【さいきん、なに買った?】山﨑健太郎さんが買った、原始的な好奇心や欲求を感じる本

【さいきん、なに買った?】山﨑健太郎さんが買った、原始的な好奇心や欲求を感じる本

こんなにモノが溢れる時代に、それでも私たちが「モノを買う」のはなぜだろう?物欲…?はたまた必要に駆られて…?「買う」という行為から、その人らしさや考え方が見えてくるような気がします。

本企画はいわゆる「私の定番アイテム」紹介ではありません。さまざまな職種の方に「さいきん、買ったもの」をうかがい、改めて「買う」ことについて考える…そんな大げさな話ではなく、審美眼のある方々に「買う」にまつわるお話をうかがう、ちょっと軽めの読み物です。

今回は、個人住宅から福祉施設、医療施設、商業施設、ホテルなど、国内外を問わず幅広い案件に取り組む、山﨑健太郎デザインワークショップの山﨑健太郎さん。仕事以外でも海外の建築を見に行くことが多いという山﨑さんが、最近買ってよかったものとは?

Studio Olafur Eliasson:The Kitchen

この本は、現代アーティストのオラファー・エリアソンのスタジオから生まれる料理の数々をまとめた本です。彼のスタジオには共同キッチンがあって、毎日スタッフ全員で昼食を共にしているそうなんです。料理の写真はもちろんですが、実際のレシピが載っていたり、スタジオの様子を垣間見れる1冊になっています。

Studio Olafur Eliasson:The Kitchen

Studio Olafur Eliasson:The Kitchen

先日北欧に行った際に、エリアソンの出身であるデンマークに立ち寄りました。コペンハーゲンに「ノーマ」という有名なレストランがあるんですが、そのノーマ出身のシェフがやっているレストランで食事をしたときに、この本に載っているような料理が出てきたんです。料理が出てきた時に、「食べたい」という気持ちよりは好奇心のほうが勝つ感じがあったんですよね。

そういう食に対しての興味は当然自分の思想の一部になるわけで、エリアソンもきっとそう考えているからこそ、自分のスタジオでシェフを雇って食事を出しているんだと思うんです。だからこの本は、エリアソンのファンに向けても面白い内容ですが、クリエイティブな仕事をするとか、みんなでいい食事をするとか原始的な好奇心や欲求が満たされる感じがするんです。

Studio Olafur Eliasson:The Kitchen

ただ、残念ながら、僕の事務所でみんなでごはんを食べるというのはなかなか実践できてないですね…(苦笑)。この本に寄稿している、食の活動家のアリス・ウォーターズがやっていることにもものすごく興味があるし、いろんなプロジェクトを実践したいんですよ。畑をつくり、建築をつくり、キッチンをつくり、そこでどういう風にみんなが楽しく過ごせるかということは大事なことなので、今後チャレンジしたいと思っています。

買い物について

僕、長く使うものを買う傾向があるので、物欲があまりないんですよね。ただ唯一、本は日常的に買っていて、仕事に必要な時はもちろん、良いものに出会った時に衝動的に買うこともあります。そういった衝動は大事にしたいと思っていますね。

あと買うものといえば「緑」ですね。買い足すとその分世話をしないといけませんが、霧吹きで水をやったり移し替えたりと甲斐甲斐しくやっています(笑)。水やりを怠るといい仕事ができなくなりそうだな…とかそういう気持ちもありますが、小さい芽がでているとうれしくなりますね。

山﨑健太郎デザインワークショップ オフィス

オフィス内にある観葉植物の数々。大きなものから小さいものまで、山﨑さんがお世話を担当しています。

山﨑健太郎

山﨑健太郎

建築家/山﨑健太郎デザインワークショップ代表取締役。現在、工学院大学、東京理科大学、早稲田大学非常勤講師。明治大学、法政大学兼任講師。沖縄の地域住民と一緒に琉球石灰岩を積んで建設した「糸満漁民食堂」で日本建築学会作品選集新人賞受賞。斜面を活かした階段状の「はくすい保育園」でドイツのiF DESIGN AWARD金賞受賞。昨年は視覚障害者の支援施設「ビジョンパーク」で世界三大アワードの一つInternational Design Excellence Awards銅賞受賞など、国内外多数のアワードを受賞。刺激的な建築であることよりも、子供から高齢者までさまざまな人々に受け入られ、人生の一部となっていくような建築を目指している。