第12回:美篶堂のさくら咲くノート

第12回:美篶堂のさくら咲くノート

本連載も開始からちょうど1年になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新しい年を迎え、時節柄、カレンダーや年賀状をご紹介したいところですが、いずれも過去に掲載しているので、別のアイテムを選んでみました。手製本で知られる美篶堂(みすずどう)が製作しているオリジナルノートです。

写真提供:美篶堂(以下同様)

写真提供:美篶堂(以下同様)

1983年創業の美篶堂は、作家やデザイナーの特装本など、高度な製本技術を必要とする仕事で定評のある製本会社。機械では難しい繊細な作業を手製本で行っています。1999年頃から自社でオリジナルのノートを製作。職人の手で一冊ずつ丁寧に仕上げられるこのノートは、ページの開きがよく、とても丈夫。長く使い続ける愛用者も多く、ロングセラーとなりました。当初はA5サイズの「みすずノート」のみでしたが、現在ではさまざまなサイズや種類がそろっています。

その中でご紹介したいのが、「さくら咲くノート」のシリーズです。写真の通り、中ページが美しいさくら色のグラデーションになっています。このグラデーションは、「色上質 中厚口」の4色を交互に重ねたもの。順番にただ重ねただけでなく、隣り合う色の紙の枚数を少しずつ減らしながら重ね、なめらかなグラデーションをつくっています(紙を重ねる作業を「丁合い」といい、こちらも手作業で行われています)。ご覧ください、この見事なグラデーションを。

A6*さくら咲くソフトカバーノート

A6*さくら咲くソフトカバーノート

「A6*さくら咲くソフトカバーノート」

A6*さくら咲くソフトカバーノート

こちらのノートは文庫サイズのソフトカバーですが、B6判の「丸背上製 さくら咲くノート」もあります(現在、品切れ中。再入荷予定あり)。中ページの紙は、文庫サイズと同じ色上質です。色上質が選ばれたのは、さくら色のグラデーションになる淡い色合いが豊富で、紙の厚みが何パターンかあり、ペンでの書き味もよいためだとか。

B6判 丸背上製 さくら咲くノート

B6判 丸背上製 さくら咲くノート

「B6判 丸背上製 さくら咲くノート」

B6判 丸背上製 さくら咲くノート

そのほか、ブロックメモにもさくら色のグラデーションを施した製品があります。ブロックメモでは、紙を重ねた時の厚みを出すために「タント」という紙を使用。「タント」(イタリア語で「たくさん」という意味)という名前の通り、カラーバリエーションが多く、使いやすい紙です。

「ブロックメモキューブ*さくら」

ブロックメモキューブ*さくら

美篶堂の上島明子さんによれば、美篶堂の工場がある長野県伊那市美篶の隣町、高遠町が桜の名所で知られることから、さくら色のシリーズをつくりたいと考えたそう。かつて、美篶堂ショップが湯島聖堂の前にあり、受験生が帰りに立ち寄ることもあったため、「さくら咲く」願いがかないますようにと、このノートをつくったのだとか。

受験や卒業・入学の時期を迎えるにあたり、今回は「さくら咲くノート」をご紹介しました。これらの製品は、美篶堂ショップ(現在は神保町で営業)のほか、以下のオンラインショップで購入可能です。

美篶堂
http://www.misuzudo-b.com/index.html

美篶堂オンラインショップ
http://misuzudo.shop13.makeshop.jp/

宮後優子(グラフィック社)

宮後優子(編集者/Book&Designディレクター)

宮後優子(みやご・ゆうこ)
編集者/Book&Designディレクター。東京藝術大学で美学美術史を学んだ後、出版社の編集者に。デザイン専門誌『デザインの現場』編集長を経て、文字デザイン専門誌『Typography』を創刊。デザイン書編集者として20年近く活動。デザイン関係の雑誌・書籍・ウェブサイトの編集のほか、イベントやワークショップなどの企画・運営を行う。
http://typography-mag.jp
http://book-design.jp