第11回:紙活字の日めくりカレンダー

第11回:紙活字の日めくりカレンダー

気づけば2017年も残りわずか。来年の年賀状やカレンダーの準備をしている方々も多いかと思います。この連載の第6回で年賀状、第2回でカレンダーを紹介しているので、参考にしてみてくださいね。

【第2回】特種東海製紙の卓上カレンダー
【第6回】杉山ユキさんの干支の年賀状

さて今回は、この時期にぴったりの日めくりカレンダーを紹介します。連載第3回で掲載した、紙でできた活字「紙活字」の日めくりカレンダーです。

【第3回】Paper Parade Print Kitの「紙活字®(Papertype®)」

1月1日から12月31日まで365日の日付を紙活字で印刷し、1日ずつ重ねて製本。従来の日めくりのように1枚ずつピリピリと切り離していくのではなく、その日のページを開いて使います。早速、Paper Parade Printingのお2人に実物を見せていただきました。

表紙部分は活版印刷と空押し、中面の数字は紙活字で印刷した原画をオンデマンド印刷している。

表紙部分は活版印刷と空押し、中面の数字は紙活字で印刷した原画をオンデマンド印刷している。

日めくりの大きさは、約8cm角、奥行き5cmで、自立するくらいの厚みがあります。ページが180度フラットに開くので、机の上に平に広げて置いたり、写真のように円形にしたり、いろいろな飾り方が楽しめる製品です。

一見、普通につくられた日めくりのように見えますが、印刷や製本の過程ではさまざまな試行錯誤があったそう。限られた予算の中で、使用する紙、印刷、製本方法をどうするか、制作の初期段階から篠原紙工に相談。予算の中で紙代が占める割合が大きいため、紙の価格と印刷の出方を比較検討し、カレンダー本文は上質紙、表紙と裏表紙には「スノーブル-FS」を使用。

各日の数字には、かすれなどの微妙なテクスチャーがつけられているので、印刷できれいに再現するのは難しいのですが、何種類か異なる線数や解像度で校正刷りを出して検証しました。

紙活字で印刷された原画が並ぶ様子。以下の写真はすべてPaper Parade Printingより提供

紙活字で印刷された原画が並ぶ様子。以下の写真はすべてPaper Parade Printingより提供

上の写真の校正刷りは、コンビニのコピー機で出力したもの。コピー機で簡易校正を出して、データをチェックしたり、印刷設定のおおよそのあたりをつけたりした。コンビニのコピー機を簡易校正機として使う裏技!

上の写真の校正刷りは、コンビニのコピー機で出力したもの。コピー機で簡易校正を出して、データをチェックしたり、印刷設定のおおよそのあたりをつけたりした。コンビニのコピー機を簡易校正機として使う裏技!

また、今回の日めくりは製造個数が少ないため、大量印刷向けのオフセット印刷ではなく、小ロットに強いオンデマンド印刷を使用。オフセット印刷は一度に同じものが大量に印刷されるので、1月1日から日付順に重ねていくのが大変なのですが(「丁合(ちょうあい)」という作業)、オンデマンド印刷機にはコピー機と同じ自動ソート機能があるので、日付順に重ねる作業を自動化できたのだそう。オンデマンド印刷機の自動ソート機能は、日めくりやポストカードのボックスセットなど、丁合が大変なアイテムに活用できそうです。

日めくりの製本を試作しているところ。360度きれいに開くように試行錯誤が続いた。

日めくりの製本を試作しているところ。360度きれいに開くように試行錯誤が続いた。

今回の日めくりカレンダーでは、大量ロットでつくる可能性があることも考慮し、製本には機械を使用。コストや作業効率を考え、流通にも対応できるようにしたとのこと。360度ぐるっと開くように、本の背(綴じる側)にあたる側面に接着剤を塗って固めています。接着剤の種類、固さ、量、付け方などを篠原紙工で検討し、コストとのバランスを見ながら、仕様を決定。こうして、使い勝手がよく、見た目も美しいカレンダーができあがりました。

日めくりは、ネットショップの「BASE」で販売中とのこと。オブジェとしても美しいカレンダーです。
https://paperparade.thebase.in/items/9005208

Paper Parade Printing
http://paperparade.tokyo

篠原紙工
http://www.s-shiko.co.jp/

宮後優子(グラフィック社)

宮後優子(編集者/Book&Designディレクター)

宮後優子(みやご・ゆうこ)
編集者/Book&Designディレクター。東京藝術大学で美学美術史を学んだ後、出版社の編集者に。デザイン専門誌『デザインの現場』編集長を経て、文字デザイン専門誌『Typography』を創刊。デザイン書編集者として20年近く活動。デザイン関係の雑誌・書籍・ウェブサイトの編集のほか、イベントやワークショップなどの企画・運営を行う。
http://typography-mag.jp
http://book-design.jp