編集部の「そういえば、」-秋葉原での13日間の撮影記録。加藤雄太さんの個展『13』

編集部の「そういえば、」-秋葉原での13日間の撮影記録。加藤雄太さんの個展『13』

イベントに出かけたり、ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ・企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしています。なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がったり、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

そんな、日々の取材や編集部の雑談から生まれたネタをお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

そういえば、JDN編集部が大変お世話になっているフォトグラファー・加藤雄太さんの個展『13』に行ってきました。

個展『13』のエントランス写真

秋葉原の「NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO」で2024年4月13日から4月27日まで開催された『13』

加藤さんは少し変わった経歴を持つカメラマンです。18歳の頃から路上でインタビュー活動をはじめ、街ゆく人の言葉を集めてきました。活動する中で、話を聞いた人がどんな人物だったかを記録したいという思いが芽生え、カメラを持つようになったといいます。

階段の壁に作品が数点展示されている様子

会場はホテルの2階ロビーとそこへ続く階段。階段では5点のポートレートが出迎える

個展の会場には、一見すると年齢や国籍などがばらばらなポートレートが展示されていました。共通するのは、これらの作品すべてが、会場であるこのホテルに13日間滞在しながら撮影されたものだということ。

滞在を開始した当初は、何を撮るか決めていなかったそうです。そんな中、道で一人の男性に「あなたと私の周波数が一致しているのでいま話しかけています」と声をかけられます。この出会いをきっかけに不思議な縁が生まれ、路上で人に声をかけたり、ときには加藤さんが声をかけられたりしながら撮影が進みました。

ホテルの受付前、作品が展示されている様子

13日間で17カ国45名を撮影

ポートレートの隣には、撮影の前後でその人におこなったインタビューの記録も展示されています。内容は、いま考えていることやもがいていることなどをはじめ、人生の一端を覗くような幅広いもの。どのエピソードもユニークで、惹きつけられるものばかりです。

また、撮影した45人のうち10人については、加藤さんのほうが声をかけられています。なかには神秘的で、巡り合わせのようなものを感じる出会いも少なくなかったようです。一体、秋葉原の街がそうさせているのか、加藤さん自身がそうさせているのか……。

秋葉原の街については、JDNの事務所がある神田からの道中、神田川を越えたあたりで街並みが一変したことを思い出しました。スーツ姿のビジネスマンが行き交う神田と異なり、賑やかな繁華街の大通りからひとつ道を入ると、メイド服や派手な衣装を着た女性が両側に立ち、呼び込みをしている雑然とした景色が広がります。同展からの帰路では、どこかのお店の女性スタッフに声をかけられ、立ち話に夢中になる男性の姿も。

ただ素通りするような道とは違い、人々の視線があちこちに飛び交い、意識が散漫になりがちで、何かに引っ掛かりやすい。そんな、人を立ち止まらせるような街だからこその出会いの数々だったのではないかとも感じました。

会場で先行販売されていた写真集『13』には、今回展示されなかった人々のポートレートとインタビュー内容も含まれています。限定500部で販売されているので、気になった方はぜひチェックを!

【加藤さん撮影のJDN記事はこちら】

「変わりゆく都市の風景の中で伝統を紡ぐ。香港のいまに触れるイベント『DesignInspire In Motion』」
https://www.japandesign.ne.jp/report/designinspire-in-motion-2023/

「スペースデザインを軸にジャンルレスに活動する桑沢の卒業生。大松俊紀×佐藤慶一×大嶋励」
https://www.japandesign.ne.jp/interview/kuwasawa-yakan-space/

「デザインの力でよりよい未来へ“いざなう”―『Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2023』」
https://www.japandesign.ne.jp/report/design-touch-2023/

(萩原あとり)