日本橋に“未来ののれん”を掲げ、新しい体験をつくる!「nihonbashi β」制作レポート(2)

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日本橋に“未来ののれん”を掲げ、新しい体験をつくる!「nihonbashi β」制作レポート(2)

第三回:制作チェック

2018年10月20日 @Clipニホンバシ

最終回となる今回のプログラムを終えると、完成まで自分たちでつくるしかない。まずは、アートディレクター矢後直規さんによる講義「デザインの試行錯誤」 からはじまった。仕事のターニングポイントとなった『LAFORET HARAJUKU』のビジュアルイメージ。このグラフィックを制作したことから、自分のつくりたいデザインを優先するのではなく、大勢に届かせるためにコンセプトをきちんと意識するようになっていったという。過去に手がけた作品のプレゼンテーションにはじまり、周りを巻き込んでいく仕事の広げ方に話がおよんだ。

矢後直規さん

矢後直規さん

続いて、フルサイズのモックでのデザインや動作の最終チェックが行われた。この日の講師は、朴さん、バスキュールの馬場鑑平さん、中村さん、後藤さん、矢後さん。この日に完成イメージに近い状態にこぎつけないと、イベント当日に間に合わない可能性も出てしまうので、制作物へのチェックも力が入る。この日のために泊りがけで制作をしたチームもいたほどで講師も若手クリエイターも真剣だ。そして、鋭い指摘に弱音を吐く受講生もちらほらと……。

Aチーム:のれんさま

日本一大きいのれんがかかるコレド室町。そのロゴをさかさまにして目と眉を加えた老人のキャラクター「のれんさま」が描かれる。のれんに内蔵された加速度センサーによって、揺れの大きさと連動してスピーカーからのれんさまのとぼけた合成音声が流れる。それに加えて、ツイッターとも連動してボヤキが投稿される。のれんさまが老人のような声で「肩凝るなあ、肩ないけどな」「暇で忙しいなあ」などの冗談を喋るたびに、講師陣やスタッフから笑いが湧きでた。ファミリー層の利用も多く、街に賑わいを生むコレドの役割を表現するのれんとなった。

Bチーム:響きあう、今と昔と

三井ガーデンホテル日本橋プレミアに飾られるのは、モアレを使ったのれん。伝統と文化が交わる日本橋の地域性をモアレに例え、日本橋の橋のアーチを抽象化した縞状の柄にデザインしている。自動的にモアレを発生させるために、動力として熱を与えると収縮するバイオメタルのコイルを使っている。最小限の基板と電源だけでコイルの収縮を発生させて、2枚ののれんをスライドさせる。それによってモアレによる視覚効果が発生する仕組みというもの。あとは、実際にのれんをくぐったときに、モアレそのものにどのような影響を及ぼすのかで調整が必要となりそうだ。

Cチーム:日本橋 音ノ場

鰹節専門店、にんべん日本橋本店の店内に掛けられるのれん。食事の際に発生する音のオノマトペ(擬音)を視覚化したデザインののれんと、指向性スピーカーによって店内の限られた場所にオノマトペのもととなる音が聞こえるという制作物。講師陣からは、スピーカーとのれんの関連性の弱さや、音に囚われすぎていてブランディングと紐付かないことを指摘され、再検討を促された。展示に向けてアイデアを詰め直さなければいけない。

Dチーム:マンダリン オリエンタル 東京の風

「森と水」がデザインコンセプトというマンダリン オリエンタル 東京に設置されるのれんは、人が通ると風が起きて、5枚の薄いのれんがなびく。仕組みはセンサーが感知し、鑑賞者から見て奥側に設置されたファンが起こす風によるものだ。また、スピーカーから森の音や水の音、鳥の鳴き声を用いることも検討。場が持っている雰囲気を読み取り、五感に訴える体験に重きを置いたのれんとなった。

展示までにどこまでクオリティを高められるか

チームごとのプレゼンテーションとチェックが完了。講師陣に指摘された作品の修正すべき点をクリアして、会期までに作品を完成させなければいけない。ここからが正念場だ。

約3か月にわたって実施されてきた今回のプロジェクト。街と若者をつなげる枠組みづくりに尽力した、nihonbashi β projectの代表の朴正義さんに、プロジェクトのここまでとこれからについて改めてコメントをいただいた。

「「未来ののれんをつくる」という誰も考えたことがないお題に、どんなクリエイターや店舗が集まってくれるのか、どんなワークショップをすればいいのか、と期待と不安が入り混じるプロジェクトでしたが、空間デザイン、建設、大手メーカー、広告企画、ロボット開発、ソフトウェア開発……さまざまな業界の若手クリエイターと日本橋の店舗が一緒になって、未来ののれんづくりに挑んでくれました。「共創」「イノベーション」という言葉はある意味バズワードになっていますが、デザインやテクノロジーといった手段だけにとらわれることなく、各チームともに「日本橋だからこそ」「未来ののれんとはなんなのか」と本質に向きあい、ときにはぶつかり合いながら、BaPAに勝るとも劣らない熱量で、創作活動を進めてくれています。日本橋を訪れてくれたみなさんにどんな体験を提供できるのか、ボクも本番が楽しみです。新しいnihonbashiβ企画の発表も近いので、クリエイターのみなさん、是非、日本橋にお越しください!」(朴正義さん)

展示は11月1日から11月11日まで各店舗で開催される。ゼロから制作したのれんは、日本橋の街を行く人からどのような反響を得られるだろうか?試行錯誤と悪戦苦闘の末に完成させた「未来ののれん」、ぜひ実際にくぐってみて体験してほしい。これまで日本橋と縁のなかった若手クリエイターたちが、街の物語と景色に真剣に向かい合ってつくった作品が掲げられることで、日本橋の街がいままでと少し違って見えてくるはずだ。

「未来ののれん展」
開催期間:2018年11月1日(木)~2018年11月11日(日)
会場:コレド室町 / にんべん日本橋本店 / マンダリン オリエンタル 東京 / 三井ガーデンホテル日本橋プレミア
https://nihonbashi-beta.jp/noren/

取材・文:高岡謙太郎 撮影:川谷光平