(フラットテーブル)
敷地面積 457.43m2
写真 長谷川健太