天理駅前広場 CoFuFun

「古墳」をモチーフにした、周辺地域を活性化する広場

デザインコンセプト
担当:nendo

奈良県のJR・近鉄天理駅の駅前広場整備計画。各種イベントや観光情報の発信、近隣住民の憩いの場として活用されることで、周辺地域を活性化させるプロジェクトだ。広場の総面積は約6,000平方メートル。その敷地にカフェやレンタルサイクルをはじめとするショップ、総合案内所、待合スペース、屋外ステージ、遊具などを備える。

天理市内に多数点在し、日常の風景に溶け込んでいる「古墳」をアイコンとした。地域の歴史的資産を複数組み合わせて起伏に富んだランドスケープをつくり、山々に囲まれた奈良盆地という地理的特徴を表現した。 円形の古墳の形状をつくるにあたり、プレキャストコンクリート製のパーツを並べていく施工方法を採用。プレキャストコンクリートは工場で成型した部材を現場で組み立てる方法のため、仕上がり精度が高く、出来上がったパーツは、橋梁の施工などに使用する超大型クレーンを使用してまるで積み木のように組み立てた。中央に柱・梁を設けず大空間が形成でき、円形であるためどの方向からの力に対しても同一条件でバランスの良い構造体となった。

古墳の段差は階段としての役割以外に、さまざまな機能を持つように設計した。腰掛けるためのベンチとして、遊んでいる子供が外に飛び出さないための柵、ステージやカフェの屋根、そして夜になれば段差内に埋め込まれたライトが自身を照らす照明装置となる。この複数の機能を持たせる設計により、利用者は場所ごとに規定された役割に縛られることなく、それぞれが自由に自分の居場所を発見できるような環境となった。まるで全体がカフェであり、遊具であり、大きな家具に感じられるような、そんなゆるやかな空間を目指した。

古墳の形状に合わせてゆるやかに湾曲した案内板や看板は、街と調和しつつ自然なコントラストを出すことができるダークグレーで統一。機能ごとに高さを4段階にそろえることで、視覚的に情報を整理した。

広場の名称「コフフン」は、デザインの主要モチーフである「古墳」と、「フフン~♪」と思わず鼻歌を歌いたくなるような心地良さを提供したいという想いや、 天理市民が「フフンッ」と他人に笑顔で自慢できるような場所となって欲しいことから付けられたもの。 英語表記の「CoFuFun」には「共生、仲間」を意味する「co」と、「楽しい」を意味する「fun」が含まれており、海外からの訪問客にも日本語名と同様のニュアンスがそれとなく伝わることを目指した。

所在地 奈良県天理市川原城町803
発注者 天理市
総合デザインディレクター nendo
広場建築デザイン監修 井渡屋建築設計
南団体待合所デザイン監修 コクヨ
サイン 日本デザインセンター 色部デザイン研究室 
広場照明 岡安泉照明設計事務所 
広場植栽 スタジオモンス
敷地面積 17,144.45m2
開所日 2017年4月1日
撮影 1~5、8枚目 takumi ota/6枚目 tadashi endo/7枚目 daici ano/9枚目 コクヨ