2社の技術と意匠が融合、広島から新しい生活家具を海外へ発信-「imm cologne」出展者インタビュー(1)

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(左から)松創・松岡正典専務、高橋工芸・井上拓也さん、高橋工芸・高橋正美社長、松創・松岡佳二社長
60年以上の歴史を持ち、世界3大家具見本市のひとつとされる「imm cologne ケルン国際家具インテリア見本市(以下、imm)」。毎年イタリアで開催される「ミラノ サローネ」と並ぶ国際見本市だ。そんな家具業界の重要なイベントには日本の企業も出展している。2017年のimmに出展した、広島県府中市の家具ブランド「MEETEE(ミーティー)」に、ブランド設立からimm出展のきっかけ、実際に得た反響や国内外におけるマーケティングについてお話をうかがった。
「MEETEE」が手がける、組み木構造の印象的な椅子「Nadia」。一度見たら忘れない、木造船を想起させるような家具シリーズ

「MEETEE」が手がける、組み木構造の印象的な椅子「Nadia」。一度見たら忘れない、木造船を想起させるような家具シリーズ

――2017年は51か国から1361社が出展、139か国からおよそ15万人が来場したimm。毎年1月にドイツのケルンメッセを舞台に、最新のインテリアスタイルが紹介される場となっている。倉本仁さんがディレクターをつとめるMEETEEは設立4年目のブランドだが、immには2015年から出展をし始め、3回連続の出展を果たしている。

ブランド設立以来挑戦してきた、immへの出展で得たもの

-海外展開を考えるにあたって、immという見本市に出展した理由は何でしたか?

松創・松岡佳二さん(以下、松岡社長):ブランド開始時から倉本仁さん(JIN KURAMOTO STUDIO)にデザインディレクターとして入ってもらっていますが、「MEETEE」は、もともと海外に向けて発信していきたいとはじめたブランドです。プロジェクト開始1年後に初出展した見本市は、「Five」というシリーズのデザインを担当したスウェーデンのデザインチーム・Claesson Koivisto Rune(CKR)の母国で開催された「Stockholm Furniture Fair 2014」でした。反響は良かったんですが、見本市の規模的には少し小さく、ストックホルムの近隣の方々しか来ないということがありました。

松創・松岡佳二社長

松創・松岡佳二社長

松創・松岡正典さん(以下、松岡専務):そこで翌年にはじめてimmに出展したのですが、実は初回はあまりいい評価が得られませんでした(苦笑)。ストックホルムに出展した際は、CKRが事前のプロモーションとしてメディアや大使館などに声かけをしてくれて臨んだので、すごく反響があったんです。あとは来場者が全員観てくれるくらいの規模感だったこともあります。でもimmは、新しいものを探したいという人はいるかもしれないですが、目当ての所しか行かない人がほとんどでした。そういう環境に事前PRがない状態で出展したので、来場者こそ多いのですが、具体的な話に至ることが1年目はなかったですね。

2015年imm出展時の様子

2015年imm出展時の様子

松創の工場にて、MEETEEディレクターの倉本仁さんと、CKRのMÅRTEN CLAESSONさん

松創の工場にて、MEETEEディレクターの倉本仁さんと、CKRのMÅRTEN CLAESSONさん

松創・松岡専務:2回目のimm出展時は、まずMEETEEの製品を知ってもらうために、ドイツの建築家やデザイナーが多く観るWebサイト「architonic(アーキトニック)」に登録しました。世界のブランドやデザイナーが検索できたり、国ごとに調べられたりするんです。日本からも10社くらいが登録していると思います。登録しておくと展示前にも問い合わせが何件かあり、事前にアポイントが取れましたね。日々の問い合わせや、出展時にブースに来てくれる方も増えました。事前のPRなど、しっかり情報を発信していなければ、2回目も変わらなかったと思います。また、2年目以降はimm側にいろいろ相談をして、immのマッチングサイトでエージェントを探すことなどもできたので、それはすごくいい仕組みだなと思いました。

出展して気づくことができた、MEETEEの強み

-来場者からの声にはどのようなものがありましたか?

高橋工芸・井上拓也さん(以下、井上):僕が対応させてもらった方は冒頭に「とてもきれいだね。触ってもいい?」と必ずおしゃってくれました。私たちは特に意識していないことですが、海外の方からすると塗装の微妙な木の透け方とか、細部の仕事が繊細に見えるそうなんです。私たちには当たり前のこと過ぎて最初は何を言われているのかわからず、「どこがすごいことなんですか?」などと聞いてしまうほどでした(笑)。NadiaやFiveなどに使っている赤色に関しても、「不思議な赤、神秘的な赤だね」って言葉が多かったですね。僕はつくり手側の立場で応対をしていたので、そういう声が多かったのかもしれないです。

(左)松創 専務取締役・松岡正典さん、(右)高橋工芸 企画/設計・井上拓也さん

(左)松創 専務取締役・松岡正典さん、(右)高橋工芸 企画/設計・井上拓也さん

松創・松岡専務:日本製って車にしても家電にしても“信頼度が高い”って印象があるんじゃないかと思います。そういうイメージもあってか、「Nadia」は日本人じゃないとつくれないよと言われました。品質は日本人がつくってるから問題ないだろうっていう声が多かったです。

高橋工芸・高橋正美さん(以下、高橋社長):MEETEEは“日本製”だということをアピールせず、ヨーロッパの家具ブランドと並んでブースを出させてもらっていました。また、日本らしさを打ち出していたわけではないけれど、日本人がつくるから、色の雰囲気や質感の出し方が日本的になったのではないかなと思います。仕事面やデザイン面、仕上がりでの悪い評価はまったくなかったです。価格面はもう少し抑えられないかっていうのはありましたが…(笑)。

高橋工芸株式会社 代表取締役・高橋正美さん

高橋工芸株式会社 代表取締役・高橋正美さん

高橋工芸・井上:直接対応していない場面でのことですが、通訳の方から来場者がこんなことを話してましたよ、と教えてもらったことが印象に残っています。「80年代からずーっといろんな椅子を見てきたけど、代わり映えのしないものから、それを打ち破る椅子がやっと出た」と、Nadia chairに座って話を仲間内でしていたのが耳に入ったみたいです。私たちがその場にいないところでも、そういう話が繰り広げられていたことがすごく嬉しかったです。

きちんとつくり込まれたブース展開と、地域を限定したアプローチ

-immが他の展示とは違うと思う部分は?

松創・松岡専務:お話した来場者の方もおっしゃっていましたが、サローネはショー的な要素が強くなってきているので、いかにも華やかに派手に新作やプロトタイプを強く出す展示、広告宣伝を目的に出すところが多くなっている気がします。immは、見本市に出展したものが、1年経って製品化されてドイツで販売していくっていう流れがあるみたいなので、より商談向けという印象があると思います。派手なブースはありませんが、ゆっくり商談ができる。各メーカーもきちんとつくり込んだブースを展開していますよね。

2017imm展示会

2017imm展示会

松創・松岡社長:新しいデザインの傾向をみるのはミラノで、ビジネスをしようと思うならケルン(imm)がいいのかなと思います。

松創・松岡専務:あと、immは私たちが売り込みたいと思っているドイツ、イギリス、フランス、オランダ辺りのバイヤーが多いんですね。サローネは世界中から来場者がありますが、地域を限定して商売のアプローチがかけられる点では有効だと思います。

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