デザインのチカラ

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INTERVIEW 15 YAMAHA 乗る人を美しく見せるデザイン

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INTERVIEW 15

YAMAHA 乗る人を美しく見せるデザイン

ヤマハ発動機株式会社 デザイン本部 吉良康宏氏(デザインディレクター) 大富部兼二氏(主査) 山崎伯晃氏(主事)

2013.08.21

オートバイを代表格として、優れたエンジン技術を駆使した製品を世に送り出し続けているヤマハ発動機。世界中で親しまれてきたデザインに貫かれた「ヤマハらしさ」とは何か。
2012年に新設されたデザイン本部のデザインディレクター吉良康宏氏、スポーティコミューター「TMAX」のスタイリングを担当した大富部兼二氏、カラーリングデザイナーの山崎伯晃氏にお話を伺った。

世界に通用する美しいものづくり

吉良康宏(きら やすひろ) デザイン本部 デザインディレクター
吉良康宏 きら やすひろ
デザイン本部 デザインディレクター
1970年ヤマハ株式会社入社。各種楽器のデザインを担当。中でもデジタル・ウインド・ミディ・コントローラーWX7はニューヨーク近代美術館永久保存に選定。2004年執行役員デザイン研究所長就任。2008年信州大学繊維学部感性工学課程教授を経て、2012年からヤマハ発動機のデザインディレクターに就任。

これまで社内のデザイン組織が存在しなかったヤマハ発動機に、2012年、外部のデザイン子会社を取り込み、組織化する形でデザイン本部が設立された。デザインディレクターに就任したのは、長年にわたりヤマハで楽器のデザインに携わってきた吉良康宏氏だ。
1955年創業のヤマハ発動機は、125年の歴史があるヤマハと兄弟会社のような関係。楽器とエンジン製品の間には、異業種という隔たりではなく、世界に通用するものづくりを目指してきたブランドとして共通の精神があると言う。

吉良:ヤマハに入社してからずっと、『世界に通用しなければだめだ、美しいものをつくれ』と言われていましたし、デザインでそれを体現してきました。ヤマハ発動機でも同じことです。例えば、街で目の前をバイクがスーッと横切った時、『いまの格好よかったね』と感じてもらえなければダメ。ヤマハのデザインは動いた時にも美しくあってほしいと思っています。

ヤマハには、世界に通用する技術はもちろん、文化や美しさを大切にする気風がある。そのために製品を作り、素材を追求し、技術を高めてきた。

吉良:我々のデザインの大きな柱は、人との関わりを大事にすること。つまり、デザインは人間のためのものだということです。オートバイやスクーターならば、快適で、乗っている人が美しく見えるデザイン。それがどういうものかを理解できなければ、ヤマハのデザイナーにはなれません。絵だけうまい人はたくさんいます。でも、はっきりいってそれだけの才能なら不要です。むしろ、世の中の人々を理解して、受け入れてもらえる、喜んでもらえるものを考えられるデザイナーであってほしいですね。

デザインとはそもそも、問題解決の手段のひとつ。だからこそ、現実問題に対して、答えを導き出そうとするデザインの力が必須になる。

ヤマハ発動機のデザイン哲学

ヤマハ発動機のブランドスローガン「Revs your Heart」は、人の気持ちを昂ぶらせるのがヤマハ発動機だという信念を表している。そして、昨年デザイン本部を設立するにあたり、新たに掲げられた独自のデザインフィロソフィーが「Refined Dynamism」だ。

吉良:我々のユニークな部分は、モーターサイクル、スクーター、ボート、水上オートバイなど多くのものが、エンジンを軸としたものづくりだということです。だからこそ、“動くもの”のデザインを意識しなければなりません。最近ではイメージ画を画面上で回転させていろいろな方向から見ることもできますが、スケッチはやはり静止画です。クレイモデルにしても同じです。動いた状態を想像して美しいかどうか。さらにその時、乗っている人が美しく見えるかどうか。そこまで考えた上でデザインしよう、というのが我々の姿勢です。

デザインフィロソフィーに基づき設定された4つのデザインビジョン。それが「Awakening Passion」「Lasting Integrity」「Elegance in Motion」「Brilliant Beacon」だ。

「動いた状態での美しさを表現するデザインが大切です」
「動いた状態での美しさを表現するデザインが大切です」

吉良:フィロソフィーだけでは概念として幅が広いので、それをもう少し明確にしたのがデザインビジョンです。
一目見てはっと驚き、これはすごい!と心を打つ「Awakening Passion」。デザインの一番大きな力かもしれません。これがあってはじめて、乗ってみたい、触ってみたいと思えるはずです。
次に、本質を見極めたものづくりをしよう、という「Lasting Integrity」。例えば、本質を捉えていない装飾的な色や形はすぐに飽きられるし、時間がたてば陳腐化してしまいます。だから長く愛用してもらうためにも、まず本質をデザインする。モデルチェンジを重ねても本質は変わらない、ものづくりの姿勢です。
「Elegance in Motion」は、動いている姿が美しい、ということ。よりしなやかでスムーズに、美しく見える存在であり続けなければなりません。
そして、未来に向かって方向を示す「Brilliant Beacon」。ただ主張ばかりするのではなく、人や街、その土地の風景に馴染み、将来を見つめたデザインを目指します。
これらのデザインビジョンが示すように、本当に必要なデザインは何なのか、本質を捉え、バイクをはじめとする動く乗り物のデザイン全てに、我々が考える精神を貫いてものづくりに生かしていきたいと考えています。

これまでヤマハ発動機が培ってきた技術や生産性に加えて、デザインの考え方や姿勢を強く発信していく。ヤマハ発動機の新生デザイン部門は、さらなる飛躍の可能性を見せ始めたところだ。

モーターサイクル、ボート、スノーモビルなど、エンジンを軸としたものづくりを行うヤマハ発動機
モーターサイクル、ボート、スノーモビルなど、エンジンを軸としたものづくりを行うヤマハ発動機
 静岡県磐田市にあるショールームには、ヤマハ発動機の原点YA-1など歴史を振り返る展示コーナーも
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1995年の創業以来、デジタルコンテンツのクリエイターの育成・供給、及びコンテンツ制作サービスをコアビジネスとして展開。現在では国内最大規模のクリエイター人材のコンサルティング企業として、企業とクリエイター、双方への支援を行っています。http://www.dsp.co.jp/