デザインの

ユニバーサル・サウンドデザイン 代表取締役 中石真一路 「人々に愛される本物づくり、これが最終的な目標」
テーマ

「コミュニケーションサポートシステム」

  • ユニバーサル・サウンドデザイン 代表取締役/中石真一路

新しい潮流を起しているプロジェクトから、「問題解決方法のヒント」や「社会との新しい関係づくり」を探る、「デザインの波」。 第3回目のゲストは、難聴者にも聴こえやすいスピーカー「COMUOON(コミューン)」を開発したユニバーサル・サウンドデザイン代表の中石真一路氏。

構成/文:神吉弘邦、撮影:真鍋奈央

身体的な障害のうちでも、外観から分かりにくいのが難聴。意思疎通が図りにくいことで生まれるコミュニケーションのギャップを、どう解決するか。サウンドデザインという観点から挑んだのが、ベンチャー企業のユニバーサル・サウンドデザインだ。音楽再生スピーカーの開発段階でたまたま気づいた音の特性にヒントを得て、これまでなかった製品ジャンルを切り拓いた。「壊れたコミュニケーションを修復したい」と語る、開発者の声を届ける。

「COMUOON」の使用シーンとこれから期待される役割

「COMUOON」はいろんなところでご利用いただいています。すでに施設数だけで450カ所以上です。九州大学では耳鼻咽喉科で4台ご利用いただいています。佐賀県立ろう学校では、児童の発話時のフィードバックに「COMUOON」が今年の4月より使われています。発話のトレーニングですが、療育においてはいろんな先生方が使い始めているのが特徴です。佐賀大学医学部では看護師さんがベッドサイドに持っていきたいというリクエストがありました。そこでバッテリー内蔵のモバイルタイプを開発して現在の検証を行っております。

ベッドサイドにも持っていきたいという、佐賀大学医学部の看護師からのリクエストで開発された、バッテリー内蔵でワイヤレスタイプの「COMUOON CONNECT」。2015年9月から発売開始されたばかりの新製品

ベッドサイドにも持っていきたいという、佐賀大学医学部の看護師からのリクエストで開発された、バッテリー内蔵でワイヤレスタイプの「COMUOON CONNECT」。2015年9月から発売開始されたばかりの新製品

新しい要望もたくさん来ています。例えば高齢のタクシーの運転手さんには難聴の方が多いみたいなんです。リタイア後も運転が好きだからと転職してくるのだけど、耳が遠くなっていて「渋谷(しぶや)」と「日比谷(ひびや)」を聴き違えたりしてしまう。ましてや透明な防犯ボードに仕切られ、前を向きながら話すわけですからね。「COMUOON」を活用して、お客様とのコミュニケーションを改善したいという思いが、お客さまにもご理解いただけるとすごく嬉しいですよね。

今後は海外展開も加速させたいですね!難聴は世界的に課題となっています。特に海外の言葉は子音が多いから聴こえにくいという話もいただいています。すでにアメリカ、韓国、台湾などで検証を行っていて高い効果が実証できています。

人々に愛される本物づくり、これが最終的な目標

「COMUOON」ばかりでなく、サウンドデザインをキーにした「解」を世の中に提供していきたいです。「SONORITY(ソノリティ)」は、難聴の人が来るコンサートで聴こえを改善できる大型スピーカーですが、反射の多い空間にも使えます。例えば教会などはディレイ(反響)がすごい空間だから、お年寄りに話が聞こえにくくなっています。でも、これを使うと聴こえが改善されます。

楽器や人の声の響き、反響という意味のクリアネス・ラインアレイスピーカーシステム「SONORITY(ソノリティ)」。「拡声」を目的としたシステムではなく、すべての人が聴こえやすい環境構築を目指して開発された

楽器や人の声の響き、反響という意味のクリアネス・ラインアレイスピーカーシステム「SONORITY(ソノリティ)」。「拡声」を目的としたシステムではなく、すべての人が聴こえやすい環境構築を目指して開発された

設計事務所からの提案もいただいています。自分たちで「サウンドリノベーション(R)」と呼んでいるのですが、病院にせよ、結婚式場にせよ、聴こえの改善 ができる空間はまだまだ多いです。この「Seeon(シオン)」のスピーカーユニットは「COMUOON」と同様のものを使い、エンクロージャー部分の製作をチェロ職人にお願いしています。非常に明瞭度が高いので音を大きくしなくても聴こえやすいのが特徴ですね。エンクロージャー部は軽くするためにかなり薄く製作してもらっていますが、楽器職人さんとコラボレーションさせていただいたことで、木や塗装に関してさらに勉強させていただくきっかけになりました。

イヤフォンも開発中で、まもなくアーティストとコラボレーションした第1弾が発表できる予定です。ホンモノにこだわるプロフェッショナルが集い開発を進めています。試作機での試聴をたくさんのアーティストのみなさんに実施いただいていますが、「これ欲しい!」と絶賛いただいていますのでぜひ楽しみにしていてください!

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僕の目標は「COMUOON」だけでなく、人々に愛される本物をつくること。ここからまた本物を目指し、製品をつくり続けたいと思います。

ユニバーサル・サウンドデザイン
http://u-s-d.co.jp/