日本橋に“未来ののれん”を掲げ、新しい体験をつくる!「nihonbashi β」制作レポート(1)

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日本橋に“未来ののれん”を掲げ、新しい体験をつくる!「nihonbashi β」制作レポート(1)
日本橋の街と若手クリエイターをつなぐことを目的にスタートした共創プロジェクト「nihonbashiβ」。「未来の日本橋をデザインしよう」というコンセプトのもとに、第一弾となる今回は歴史ある街と馴染みの深い「のれん」を題材に、「未来ののれん」をつくることがテーマとなった。

プロジェクトがスタートした6月から、ここまでの取り組みをレポートをしてきたが、若手クリエイターたちが考える「未来ののれん」がついに展示される。11月1日から11月11日まで、『未来ののれん展』と題して、コレド室町、にんべん日本橋本店、マンダリン オリエンタル 東京、三井ガーデンホテル日本橋プレミアの各店舗に完成作品が展示されるので、ぜひ足を運んでもらいたい。今回の記事では、各チームが試行錯誤して制作してきた「未来ののれん」の完成直前までをレポートしたい。

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第一回:制作チェック

2018年9月22日 @Clipニホンバシ

若手クリエイターの受講生は、デザイナーやディレクター、プログラマーと職種もさまざまな、公募から厳選された16名。彼らと各店舗の代表者で構成されたチームでアイデアをぶつけ合い、そのアイデアをまとめた成果をプレゼンテーションする、計3回のワークショッププログラムは前回までで終了。

後半戦となる制作チェックは、こちらも2週間おきに計3回行われる。それぞれの分野での活躍が期待される彼らが、店舗のブランド力を高めるような「未来ののれん」という難しいテーマにチャレンジしていく。
今回からは、各ジャンルで活躍する先輩クリエイターの講義のあとに、各チームのアイデアや進捗状況に対して、講師陣から的確かつ厳しい制作チェックがはじまる。

まずは、メディアアーティストとしても活動する後藤映則さんによる講義からスタート。フルタイムで働きながら休日に制作しているそうで、仕事の合間にのれんを制作する受講生たちと近い心境だ。

「3次元で考える」というテーマで、2次元のアイデアを3次元にどうアウトプットするのかについて説明した。風になびく動きのあるのれんは時間の要素も無関係ではない。動くものに惹かれるという後藤さん、動画編集ソフトにもタイムラインがあることからもわかるように、動きを構成している重要な要素は時間なのでは考えるようになった。制作に関する意気込みについてもこう語った。「自分が見たい。そうじゃないと頑張り抜けない。世の中の人を驚かせたい。感動させたい」

「nihonbashi β」を企画するバスキュールとPARTYによる、次世代クリエイターの育成する学校「BaPA」の卒業生でもある後藤さん。「死んでもつまらないものはつくりたくない」という強い信念にも似た言葉に、刺激を受けた受講生も多いだろう。

後藤映則さん

後藤映則さん

続いて、各チームのプレゼンに対して、バスキュール代表の朴正義さん、後藤さん、中むらの中村新さん、SIXのアートディレクター矢後直規さんからの講評が行われた。

各チームからは、前回アイデア出しをした作品を再検討して、「人の暖かさで色が灯るのれん」「QRコードのついたのれんをトラックに乗せて走らせる」「けずりぶしでできたのれん」など、自由度の高いユニークなアイデアが発表された。それに対して、講師陣は的確なディレクションをして方向修正をしていく。この段階では、飾られる店舗のブランディングとの兼ね合いや、技術的な問題点などが露見して、まだまだ改善が必要な案が多かった。

講評の後も、チームごとに別室へと招いて講師陣との面談。厳しい意見が飛び交うが、これも良いプロダクトを完成させるための大切な過程だ。チームによっては、耳が痛いというような表情がこぼれ落ちる。

チームワークを形成させるために必要なこと

今回の制作では、そのほとんどが初対面同士でチームを組むことになった。そこで、バックグラウンドの異なるメンバーが集まったときに、どのように共通のゴールを設定していくのか?後藤さんと矢後さんのそれぞれの経験から知見を共有していただいた。

「最初は、どうしても表現方法に関心が行ってしまいがちですが、そうするとまとまらなくなってしまうんですよね。まずは、与えられたテーマに対してどういう意見を持つかが重要です、そのためにはリサーチにも時間をかけるべきですね。そうして全員がわかる筋が通った言葉があれば、そこにアイデアを集約していける」(矢後直規さん)

「とにかく話すようにしますね。メッセンジャーなどでのコミュニケーションではなく『会うこと』が重要です。僕も以前に参加していたたBaPAでは、あまり言葉では語らないメンバーと組んだので反応見つつでしたが、そういう人でも熱い想いを持っていたりします。そもそも自分もあまり喋る人間ではないので(笑)、つくったものやアイデアでコミュニケーションを取ることでお互いを知ることになりますね」(後藤映則さん)

日本橋の美味しいものをいただく「もぐもぐタイム」は、受講生がほっとするひと時

日本橋の美味しいものをいただく「もぐもぐタイム」は、受講生がほっとするひと時

第二回:制作チェック

2018年10月6日 @Clipニホンバシ

制作のために持ち込まれた機材やモックアップも増えて、締切が迫ることへの慌ただしさが室内の空気から伝わってくる。まずは朴正義さんによる「未来の歩き方」についての講義から始まった。

