これからの中国デザイン

これからの中国デザイン

1998年、初めて中国のデザイン事情を知るために、上海、北京、瀋陽を訪れた。そして数ヶ月後、再び「環日本海のデザイン展」開催準備に向けて再訪した。当時の中国は、日本の昭和30年代を彷彿とさせる様相だった。あれから約20年、この間の経済成長でまさかと目を疑わんばかりにあらゆるものが一変した。その後も何度か訪れる機会はあったが、最近はデザインセンターの設立について相談を受けることが多くなった。

そして先週、蘇州、上海に出かけた。まずは蘇州市の工芸施設の見学、石、銅器、木工などの施設や紫禁城の床を敷き詰めたスレート(金磚)の博物館、さらには高度な刺繍の資料館などを見学。現地の行政関係者、工芸作家、デザイナーと交流し、翌日朝からデザインセンターを設立に向けて、長時間の打ち合わせを行った。

銅器、木工、石材の伝統工芸が収められた資料館

銅器、木工、石材の伝統工芸が収められた資料館

富山県総合デザインセンターと同様に二軸が必要なことをお話しさせていただいた。ひとつは、これまでの伝統工芸産業をどう保持していくか、もうひとつは、成長著しい工業製品にどうデザインを取り入れていくかだ。話は簡単ではないが、10年先、20年先の中国を考えると本格的に取り掛かるタイミングだと言えよう。年内に2回の渡航を求められたが、そうでもなく忙しい身ゆえ、どのようにこのプロジェクトと対峙できるのかしばし整理が必要だ。

蘇州市の担当者や関連するメンバー達と、デザインセンター設立構想を議論した

蘇州市の担当者や関連するメンバー達と、デザインセンター設立構想を議論した

さらに上海では、IoTのベンチャー企業を訪問した。この会社の開発したシステムは素晴らしく、現代生活のライフスタイルにマッチしている。スマホに委ねる社会では、あらゆる道具が一元化されていく。帰国後早速とある会社に紹介した。場合によったらJV(共同企業体)が成立するかもしれない。

20年前の中国、そして今の中国、そして20年後の中国を想像してみると新たなデザイン交流のスタートのような気がする。

また、最後にお知らせをひとつ。前回の記事でもお伝えした「富山デザインコンペティション2017」は8月1日締め切りです。ふるってご参加ください。
https://dw.toyamadesign.jp

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/