SCOT

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今まで生きてきた中でも猛烈に忙しい日が続く毎日。そんな中で、とんでもなく刺激的な機会を持つことができた。

それは、早稲田小劇場で知られる世界的な演出家、鈴木忠志氏主宰の「SCOT(Suzuki Company of Toga)」だ。鈴木氏が1976年以降活動の拠点を置く富山県利賀村は、人口約500人足らずの過疎地だ。この場所に建築家の磯崎新氏の設計で野外劇場がつくられたのが1982年。やっと憧れの聖地に足を踏み込むことができた。国際北陸工芸アワードの第二次審査会と富山県美術館の全面開館式典で来県していただいた前文化庁長官の青柳正規氏とご一緒に。なんとラッキーなことか。

SCOTは、2008年から利賀村で活動を展開している。その4つの前提が興味深い。

(1)多国籍のメンバーによる国際劇団として活動していること
(2)日本では例外ともいえる演劇活動のためのあらゆる施設を擁していること。また国際交流ではなく、国際化した地域を成立させていること
(3)国際化時代における芸術文化活動の未来を先取りした多言語の舞台をも生み出し、世界の芸術文化に携わる人たちに刺激を与えていること
(4)利賀村での公演は観劇のための入場料というものはなく、SCOTの利賀村での活動自体を支援してもらうという形態をとっていること

挨拶をする、主宰の鈴木忠志氏

挨拶をする、主宰の鈴木忠志氏

国内外から多くの人が観劇に訪れてい

国内外から多くの人が観劇に訪れていた

8月26日の夕方から行われた2幕の公演を観劇したが、文化の深さと自然と国内外から訪れたオーディエンスとの一体感が最高で感動した。花火も何発も夜空に上がり、舞台演出を盛り上げた。

鈴木さんは舞台挨拶で「あと何年やれるのか…」と弱気な発言をされたが、全身全霊を傾けた舞台を見るとその素直な気持ちは理解できなくもない。私も「デザインの力」を信じてあらゆることを仕掛けてきた一人だが、鈴木哲学には遠くおよばない。もう一段ギアを前に入れなくては、エネルギーをいただいた刺激的な夜だった。

現在、下記の仕事に追われています。次号で詳細を記したいと思います。

・11月16日からの国際北陸工芸サミット、展覧会、巡回展
・11月16日からの富山県美術館の第2回企画デザイン展
・11月中旬に開所する富山県総合デザインセンターのアネックスとなるイノベーションハブ(仮)の整備
・11月デザインウェーブイン富山2017の開催
・2018年4月のミラノデザインウィークの準備他

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/