ショールーム「FOREST」から発信する、新しい素材との出会い

井ノ口：秋葉原にあるショールーム「FOREST」では、空間デザインに関わるみなさんにこれからの“兆し”を伝えたいという思いで情報を発信しています。生活空間の今後を見据えた新しいコンセプトやサーフェスデザイン、環境への配慮と機能性向上を実現した製品群の空間展示を行っていますが、気を付けているのは「なぜこういうものを自分たちが出すのか」という背景まで空間全体で見せ、発信することです。

――「FOREST」発信のセミナーイベントも定期的に行っていますが、どういった経緯があったのでしょうか？

井ノ口：2019年に、「FOREST」はオープンしてから30周年を迎えましたが、もともとのイベントの始まりは、2000年頃にショールームに来れない地方のお客さまに向けて、自分たちから出向いてセミナーを行いましょうと、会議室などを借りてトッパンのデザインや海外トレンドについての話をし始めたことなんです。その頃からデザイナーやメーカー、工事会社の方などいろいろなお客さまがひとつの場所に集うセミナーも行うようになりました。個別にプレゼンテーションをしていたものがセミナーイベントに発展したという流れですね。

ミラノデザインウィークのデザイントレンドをまとめたプレミアムセミナーは、「FOREST」でのイベントを始めて以来ずっと続けています。ありがたいことに、「今年のミラノをトッパンはどういう切り口で見るんだろう？」と毎回楽しみにしてくださっているお客さまがいらっしゃるのはうれしいことです。

坪井：最近では著名な建築家やまちづくりのプランナーの方などを外部講師として招いたりと、コンテンツに広がりを持たせています。私たちが平面・立体・空間へ事業領域を拡大する中で、幅広く業界でご活躍されている方々に来ていただいています。

――2月に開催されるセミナーイベントはどのような内容になるのでしょうか？

井ノ口：今回の「フォレストフェア2020冬」は、東京・名古屋・大阪の3会場でセミナーを中心に開催します。非住宅市場に特化した内容で、C-lab.による「CMF＋P（パターン）」の視点で分析した調査データの発表、スタイル傾向も挙げてご紹介し、提案に併せた商材を新商材の発表とともに体験いただける場にする予定です。

「フォレストフェア2020冬」が行われるFOREST

坪井：3会場共通のセミナーには、トッパンのクリエイティブ本部メンバーの松村三知代による「世界のコントラクトとまちづくりの『今』」、東京会場限定のスペシャルセミナーには、“モノ・コト・ヒトのおもしろたのしい関係”を合言葉にさまざまな空間や家具・什器のデザインを手がけるバッタネイションの岩沢兄弟さん、コクヨが運営するオウンドメディア『WORKSIGHT』の編集長・山下正太郎さんの2名を講師にお迎えします。

過去開催のセミナーの様子

井ノ口：東京会場の最終日には、アーティスト・ミュージシャンの和田永さんをゲストに迎えた「ネットワーキングパーティー」も開催します。C-lab.のメンバーがメディアアートの世界的なイベント「アルスエレクトロニカ」で和田さんにお会いして今回の話が決まりましたが、間近で彼のパフォーマンスを見られる貴重な機会になると思いますし、ぜひこちらも楽しみにしてほしいですね。

空間を“演出する”ことは、トッパンの使命

井ノ口：イベントでは、新たな素材開発をされたクリエイターさんとのコラボレーション製品も発表します。トッパンの加飾技術によって軽量ながら風合いや立体感も表現できる化粧材になっているので、おもしろく使っていただけると思っています。期間中はショールームを香りや音、バイオフィリックデザインなども意識した、五感にアピールするインスタレーション空間とする予定です。バイオフィリアの視点からグリーンと新商材の組み合わせも楽しんでいただけるので、トッパンの新しいサーフェスデザインに触れていただく場にしたいと思います。

単純にひとつひとつの製品の集積としての空間を売りたいということではなく、「空間とはこういうもの」だとトッパンが考える空間のあり方を提供していきたいと思っています。心地よい空間はもちろんつくっていきたいですが、我々の使命としては、サーフェスで彩りを添えて“空間を演出する”ということがますます大事だと思っています。

取材・文：木村早苗　撮影：中川良輔　編集・聞き手：石田織座（JDN）