みんなで「わたしの25」- we+(安藤北斗・林登志也)

Photo: Masayuki Hayashi Photo: Masayuki Hayashi

デザイン情報サイト「JDN」は、インターネット黎明期の1997年にスタートして以来、四半世紀にわたりデザインに関する情報を発信してきました。読者のみなさま、これまで記事にご登場いただいたクリエイターのみなさまのおかげで2022年10月に創刊25周年を迎えます。そこで、これまでにご登場いただいてきたクリエイターや企業のみなさまから、ご自身や「デザイン」の25年を振り返るコラムなど、メッセージをお寄せいただく特集「みんなで『わたしの“25”』」を公開します。

今回は、リサーチと実験に立脚した手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ・we+の安藤北斗さんと林登志也さん。ミラノサローネやデザインマイアミなど海外でも活躍の場を広げ、近年では廃棄された建材・素材を家具やオブジェに生まれ変わらせるプロジェクトに取り組むwe+のお二人から、“25”にまつわるエピソードとメッセージをいただきました!

■安藤北斗さん

25周年誠におめでとうございます。学生時代、まだ世の中にデザイン系のWebメディアが少なかったころから、日々欠かさずJDNをチェックし続けてきただけに、とても感慨深いです。特に桐山さんのコラム「注目のデザイナー」は、毎回毎回わくわくしながら拝読していました。いつかこのコラムに取り上げられるデザイナーになりたい、というモチベーションにもなりましたし、桐山さんのテキストを穴が開くほど読んでいましたので、私にとってはある意味デザインの教科書ともいうべき内容でした。

とりわけ、大学の同期でもある小林幹也くんの回に桐山さんが書かれていた「30歳前のデザイナーはデザインの振れ幅が大きいのでスタイルが固まるまで取り上げないことにしている」という一文は非常に印象的で、デザイナーとして個性や作風を確立することの意味を強く考えるきっかけになりました。2017年に「注目のデザイナー」にお声がけいただいたときは、舞い上がるくらい嬉しかったこと、昨日のように覚えています。実はそれくらい思い入れのあるコラムだったので、はじめて桐山さんにお会いしたときは、緊張でふるえながらお話ししていました(笑)。いまでも連絡をいただくたびに背筋が伸びる思いです。

we+が登場した、第219回「注目のデザイナー」

■林登志也さん

JDN25周年、おめでとうございます。私が25歳だったころを振り返ると、何者でもない自分に日々悶々としていたことが思い出されます。JDNの姉妹サイト「登竜門」を見ては、何かピンと来るコンペがないかチェックしていました。とにかく何かしなければ!という焦りが強く、黒崎輝男さんが主宰されていたスクーリング・パッド(講師も学ぶ人も変わった人が多い学校のようなところ)の門を叩いたのもその頃でした。

使用済の発泡スチロールを使い、人間と素材の関係の再構築を試みる家具のシリーズ「Refoam」

そこでの出会いがきっかけとなりwe+は生まれましたし、we+のものづくりの原点は、あの頃の活動にあると言えるかもしれません。週末に八王子の染工場に行って実験を繰り返したり、早朝からミーティングをしたり、とにかく何か新しい景色を見つけようと必死でした。いまではスタッフも仕事も増え、できることは広がり、取り巻く環境も大きく変わりました。しかし、やっていることの芯は25歳の頃から大して変わっていないような気がしますし、これからも、無垢な気持ちを大切に、デザインの可能性を探究したいと思います。

we+の最新情報

ファンファーレ 扇の舞 ― NUNOとwe+によるテキスタイルインスタレーション
山形県の鶴岡アートフォーラムにて、旧庄内藩主としてこの地の発展を導いた酒井家の庄内入部400年を記念し、鶴岡のシルク産業とゆかりの深いテキスタイルデザイナー・須藤玲子率いるNUNOと、コンテンポラリーデザインスタジオwe+によるテキスタイルインスタレーション《ファンファーレ 扇の舞》を、10月21日から11月6日まで公開。

ファンファーレ 扇の舞

ファンファーレ 扇の舞(Photo:Takanori Yanagida)

2017年にワシントンDCのジョン・F・ケネディ・センターで最初に発表されて以来、国内外で公開されてきたNUNOの代表作のひとつである《扇の舞》。同展では、林登志也と鶴岡市出身の安藤北斗によるwe+をむかえ、扇本来の「あおぐ」という行為が生み出す風や空気の動きに注目する。庄内平野を背景に建物の内と外をつなぐ今回のインスタレーションは、この場所でしか味わうことのできないサイトスペシフィックな鑑賞体験を生み出す。また今回メインで展示される扇サイズは直径2mにわたり、国内過去最大のスケールとなる。

「ファンファーレ 扇の舞 ― NUNOとwe+によるテキスタイルインスタレーション」プレスリリース
https://www.asahi.com/and/pressrelease/422963568/

we+(安藤北斗・林登志也)

we+(安藤北斗・林登志也)

リサーチと実験に立脚した手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。林登志也と安藤北斗により2013年に設立。

利便性や合理性が追い求められる現代社会において、見落されがちな多様な価値観を大切にしながら、私たちを取り巻く自然や社会環境と親密な共存関係を築くオルタナティブなデザインの可能性を探究しています。デザイナー、エンジニア、リサーチャー、ライターといった多彩なバックグラウンドやスキルを持つメンバーが集い、日々の研究から生まれた自主プロジェクトを国内外で発表。そこから得られた知見を生かし、R&Dやインスタレーション等のコミッションワーク、ブランディング、プロダクト開発、空間デザイン、グラフィックデザインなど、さまざまな企業や組織のプロジェクトを手がけています。

近年は、自然とともに暮らしてきた歴史を学び、自然現象の移ろいやゆらぎを生かすことで、自然と人工が融合した新たなもののあり方を模索する「Nature Study」や、都市が生み出す廃材を土着の素材と見立て、複雑になりすぎたものづくりの原点を考察する「Urban Origin」といったリサーチプロジェクトにも力を入れています。

www.weplus.jp