Vectorworks ベクターワークス活用事例

真ん中に遊び心を。新たなエンターテインメント体験を提供するタイトーの空間づくり(2)

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真ん中に遊び心を。新たなエンターテインメント体験を提供するタイトーの空間づくり(2)

デザイン共有にVectorworksの3Dを活用。初期段階で社内や協力業者と納得したデザインを構築

雨谷:「ストアデザインマニュアル」や「店舗設計指針」の運用を検討していく中で、設計の初期段階から3Dによる検証を行っていく必要性を強く感じるようになっていきました。というのも、いくらマニュアルでデザインをルール化できたとしても、実際の施工に入る前には、店舗の完成イメージを社内だけでなく社外の協力業者さまと共有し、全員が納得した形で進める必要があるからです。

これまではパースや展開図を使って議論を行っていましたが、空間設計にそこまで詳しくない人は2Dの図面や展開図だとなかなかイメージがつきにくいということがありました。また、リリースに出せるような立派なパースをつくったあとでデザインの修正を指摘されると、パースを描き直すために再び時間やお金をかけることになってしまいます。そこで、もっと早い段階で、全体のバランスを気軽に確認できる方法はないか?ということで、デザイン検証にVectorworksによる3Dを活用することにしたんです

榎本:3Dを使えば、詳しくない人が見ても直感的にこういう風になるんだというイメージが湧くし、強力な説得材料になります。3Dを使う前は、社内確認に時間がかかってしまい、設計の時間が十分に取れないことも多くあったので……。3Dで事前確認ができるようになってからは、スムーズかつスピーディーに、具体的な提案ができるようになりました。社内の関係者からも、すごくわかりやすくなったという声があがっています。

雨谷:3Dを早い段階で共有することで、運営部門の理解も深まり、実際に運営するにあたってのモチベーションアップにもつながっていると思います。また、社内の関係者からも納得を得たうえで進められるようになり、私たち施設管理課の信頼度も上がってきたのかなと感じています。

榎本:3Dのデータ作成にはVectorworksを活用しています。もともと当課ではVectorworksは利用していたものの、3Dについては別のソフトが使われていました。私は前職でVectorworksの3D機能を利用していたこともあって、操作性の良さや精度の高さも知っていたため、ソフトを統一した方が効率化も図れるのではないかと思い、Vectorworksで一本化することを提案させていただきました。実際、Vectorworksを使っている協力業者さまも多いですし、弊社でつくったデータをそのまま使っていただけるというのも利点だと思っています。

榎本:Vectorworksを活用することで、「ストアデザインマニュアル」や「店舗設計指針」に基づき、3Dを使ったデザイン検証について内製化できるようになりました。当課ではVectorworksを使った3Dデータを私が作成していたんですが、雨谷さんと相談しながら、Vectorworksや3Dソフトを使ったことがない人でも簡単に3D検証を行えるように、社内外に向けた「3D作成マニュアル」も整備させていただくこととしました。

Vectorworksの国内総販売元であるA&Aさまにも構成や3Dモデルの作成方法、テンプレートなどをアドバイスいただきながら、「ストアデザインマニュアル」「店舗設計指針」の改訂版とあわせ、2020年の10月に発行することができ、こちらも協力業者さまに配布させていただくことができました。

タイトー施設管理課が発行した「3D作成マニュアル」の一部。柱・壁・床・ゲーム機の3Dと各デザインパターンの作成手順が80ページに渡って作成されている。3D未経験者が作成できるよう工夫されているのが特徴。

「3D作成マニュアル」づくりのベースとなった「熊本下通セカンド店」

榎本:「3D作成マニュアル」をつくる際のベースになったのは、「タイトーステーション 熊本下通セカンド店」でした。

以前とくらべ、Vectorworksの3Dでデザインイメージをつくることで、外から店内を見た様子がパッと見てわかるようになりました。「熊本下通セカンド店」は3層の店舗なのですが、「お客さまには2階に上がっていただきたいし、階段は外からも見えるのでデザインにこだわろう」、逆に「天井は外からは見えないので、デザインしなくてもいいのではないか」といったより具体的な議論がしやすくなりました。

