「デザインギャラリー?美術館の洗面室かな?」と思うこの空間は、なんと、京都府南丹市にある高等学校の女子トイレです。「TEAROOM」と名付けられた空間は、建築家の瀧尻賢さんと、アーティストの寺本愛さんの共同プロジェクトとして完成しました。
設計を手がけた瀧尻賢さんに、制作背景やコンセプトなどについてうかがいました。
■制作背景
2018年に手がけた同校3階の女子トイレが評価され、4階女子トイレの空間デザインも任せられたことがきっかけで始まったプロジェクトです。学校側からの要望は、イメージカラーである「黄色」を取り入れることのみでした。

寺本愛さんによるスケッチ
自由度の高い環境ということもあり、新しい空間の在り方を提案するべく、アーティストの寺本愛さんに声を掛け、今回の共同プロジェクトが実現しました。

制作中の寺本愛さん
■コンセプト
空間のテーマは「茶室」。満月を思わせる丸鏡や掛け軸を模した姿見、和室を彷彿とさせる竿縁天井などが抽象的にプロットされ、屏風を連想させる壁面には「松」や「手」、「タオル」の絵が控えめに描かれています。

■手法、特徴
プロジェクトの進め方は、瀧尻が全体の骨格部分を構成し、寺本さんがそれをもとに校内リサーチの際に記憶に残ったフォルムや質感、イメージを加えるというものでした。アーティストの描くラフスケッチを建築家が図面・CGに落とし込むといったやりとりを何往復も重ねていくことで、二人の思想はひとつひとつのアイデアがどちらによる発案かわからないほどに混ざり合っていきました。
茶道において「茶室」は人をもてなし、風景を愛でる空間です。当プロジェクトのトイレも限られた空間ではありますが、茶室と同じくその使用目的以上に拡張性を持つ空間であり、現代的に茶室を捉えるという意味も込め「TEAROOM」と名付けています。

施主 | 京都聖カタリナ高等学校 |
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空間設計 | 瀧尻賢/Atelier Satoshi Takijiri Architects |
空間アートディレクション | 寺本愛 |
施工 | 有限会社符川工業、アサヒ工芸 |
所在地 | 京都府南丹市園部町 |
用途 | 女子トイレ4階エリア |
面積 | 20m2 |
竣工 | 2019年12月24日 |
写真 | 西岡潔 |