2008年の入社以来、主にスクーターのカラーリングを専門としてきた山崎伯晃氏は「時代の流れに応じてカラーリングへのニーズが変わり仕事内容がここ5年で大きく変わった」と感じている。入社当時は欧州や国内向けモデルを担当していたが、最近はASEAN市場のカラーリングが主となり、展開するモデル数も増えた。
- 山崎伯晃 やまさき のりあき
デザイン本部 主事 カラーリングデザイナー
2008年入社。入社以来あらゆる市場向けのスクーターのカラーを手がけ、現在は主にアセアン市場向けモデルのカラー&グラフィックを担当。インドネシアのヒットモデル「MIO」のカラー&グラフィックに携わる。
山崎:例えばインドネシアの朝の通勤通学時、道路はオートバイで埋め尽くされます。そのほとんどが二人乗りで、中高年の男性や女性をはじめ、女性同士やカップルも。高校の前に駐輪するバイクの数が日本とは比べ物にならないほど多いのに驚かされます。
つまり、日本と違って、バイクユーザーの幅が非常に広いんですね。まさに生活の一部です。だからこそ、それぞれの属性に対して最適なモデル展開を進めるのと同時にカラーリングが重要になります。1種のモデルを引き立てるために、2色展開をするのか7色まで増やすのか、そういった施策もカラーリングの範疇です。
オートバイへの注目度が高いため、毎年変化したタイプが欲しいという要望に対応しなければならない。まるで、ファストファッション業界が得意とするトレンド感だ。流行をいち早くキャッチして、ユーザーに提案するスピード感が大切になってくる。
実際のデザインワークではまず、ユーザーの声を聞く調査を行う。それを基にコンセプトを決め、各モデルについてデザイナーが最適なモチーフをグラフィック化し、カラーバリエーションと共に絞り込んでいく。各プロジェクトは数ヶ月単位で進行するため、スピーディに取り組んでいかなければならない。
山崎:それぞれのモデル特性をいかに魅力的に仕立てるか、それが軸になります。たとえば、オフロードコンセプトのモデルには、タフさ、アグレッシブさといった、モデルの魅力をより強調するグラフィックやカラーリングを施します。ヘッドライト周りのパーツが個性的な場合には、グラフィックやカラーリングでそのパーツ周辺を目立たせて、他をあっさりと仕上げることで、ユーザーの視線を最も際立たせたい部分に向けることもあります。
車両の特性を活かしつつ、カラーリングとグラフィックで強調し、ファッションの一部としてユーザーの期待に応える。世の中で今、どんなグラフィックやファッション性が好まれるのかを探りつつ、車両に落とし込んでいくのだ。
山崎:もっと言うと、同じスクーターでもタイとインドネシアでグラフィックを変えることもあります。求められているものが違うし、生活文化の背景が異なるからです。色を作る上でも、その国の気候や環境を意識します。たとえばイスラム教徒が9割近くを占めるインドネシアは、歴史的な文化価値を重要視することから、深みのある色、気候の影響もあって高彩度の色合いも好まれます。ベトナムだと、もともとフランス領だったことから建築もフランス的なものが多く、フランス文化が影響していて、インドネシアとは違っていますね。インドネシアでは敬遠されるソリッド色が受け入れられることも多いです。ASEANと広く捉えるのではなく、各国ごとの文化的個性を尊重するのも大切な感性だと実感しています。
現在のカラーリングは日本発信。だが、各国の拠点または現地でのカラー展開も少しずつ始まっている。
http://global.yamaha-motor.com/jp/yamahastyle/design/