(左)「タイトーステーション 熊本下通セカンド店」外観写真/(右)「タイトーステーション 熊本下通セカンド店」外観3D。設計の早い段階で議論を重ねた3Dのイメージ通りになっていることが分かる。

榎本:併設の「タイトーステーション 熊本下通店」でも3D検証が大きく役立ちました。たとえば「通路が狭く、左側の壁にはゲーム機が置けないので、壁が見えたままになる……だから、左側の壁のデザインには力を入れた方がいい。でも、それ以外の壁はデザインしなくていいね」といったかなり具体的な議論が早い段階からできるんです。

(左)「タイトーステーション 熊本下通店」の展開図/(右)「タイトーステーション 熊本下通店」の3D。左の展開図とくらべ、直感的かつ自由なアングルで確認できる。

榎本:展開図だと、壁のどの部分がゲーム機で隠れて、どの部分が見えるのかをイメージしにくいので、全面に同じ労力をかけてデザインしたくなってしまいます。3Dを導入したことで、内装で投資すべき場所の検討がしやすくなるという効果がありました。

施主と協力業者が一体となって、3Dを活用

榎本:また、お客さまにタイトーステーションを目に留めていただくためには、外から見たときの看板の位置も重要です。これまでは実際に現場に行って確認しないと検証できませんでした。でも3Dを使えば、施工前に簡単に検証することができるんです。

「3D作成マニュアル」のテンプレート。形状やカラーによって複数の看板パターンがあるため、それぞれを事前に作成して簡単にシミュレーションできるように工夫している。

「3D作成マニュアル」では、テンプレートでテクスチャを準備し、さまざまなデザインパターンを3Dで簡単に再現し、検討できる。

Vectorworksのウォークスルー機能。遠景→近景→入口→1階→2階→3階など、人の動く視点で3D検証できる。

雨谷:3D検証を導入したことで、施工完了後の是正を大幅に減らすことができるようになりました。現在も運用しながら、ウォークスルーなど3D検証が活用できる部分を学んでいるところです。今後もA&Aさまにもフォローしていただきながら、協力業者さまに「Vectorworksを使って一緒にやっていきませんか?」という提案をどんどんしていきたいと思っています。

Vectorworksの操作方法から活用の仕方まで詳細に記されたマニュアルについて、無償で社外関係者に提供することに抵抗はなかったのだろうか?

雨谷:これらのマニュアルは、私たちタイトーの施設に限らずに活用してもらってもいいのかなと思っています。タイトーだけではなく協力業者さまを含めたチーム全体“オールタイトー”でスキルを上げていくことは、お客さまにより良いエンターテインメントを提供することにつながるはずですから。

今回発行した3つのマニュアルはまだ運用し始めたばかり。「つくって終わり」ではなく、「続けていく」ことが私たちのテーマです。いろいろな要望やフィードバックをいただきながら、定期的に改善していくつもりです。

「真ん中に、遊び心を。」の精神を忘れずに、楽しさを提供していきたい

榎本:今回のコロナ禍で外出が思うようにできないこともそうですが、そもそも今は家庭用ゲーム機やスマートフォンの普及により、家でもゲームができる時代です。そんな中でも、お店に足を運んでくださる方が一定数いらっしゃることがわかってきました。

だからこそ、ニューノーマルな生活様式の中でも足を運びたくなるような店舗、新しい遊び方を提案していかなくてはなりません。

雨谷:私たち社員が大切にしているのは「真ん中に、遊び心を。」という言葉です。タイトーは遊びを提供する会社だからこそ、まずは自分たちが遊び心を持つことが大事。そして、そこで得たワクワク感を持ってお客さまや日々の仕事に接することが、これまで以上の楽しさや驚きを提供することにつながると思っています。

しかし、店舗の開設にあたってはスピード感も重要視され、ワクワク感を持って仕事をする余裕を見失いがちです。だからこそ、「真ん中に、遊び心を。」を忘れずに、これまでの空間づくりで培ってきたノウハウを活かして新たな空間を生み出し、エンターテインメント体験、思い出に残る“楽しさ”を提供し続けていきたいですね。

取材・文:楳園麻美(Playce) 撮影:高比良美樹 編集:石田織座(JDN)

株式会社タイトー
https://www.taito.co.jp/

エーアンドエー株式会社
https://www.aanda.co.jp