2社の技術と意匠が融合、広島から新しい生活家具を海外へ発信-「imm cologne」出展者インタビュー(2)

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2社の技術と意匠が融合、広島から新しい生活家具を海外へ発信-「imm cologne」出展者インタビュー(2)

――広島県府中市の伝統的なものづくりとして、古くから栄えてきた府中家具を手がける、株式会社松創と高橋工芸株式会社の2社が協同運営する「MEETEE」。和家具のような工芸製品がメインの「松創」は、もともと指物(さしもの)の技術で椅子をつくろうとスタートした会社。「高橋工芸」は、桐の婚礼箪笥が有名な府中市のなかで、リビングボードやデスクなどの洋家具を主力に制作してきた会社であり、オーダー家具にいち早く着目した会社だ。以前から懇意にしていたという2社によって生まれた「MEETE」とは、どんなブランドを目指しているのだろうか。

2社で取り組む、MEETEEというブランド

-MEETEEというブランドをはじめたきっかけを教えてください。

松創・松岡専務:もともとJAPANブランド育成支援事業という、国から補助金をもらって新規事業にチャレンジするプロジェクトが府中の家具組合で通ったことがきっかけでした。最初から海外向けに発信していくつもりでスタートしたのですが、10年前くらいから海外の展示会に出してたんですがあまりうまくいかなくて……。そんな時に知人からデザイナーの倉本仁さんを紹介してもらい、何をつくっていくか一緒に考えるところからスタートしました。それが2013年の話ですね。

株式会社松創 専務取締役・松岡正典さん

株式会社松創 専務取締役・松岡正典さん

倉本さんはさまざまな分野で注目されはじめていましたが、当時まだ家具を意外と手がけていなかったということもあり、これまでにないものを考えてくれるんじゃないかと期待しました。実際にお会いすると気さくな方で意気投合し、ディレクターとしてMEETEEを監修してもらうことになりました。

-ブランド名の由来は?

松創・松岡社長:もともとはちがう名前だったのですが、海外での呼ばれやすさを考えて変更しました。松創からは「M」、高橋工芸からは「T」を取って、あとは印象に残るような字面を考えました。みんなが集まるという意味で、「MEET」の要素も少し含んでいるんです。

松創・松岡専務:ほかの有名家具産地と同じものをつくっていても勝負ができないので、海外でも見かけないようなデザインで、ベーシックなものではなくてモダンなものをつくっていこうとしています。あとは倉本さんにMEETEEらしさを出すような、デザインのフィルターをかけてもらっています。2社それぞれの役割については、松創はおもに椅子を、高橋工芸はテーブルや棚物を分業してつくっています。

造船のイメージからつくられた、朱の椅子

-1番反響があるシリーズは?

松創・松岡専務:現在8シリーズありますが、いちばんはじめに倉本さんがデザインした「Nadia」シリーズでしょうね。うちの中でもフラッグシップ的なシリーズです。発売前から日本でグッドデザイン賞をいただいたり、2014年に「NHKワールド」という世界113か国に放送される番組でも製作工程が特集されたりと、開発段階でも注目を浴びていました。2015年にimmに出展した時も「Nadia」の椅子に目を止めて、ブースに立ち寄ってくれる方が多いので、圧倒的に目を引く商品ですね。注目していただけるようなおもしろいデザインではありますが、つくる工程は特に難しいです。

Nadiaシリーズ

Nadiaシリーズ

高橋工芸・井上:倉本さんが2社を訪れた際に、何か特色があるものを見たいということで、グルッと府中市周辺をまわったんです。福山市に入り、全国的にも有名な鞆の浦の風景を見たときに、MEETEEの家具に舟造りの木組みのイメージを取り入れられたらいいなと思い、生まれたのが「Nadia」シリーズです。

高橋工芸・高橋社長:府中は高級婚礼箪笥を主力に栄えた産地です。椅子づくりに関しては後発の産地であるため、今までと同じ発想の椅子では注目されない。「Nadia chair」は、本来の椅子の構造とは異なるので、海外の見本市でも目を引いたんだと思います。日本の技術力を感じられますよね。

高橋工芸・井上:「Nadia」は、裏のつくりが特に綺麗です。日本だと当たり前のようでも、ヨーロッパで見えない所までキチッと仕上げているものは多くありません。2014年にシンガポールで開催された「Hidden – Unveiling Japanese Design」という展覧会やimmの会場でも、あえてNadiaをひっくり返して裏を見せて展示しました。

