「2026台湾クリエイティブエキスポ」注目ブランドから紐解く、進化し続ける“台湾デザイン”の現在地

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「2026台湾クリエイティブエキスポ」注目ブランドから紐解く、進化し続ける“台湾デザイン”の現在地

台湾最大のデザイン見本市「2026台湾クリエイティブエキスポ」 が、2026年8月1日から31日まで台北で開催された。2010年の初開催以来、業界と国内外のバイヤー、一般来場者をつなげるプラットフォームとして注目を集めている同イベント。

今回のテーマは「Bit Zero」。人工知能(AI)が急速に進化する今、人間の手によるクリエイティブの本質とは何かを問い直す内容となった。イベントを主催する台湾の文化部(日本の文部科学省に相当)は台湾のクリエイティブ産業について、台湾文化が持つ多様性やインクルーシブ性、自由奔放さ、やさしさ、豊かな感情などを基盤に大きな発展を遂げてきたと説明している。

「文化キュレーション展」と「クリエイティブブランド・IPライセンス展」の2つの軸で展開された同イベントについて、本記事では会場の様子や注目のブランドを抜粋して紹介する。

文化キュレーション展

「文化キュレーション展」は、「空總國家文化基地」を舞台に開催された。会場となった場所は、かつて空軍総司令部が置かれていた基地。現在はその広大な敷地を活かし、文化芸術の拠点として活用されている。そうした歴史的背景を反映するように、会場内には空とのつながりを想起させるインスタレーションが展開された。

「No rush, you are doing fine」は、 台湾の装飾タイルと歴史的なシンボルを組み合わせた作品。ランドスケープアートを通して、大地を沈黙の存在から能動的な声へと変容させた(写真提供:台湾クリエイティブエキスポ)

「The orange story in the blue world」は、“人類のアーカイブ、読み取り、そして解凍”をテーマに、来場者を冷たいサーバー室へ誘い、ビッグデータにより私たちが真の自己を失っていく様を目の当たりにさせるインスタレーション展示。水色やオレンジ色の箱は「データボックス」を表現しており、人間の本質がデータ化されていく様を象徴していた(写真提供:台湾クリエイティブエキスポ)

特に印象深かったのが「未来旅行社」の展示だ。旅において、人間は自らの身体を動かしてその場所へ赴く必要がある。この「身体的な移動」こそ、AIには代替できない人間の体験にほかならない。そして人間は、こうした体験の積み重ねを通して自らの創造性を育んでいくのだと、本展示は提示していた。

空港の保安検査場を模した展示スペース

単に目で見るだけでなく、来場者が五感を使って楽しめるインタラクティブな工夫が随所に施されていた。なかでも、来場者の声を録音すると、システムが周波数を解析してグラフィックとして可視化してくれる体験型コンテンツが印象的だった。

「共聲海岸(Resonant Shore)」

クリエイティブブランド・IPライセンス展

台湾最大の展示・会議センター「南港展覽館」で開催されたのは、「クリエイティブブランド・IPライセンス展」だ。台湾だけでなく日本や韓国、シンガポールなど海外から600を超えるブランドが出展した。ライフスタイルや現代工芸、ファッションなど多様なカテゴリーに分かれており、BtoBだけでなく一般消費者にも公開された。いくつか注目したブランドを紹介する。

写真提供:台湾クリエイティブエキスポ

■no.30

グッドデザイン賞の受賞歴を持つ「no.30」は、亜鉛合金の鋳造技術をベースに、暮らしに洗練されたひとときをもたらすアイテムを提案している。流行を追わず、日常に癒やしを取り入れながらユーザーに寄り添うデザインが特徴だ。

「no.30」というブランド名は、亜鉛が元素周期表で原子番号30番であることに由来するもの。無機質で重厚感のある素材に丸みを帯びたフォルムを組み合わせ、心地よい存在感を放つプロダクトを展開している。

デザイン職の方にも人気だというお香立ては、シンプルで無駄のないモダンな形状が好評

近年は、お香立てやキャンドルスタンドなどのデザインに注力している。東洋では古くからお香を焚く文化が根付き、宗教儀礼など格式高い場面で用いられてきた。一方でここ数年は、年代を問わず日常の中でお香をカジュアルに楽しむ人が増えているという。

(左)ブースの様子(右)穏やかな水面に水滴が落ちる時の波紋をイメージしてデザインされたお香立て。角度によって光と影の見え方が変わり、異なる表情を醸し出す

■umami

2024年に設立された家具ブランド「umami」。ブランド名は、日本語の「うま味」から着想を得ている。うま味調味料のように、暮らしに深みと味わいを添える家具の提案が特徴だ。カラー展開は自然の食材からインスピレーションを受けた6色で統一されており、暮らしに東洋的な心地よい温もりをもたらす。

デザイナーの莊(ショウ)さんは、「シンプルさを極め、要素を削ぎ落とすデザインこそ難しい」と語る。デザインの初期段階では複雑なアイデアが浮かびやすいものの、そうした製品は実用性に欠ける場合が多いという。一方で、削ぎ落とされたシンプルなデザインはディテールに繊細さが宿り、ユーザーに使い方を想像させるゆとりを提案することにも繋がると話していた。

