カプセルホテルというと少し無機質でクールなビジュアルを想像しますが、京都・西陣に2018年にオープンした「ホステル翆 京都粋伝庵離れ」は、木の質感があたたかい、ちょっとした秘密基地のようなわくわく感のある宿泊施設です。
設計を担当した、株式会社アルファヴィル一級建築士事務所の竹口健太郎さんと山本麻子さんに、制作背景やコンセプトなどについてお聞きしました。
■制作背景
「ホステル翆 京都粋伝庵離れ」は、京都・西陣にあるゲストハウスです。クライアントは敷地の隣で伝統文化サロン「京都・粋伝庵」の経営をする傍ら、ダイビングのインストラクターなども行っており、一般の旅行客を受け入れると同時に、遠方から訪れるお客さんや文化サロンに訪れるゲストのための場所として設計しました。
趣味を共にする女性客やグループで訪れる人が多いことから、2階全体をひとつの集落のように捉え、カプセルタイプの客室が並ぶものにしたいと提案しました。
■コンセプト
従来のカプセルホテルのようにベッドが一列に並び、プライベート空間とパブリック空間がはっきりと分かれた客室ではなく、いくつかのブースを入口前の広場を共有するように組み合わせてキャビンを形成。さらに、キャビンとキャビンの間を路地のようなプライベート性の高い通路とすることで、個人としてここに集まりながら、広場や路地を介することで、時間帯に応じて二人連れ、三人連れの場所ができるような宿泊空間を考えました。
■課題となった点、手法、特徴
1979年のカプセル・イン大阪で、はじめて黒川記章氏がカプセルスペースを実現しました。空間効率による経済性が注目されて普及しましたが、片廊下にならぶ閉塞感があります。そこで私たちは、カプセルの間の空間に活路を見い出しました。
人は本来、特に就寝のときは、守られた空間で心地よさを感じる性質があり、実際に宿泊した人たちからの「よく眠れた」という感想はそれを示しているかのようです。他者と距離を近くしながらも、カーテンや間仕切りで心理状態に合わせ、自分の居場所をいわば街なかで調整できます。このカプセルの組み合わせ方によって、空間効率と新たな空間の価値観の重なる立体性を提案しています。
京都を中心に、常に空間の新しい可能性を考えながら活動している建築事務所。スケールの違いによらず3次元的に自由な発想、そして光に留意したシンプルでありながら陰影と奥行きのある空間を心がけ、国内外へ提案している。
https://a-ville.net/
所在地 | 京都府京都市上京区真倉町730番地 |
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設計 | 株式会社アルファヴィル一級建築士事務所 |
構造 | 木造 |
敷地面積 | 144.61㎡ |
延床面積 | 144.54㎡ |
竣工日(開業日) | 2018年6月1日 |
撮影 | 杉野圭 |