高橋工芸株式会社 企画/設計・井上拓也さん

高橋工芸株式会社 企画/設計・井上拓也さん

高橋工芸・高橋社長:1番最初に倉本さんのNadiaのデザインを見た時は、エクステリアファニチャーのように、プラスチック成型の家具かなって思ったんですよ。型をつくって樹脂を流せばたくさんつくれるじゃないですか。でもまさか木でつくるなんて考えられないと思いました(苦笑)。木でつくったからヨーロッパの人がびっくりしたんじゃないかな。

松創・松岡社長:一品物であればつくれるなと思いましたが、量産品となるとどうしようかと思いました。ある程度機械を使わずに手づくりで進めて、プロトタイプを1つ完成させるのに1か月くらいかかりました。そのあとに手直しが何回かあったりと、本当に難しい技術を使っています。ただ組むだけという問題ではなくて、欧米の方は日本よりも体格の大きい人が多いので、強度の問題も重要でした。ラインが細く華奢に見えるようにしつつ、補強していかないとできない。開発の段階で何度も壊れたことがありました。4〜5回はつくり方を変えていると思います。

-最後にこれからMEETEEが目指していることを教えてください。

松創・松岡社長:やっぱりネットワークや販売のシステムをちゃんとつくっていくことですね。デザイナーが気に入ってくれれば、どこかに使いたいってなった時にはある程度値段が高くても買ってくれる。ヨーロッパでも同じだと思いますが、安いものはいくらでもありますし、安いものだから売れるというわけではなく、こだわったものをつくっていかないといけないですよね。

MEETEEの製品の脚や背もたれなど、いろいろなパーツを手にする4人

MEETEEの製品の脚や背もたれなど、いろいろなパーツを手にする4人

売るために何でもつくるっていうわけではなくて、ブランドに恥じないものをつくっていく。いいものに旬はないし、ずっと続いていくものだと思うんです。なので、MEETEEは一過性で終わらせるのではなく、長く続けてやっていくことが大事だと思っています。新しいデザイナーとの関係を築いていって、新しいアイテムをつくり、国内のみならず世界へ発信していければと思っております。

高橋工芸・高橋社長:国際的に通じる品質とデザインをしないと生き残っていけない中で、immに出展して国際的に通用するデザインと評価していただけました。海外で評価をもらったものを日本に持ち帰って、それが少しずつ会社のイメージにつながっていっています。倉本さんデザインの「Molly shelf」が日本でグッドデザイン賞を受賞できましたし、これから国内でもどんどん売れる製品になっていってほしいと思います。

松創・松岡専務:松創として今まで外部のデザイナーと組んだことはありましたが、MEETEEに取り組んだことでいろんなことが見えてきました。倉本さんはブランディングのやり方もわれわれメーカーの考え方とは違う視点をお持ちなので、すごく勉強になります。今後も旬なデザイナーとどんどん仕事をして、世界のトレンドの中のひとつに入り続けたいなと思っています。

高橋工芸・井上:僕はMEETEEが収納を目的にした多機能な家具や、空間を演出するための華やかな家具ではなく、ユーザーの“生活の一部”になってくれたらいいなと思います。MEETEEの中でも「Five」と「Molly」というシリーズは特に優しい距離感のあるアイテムに仕上がってるんですよね。「Five」っていう五角形のシリーズは、特殊な角度がつくことで対面する緊張感をやわらげてくれます。ファブリックを使った「Molly」シリーズは、主張し過ぎていないんだけど気付いたら触れているような、たとえば子どもが遊んでいる時に気付いたらもたれ掛かっている。そんな家具になったらなって。そういうものをつくり続けたいとここ数年、MEETEEに取り組んできたことで思うようになりました。

制作途中の「Five」シリーズの椅子

制作途中の「Five」シリーズの椅子

取材・文:石田織座(JDN編集部) 撮影:中野章子

MEETEE
http://meetee.jp/ja/

■imm cologne 2018 ケルン国際家具インテリア見本市
【会期】
2018年1月15日(月)~21日(日)
【会場】
ドイツ連邦共和国 ケルンメッセ会場
【入場料】
1日券:前売価格 6,500円
通し券:前売価格 13,000円
※為替変動等により変更される場合があります
【主催・お問い合わせ】
ケルンメッセ株式会社
http://www.koelnmesse.jp/imm/