「花火鍋墊 HANABI」パーツを分解できるので、他の色と組み合わせてオリジナルのカラーリングを楽しめる

横幅を3段階で増やしたり減らしたりできるユニークな仕様のソファは、部屋のサイズや家族の人数によってカスタマイズ可能な、長く愛用できる一品。

「溪畔沙發 Yy sofa」実際に座ってみると接続部分は段差を感じさせないなめらかな仕上がりで、緻密に設計されていることが伺える

■Suii Suii Lab 美美實驗室

身の回りの小さな気付きから、日常にひそむ「美」のディテールに眼差しを向けるブランド「Suii Suii Lab 美美實驗室」。「Suii」は台湾語で「美」を意味する言葉に由来する。

ロゴに採用された鍵穴のような角丸長方形は、日常を覗き込み、ありふれた生活用品のデザインを分析・再考する姿勢を象徴したものだ。道具本来のあり方を見つめ直すことを通して、使う人の暮らしに溶け込む新たな美学を提案している。

幾何学的で無駄を削ぎ落としたデザインは、本ブランドの大きな特徴だ。随所に用いられた曲線は、見る人にやわらかな印象を与えるためのもの。なかでも目を引くのが室内用時計で、偏光の具合によって一つひとつ異なる表情を見せるため、使う人の好みに合わせて選べるのが魅力。

「OO時鐘/O時鐘」実際に触れてみると冷たくずっしりとした感触

■HUANGS STUDIO 艸一田人

「HUANGS STUDIO 艸一田人」は、家族で運営するデザインブランドだ。一見読み方に迷う独特のブランド名は、創業者の姓である「黃(日本語の「黄」)」の漢字を分解して組み合わせたもの。

ブランド誕生のきっかけは、母親が趣味で作っていた革製品をSNSに投稿したことにある。投稿が徐々に注目を集めるようになり、その様子を見た子どもたちが制作や運営をサポートし始めたことで、本格的なブランドへと発展していった。

「艸一田人」の牛革製品は塗料やコーティングを施していないため、表面がひび割れたり剥がれたりする心配がない。また、植物タンニンなめし革を採用しており、手の油分や使用環境によって使い込むほどに深いツヤが増していく。月日とともに味わいが増す、自然な経年変化を楽しめるのが大きな魅力だ。

黃(コウ)さんは「私たちは、出来上がったばかりの製品はまだ完成状態でないと考えています。実際にユーザーの手に渡り、何度も使ってもらうことで本来あるべき姿になっていく。使っていると多少の傷や使用感が残ることもあるかもしれませんが、それさえも愛用してきた歴史が刻まれていくということです」と話してくれた。長い年月を経て絆が深まっていく家族のような、温もりが詰まったブランドだ。

(左)「DONDON BAG 洞洞包」全体に穴が空いたインパクト大のカバン。作業場のパンチングボードに着想を得ている

(左)「DONDON BAG 洞洞包」全体に穴が空いたインパクト大のカバン。作業場のパンチングボードに着想を得ている

■KOBE LEATHER(日本からの出展)

ブランド牛として名高い神戸ビーフの皮革を使用したプロダクトを展開する「KOBE LEATHER」は、食肉加工後に廃棄されていた原皮を資源として再利用したいという想いから、2019年に神戸市で立ち上げられた。

生き物由来である原皮は状態が一つひとつ異なるが、同ブランドではそれらを無駄なく使い切ることを追求。どの製品にどの部位を活用するかを見極める目利きや、革を美しく仕上げるなめし技術を結集させている。会場には、3つのブランドが「KOBE LEATHER」とコラボレーションした多彩なプロダクトが並んだ。

神戸元町で生まれたレザーブランド「STUDIO KIICHI(下記画像左)」が、神戸レザーの素材を使用して製作したバッグ。なめしの技術で丁寧にコーティングされ、気品を感じさせる。「burass mania(下記画像右)」は、大阪の小さな町工場から生まれた真鍮製品ブランドだ。牛革と真鍮は、ともに使い込むほどに味わいが増していく素材。異なる魅力を備えた素材同士が引き立て合う、斬新なコンビネーションが目を引いていた。

神戸レザー協同組合代表理事の片山さんは「このプロジェクトが前例となり、ほかの地域にも良い影響を与えていければ嬉しい」と展望を語った。地域の恵みを大切に活かしたいというフィロソフィーが感じられた。

(左)「STUDIO KIICHI」のバッグはとても軽く、実用性も抜群(右)真鍮製品が並ぶ「burass mania」

今回の「2026台湾クリエイティブエキスポ」では、地域性やストーリーを大切にしながらデザインの美学を追求する台湾のクリエイティブ産業の現在地と、その広がりを感じることができた。今後も規模を拡大させながら、ブランドとユーザー、そして日本をはじめとする海外のブランドとの交流を促すプラットフォームとしてさらなる発展を期待できるだろう。

2026台湾クリエイティブエキスポ
https://creativexpo.tw/en

取材・執筆・撮影:竹田歩未 編集:石田織座(JDN)