2022年夏に丸の内に竣工した、「ポストコロナ時代におけるオフィスの体験」をデザインしたという空間。電話ボックスやバス停のようなインテリアが内部にあり、街の一角のような印象を与えています。
この空間デザインに携わった、PARTYの林重義さんにコンセプトや具体的な手法についてコメントをいただきました。
■背景
ユーザベースは経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくるため、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」、B2B事業向け顧客戦略プラットフォーム「FORCAS」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」をはじめとする複数のサービスを運営しています。
コロナ禍以降リモートワークが本格化しているなか、ユーザベースは新たなオフィスを情報発信の拠点にし、パーパスである「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」を体現するために経済の中心である丸の内に移転。
PARTY・日建設計・SOLSOと協業し、オフィスの存在意義を考え直し、リアルで集まることの意味を再定義し、大小さまざまなイベントが生まれる「体験のデザイン」をおこないました。
■コンセプト
ポストコロナ時代のオフィスの新たな体験として、「共創が起こる場所」「熱を生む場所」「象徴となる場所」という3つのコアバリューをもとに設計しています。
100人規模のイベントや番組収録、5〜10人規模の打ち合わせ、ドラマ番組のロケ地、偶然に出会って生まれる立ち話、一緒にコーヒーを飲むなど、リモートワークでは生まれないリアルならではの体験を生み出します。
また、3つのコアバリューに加え、働き方の未来と経済合理性を考えた「可動産」も取り入れながら、ポストコロナ時代におけるオフィスの体験をデザインしました。
社会の急速な変化に対して柔軟に対応できるオフィス戦略を追求し続けることで、このオフィスから、そして大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアから新しいオフィスのあり方を広めていきます。
■課題となった点、手法、特徴
今回、オフィスの象徴の一つとして、ダクトに擬態するデジタルサイネージを制作。
デジタルサイネージを検討していく中で、新オフィスの場所が景観条例の制約が厳しいなかで、景観を損なわずにデジタルサイネージを景観になじませることができないかと考えたのが「ダクトに擬態する」というアイデアでした。
デジタルサイネージは、実際の建物内の天井に配置されているダクトをモチーフにしており、実物のダクトと同サイズの円筒や四角柱のカタチにデザインしました。
ダクトに擬態させるために、1年間の太陽光の入り方をシミュレーションし、さらに照度センサーを設置して室内空間の照明と連動。デジタルサイネージの映像に影を付加し、階段などの色の映り込みも反映し、限りなく“擬態”を追求しています。また、照度をコントロールすることで消費電力も抑え、環境への配慮もしています。
デジタルサイネージに表示されている情報は、ユーザベースが提供するSPEEDAやNewsPicksの経済情報をリアルタイムに毎日更新。日本経済の中心地である丸の内という場所で、経済情報が駆け巡るイメージを表現しました。
また、オフィス内は街のようになっており、本物の縁石を使ったストリートや、電話ボックスやバス停をモチーフにしたオリジナルの家具をコクヨと共同開発しています。
植栽プランターも、景観だけの植栽ではなく、天板をカスタマイズしたスタンディングテーブルとしても利用できる家具をSOLSOと共同開発しました。
所在地 | 東京都千代田区丸の内2-5-2 |
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設計 | PARTY、日建設計、SOLSO |
施工 | 三菱地所、KOKUYO、Seiwa Business、DGX Japan、今城左官 |
構造 | RC造、SRC造、S造(既存) |
敷地面積 | 5,739m2(既存) |
延床面積 | 62,732m2(既存) |
竣工日 | 2022年7月 |
撮影 | 千葉顕弥 |