2025年大阪・関西万博の開幕に合わせ、大阪旅行の計画を立てている方も多いのではないでしょうか?
「せっかく大阪まで行くなら市内も巡りたい!」とお思いの読者のみなさまに向けて、JDN編集部が建築も見どころのカフェをご紹介します。ぜひ旅の参考にしてみてください。
aoma coffee
最初に紹介するのは、大阪メトロ本町駅から歩いてすぐの場所にある「aoma coffee」です。お店が入るWRAP/英守大阪ビルは一見すると工事中のように見えますが、実は張り巡らされたパイプの足場もファサードの一部というユニークな建物。設計・施工は大阪を拠点にするデザイン・施工会社のロウエ(設計担当:丹治徹也さん、施工担当:伴義文さん)です。

設計を担当した丹治さんにコンセプトをお聞きすると、「このビルの家主は風呂敷商を営んでいたそうです。その歴史を受け継ぎ、『wrap=包む』ということをデザインコンセプトに設計しました。劣化調査を隈なくおこなったところ、外壁のタイルに剥落の恐れがあったので、昔の名残を残しながら建物を丸ごとコーティング。その上で、意匠として新たなファサードを再構築しました」とコメント。
また、外壁タイルについて、「コーティングをするにあたり、通常はさらに“色をつける”のですが、今回は、ファイバーメッシュごと見えるようにしています。これにより、より包んだように見えるようになりました」といいます。

店内はこぢんまりとしていて、ベンチ1つとスツールが数脚ある
aoma coffeeが入るのは1階部分。店内には焙煎機を備え、中に入ると香ばしい豆の香りに包まれます。店主の青野さんが買い付けてきたコーヒー豆を、その豆の個性を活かしながら焙煎・提供する同店。ふらっと立ち寄れる気軽さがありながら、こだわりが詰まった美味しいコーヒーをいただくことができるスポットです。
あみじま茶屋
続いてご紹介するのは、藤田美術館に併設されている「あみじま茶屋」です。場所は大阪城北詰駅から徒歩すぐ。
藤田美術館は、明治時代に活躍した実業家の藤田傳三郎と、その息子の平太郎、徳次郎によって築かれた美術品のコレクションを公開しています。明治から大正時代に建てられた藤田家邸宅の蔵を改装した建物は、大成建設により建て替えられ、2022年にリニューアルオープンしました。展示室はかつての「蔵」の構造を残しつつ、その手前には現代的な土間と茶屋、広間を設けています。
建物のコンセプトについて、設計を担当された大成建設の宮本育美さんに話をお聞きすると、「60年あまり親しまれてきた“蔵の美術館”の建て替えとして、美術品を次世代へとつなげる美術館づくりが求められました。展示室・収蔵庫が納められた「蔵」を取り巻く空間では、能や学芸員による講話などさまざまな文化・情報が発信され、お茶を身近に感じていただくお団子茶店や庭園の茶室などもあり、さまざまな『知を得る』活動が展開されます」
「また、蔵の扉や木材、石などさまざまな素材を保存・再利用することで唯一無二の存在感を放ち、新しい建物のなかにどこかなつかしい、旧館の面影を残した美術館としました」とのこと。

広間からすぐに庭園や藤田邸跡公園にアクセス可能。いずれも一般に開放されている
畳を体感することができる広間は、人々をおおらかに迎え入れてくれます。この広間のすぐ横の扉からも出入りできる藤田邸跡公園との間には、以前は塀が設置されていましたが、美術館の建て替えを機に撤去されました。かつてこの周辺一帯が藤田家の大邸宅であった土地の記憶を呼び戻すべく、境界をなくすことで歴史の継承の在り方を追求したといいます。

ガラス張りの広々とした土間は、建物の内でありながら外との隔たりを感じない、不思議な解放感にあふれる
「あみじま茶屋は360°オープンなカウンターで明るく開放的に設え、流派に関係なく本格的なお茶を楽しむことができます」と宮本さん。
そんなあみじま茶屋では、煎茶・番茶・抹茶から選べるだんごセット(しょうゆ・あん)をいただくことができます。編集部が訪れたのは平日の16時ごろでしたが、この日はすでにだんごセットは完売。人気のため早い時間帯の訪問がおすすめです。

交差点から段差なく出入り可能な藤田美術館。外に向かって高くなる大きな庇が人々を迎え入れる
営業時間:10:00~18:00 ※だんごが売り切れ次第終了
定休日:12月29日~1月5日休業
住所:大阪市都島区網島町10-32 藤田美術館内
https://www.facebook.com/amijima.chaya/
ブルーボトルコーヒー 梅田茶屋町カフェ
最後に紹介するのは、茶屋町エリアに位置する「ブルーボトルコーヒー 梅田茶屋町カフェ」。建築・空間デザインはインテリアデザインオフィスのI INが担当しました。
ブルーボトルコーヒーのイメージカラーが印象的な店内は、茶屋町の喧騒から一気にブランドの世界観へと引き込みます。

1階に設置されたガラスの天板のテーブル
I INは同店舗のデザインについて、「カフェの中に設置した家具やボトルマークにさまざまな素材のブルーを使っています。テーブルなどに使用しているブルーは奥行きがあり、深い色に見入ってしまうようなガラスの素材になっています」と語ります。
また、ブルーボトルコーヒーの「より広く多くの人にコーヒーを楽しんでもらいたい」という姿勢が「透明感」というキーワードにつながり、全体としてブランドのカラーである「ブルー」と「透明感」を表現するデザインになったといいます。

2階にはパノラマティクス監修の映像と音楽が流れる、ブルーの光あふれる空間が現れる

大阪拠点のガラスアーティストによって製作された、コーヒー色の球体ガラスのシャンデリア
大阪梅田駅から徒歩圏内の同店はアクセス良好かつ、席数が49席と利用のしやすさも魅力です。また、言わずと知れたサードウェーブコーヒーの代表格であるブルーボトルコーヒー。店内ではバリスタが一杯ずつ抽出するこだわりのコーヒーをいただくことができます。
営業時間:8:00~21:00
定休日:無休
住所:大阪市北区茶屋町15-22アーバンテラス茶屋町A棟
https://store.bluebottlecoffee.jp/pages/umeda-chayamachi
コーヒーやお茶が美味しいのはもちろん、建築・空間も魅力的な大阪エリアのカフェをご紹介しました。大阪観光の合間にぜひ訪れてみてください。
取材・執筆:萩原あとり(JDN)