「◯◯◯と言えば自分」という旗を立てられると、よい未来を迎えやすくなる。朴さん自身、「デジタルクリエイティブ業界で野球や宇宙といえば朴さん」という評判から、2020年の東京オリンピックで野球を正式種目にする広報活動や、最近では株式会社ZOZO代表の前澤友作さんが手がけるプロジェクト「#dearMoon」に関わることができたという。最高のクリエイションを発揮すべきは自らの生きがいづくりで、「ライフワークバランスの取れた人生」よりも「ライフワークを見つけた人生」にシフトしたほうが良いと語る。そのためには「自らが情熱を注げるテーマのそばで、自分なりの未来を描き、より良いスタンスで未来を迎えよう」と、これからの時代のクリエイションを担う受講生に伝えた。

最近、朴さんが制作において気にかけていることは、世の中で起こっている入力側の技術革新。それによって、従来のテキスト・画像・音声・映像に加えて、データという新しいソースをクリエイティブに取り入れることが可能となった。データを効率化のためだけに利用するのではなく、データを人々や自然の営みを映す息吹ととらえ、データ×テクノロジー×デザインをダイナミックにかけ合わせることで、新しい気づきや体験を提供する「DATA-TAINMENT」という新しいクリエイションを提唱している。

朴正義さん

朴正義さん

アイデアが二転三転…制作を続ける中で見えてきたコンセプト

各チームとも、本業が終わったあとに毎日のように連絡を取り合い、頻繁に集合して制作に取り組んでいたという。どのような話し合いを重ねて、どのようにチームビルディングをしてきたのか?各チームの制作過程での偽らざる思いをうかがった。

Aチーム:日本橋からくり大暖簾(10月6日時点)
暖簾を「めくる」行為をアップデート。のれんをめくればからくりが動き出して、通る人を華やかな気持ちにしてくれる。

――前回から今回にいたるまでアイデアの変化は?

「なんとなくまとまりきらないまま進んでしまって、なかなかスケジュールも合わず、資料もバラバラにつくりはじめたので、企画もどれにするかという決め手もなく…。講評ではチームとしてのまとまりがないと指摘されてしまい……。そこから講師の方からアドバイスをいただいて、いちから参加する気持ちで望みました。私たちのなかではおもしろいと思って臨んだ企画ですが、ブランドのコンセプトとずれていたのもあって、コレド室町は日本で一番大きなのれんが吊るされるので、大きいのれんでしか体験できないストレートなものにしようとしました。そこでようやく明確になりました」

――展示に向けた課題は?

「安全に設置できるかというのと、体験の満足度が高められるかですね。テクニカル面もそうですし、ビジュアル面も突き詰めたいですね」

Bチーム:REVERB(10月6日時点)
再開発されたきらびやかな風景と脈々と続く老舗たち。さまざまな要素が絡み合う様子をモアレに見立てて、変化と伝統が混じり合う日本橋を表現。日本橋に掛かっている橋の形のカーブを切り取ってモアレに。

――いまのアイデアに辿り着いた経緯は?

「布でおもしろい現象がないかなと調べていたところモアレに気づきました。オーガンジーという透けた素材にいろいろなデザインを印刷すれば、モアレが起こせそうだなという話になりました。そこからは制作予算に合わせて、布の大きさや色などを調整しました。そこにいたるまでに、ほぼ毎日都内のファミレスでミーティングをしました。仕事を21時で終わらせて終電頃まで……という生活ですね」

――展示に向けた課題は?

「いっぱいありすぎて(笑)。モアレを起こすための運動は前後ではなく、上下や左右に平行移動するのがベターで。布をいくつか用意した場合に密着していないといけない。それをどう動かすかが今後の課題ですね」

Cチーム:日本橋 音の場(10月6日時点)
にんべんがこだわり続ける本枯鰹節。味覚以外の感覚から美しさや美味しさを想起させる。食に関するオノマトペ(視覚)を使ったのれんと、超指向性スピーカーを使って文字とリンクした音(聴覚)を鳴らすのれん。

――前回から今回にいたるまでアイデアの変化は?

「いろいろな案出しをしていましたが、のれんをどう体験するかよりも、見たことのないものをつくろうということに注力しすぎて、それがにんべんらしさだったり企業の良さと結びつけるのが着地点として難しくなりました。そこからいままで構築してきたものをビジュアライズする方向にシフトしようと移行しました」

――チームワークの形成はいかがでしたか?

「ケンカはかなりしましたね(笑)。みんながみんな意見が強いから、カフェで立ち上がってしまったり。最近になってにんべんさんのブランドイメージの軸がようやく見えてきて、そこで初めて役割分担ができるようになってきました」

Dチーム:マンダリンオリエンタル東京の風(10月6日時点)
「森と水」をデザインコンセプトとするマンダリン オリエンタル 東京の空間にあわせて、透け感のある白いオーガンジー素材を用い、「風」を表現するのれん。最新テクノロジーで風を制御する。

――前回からブラッシュアップした部分は?

「デザインはある程度決まっていたんですが、どういう形でお客様を迎え入れるか、体験の設計の部分が詰めきれていなかったので、体験の設計をどのようにハード面に落とし込んでいくかブラッシュアップしました。布を動かすための動力源がモーターなのかファンなのか決まっていなかったのですが、ここに置けばのれんがゆれるという解は導きました」

――チーム内の意思疎通で気を使った点は?

「各々のスキルがわりとはっきりしているので、イメージのビジュアルの共有がうまく行けば、お互いに意見が出し合いやすくなる、そういう雰囲気づくりが重要だと思いました。京都から参加しているメンバーもいるので、対面したときはお互いの時間を大切にして協力しあいました」

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