ポジティブな共感とコミュニケーションが生まれる、ものづくりの祭典「Maker Faire Tokyo 2015」

ポジティブな共感とコミュニケーションが生まれる、ものづくりの祭典「Maker Faire Tokyo 2015」

「Makerムーブメント」の祭典が今年も開催

「なにかおもしろいモノをつくりたい!」「自分の欲しいモノは自分でつくりたい!」、そういう思いを持った人たちにとって、いまはとても良い時代なのかも知れない。「モノ」をつくりだすテクノロジーは安価に手に入れることができるし、少しの探求心があれば専門的知識がなくても容易につくることができる時代になりつつある。

そうした「Makerムーブメント」の盛り上がりは、ここ日本でも着実に大きくなっている。東京ビッグサイトで8月1日~8月2日に開催された、今回で4回目(「Make:Tokyo Meeting」時代から数えると11回目)を迎える「Maker Faire Tokyo」(主催:オライリー・ジャパン)に訪れて改めて感じた。

「Maker Faire」のマスコットMakey(メイキー)くん

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「Maker Faire」についてご存知ない方のためにおさらいをしておくと、日本では2008年に隅田川沿いのインターナショナルスクールの体育館とグラウンドで、約30組の出展者と約600名の来場者が集まって「Make: Tokyo Meeting」としてスタートした。技術愛好家、クラフト作家、農家、科学者、機械いじり愛好家など、年齢も経歴もまちまちの「Maker」による、地上最大のDIYの展示発表会…と言われているが、エレクトロニクス、ロボット、デジタルファブリケーション、クラフト、電子楽器、サイエンス工作、リサイクル/アップサイクルなど、あっと驚くようなもの、これまでになかった便利なもの、ユニークなものをつくりだす「Maker」が集うお祭りといったほうがわかりやすい。「Maker」が自分でつくったモノを見せ合う場所であると同時に、そこで出会った仲間と情報を「シェア」する場所でもある。

「Maker Faire Tokyo」のおもしろさって?

会場に集まった「Maker」のものづくりへの情熱はやはり熱いものだった。発想のユニークさや技術力の高さに驚かされるのはもちろん、よくわからないけれど「すごい!」としか言いようがないモノ、実際に触ってみるとおもしろさに気づかされるモノ、ほめ言葉としてのしょうもないモノ・くだらないモノなど、完成されたプロダクトが並ぶ(いわゆる)展示会とはまったく趣が異なる。「Maker Faire」の良さは、「Maker」がつくったものを実際に見ると、「自分もなにかつくってみたい」とか「おもしろいモノをつくっている人を応援したい」というようなポジティブな共感を生むところだ。

【面白法人カヤック/面白IoT制作室】開閉式の「ウェアラブル後光」、脱力するしょうもなさが魅力

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【WOSK/CUSTOM MIDI CONTROLLER「CC-1」】ボタンやコントロールノブ、フェーダーなどの操作子をブロック感覚で自由にレイアウトできるMIDIコントローラー

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【R2 ビルダーズ・クラブ・ジャパン】スターウォーズ・ファンの国際的グループ。スターウォーズのドロイド(主にR2-D2)を制作

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家族で楽しめるさまざまな取り組み

本気の「Maker」だけでなく、親子での来場が多いのも「Maker Faire」の特徴のひとつといえる。新聞紙を使ったモンスターづくりなどの企画が用意された「KIDSスペース」、はんだづけなどの体験型ワークショップが開かれる「MAKERSPACE」、ドローンなどの操作体験ができる「MAKERFIELD」が会場の入り口を入ってすぐに設置されている。次の世代の子どもたちに、もっと自分の手を使って「自由に」何かを作ることを楽しんでほしい、そう考えていることの現れだ。

「KIDSスペース」で人気のバックミンスター・フラー考案の「フラードーム」

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「MAKERSPACE」のはんだづけ体験コーナー、子供たちが黙々と作業しているのが印象的

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情報をシェアする = 仕組みをオープンにする

また、発表された作品を見て楽しむだけではなく、ものづくりのためのツールが年々増えてきている傾向にあるようだ。特に自分のつくったソフトウェアなどをオープンソースにすることによって、ある種のプラットフォームとしての発展を促すようなモノがトレンドなのかも知れない。こうした傾向は「Makerムーブメント」固有のものではなく、一般企業の商品開発でも徐々に浸透しつつある。オープンにして外部と共創することで、新しいアイデアが生まれるという考え方だ。

【no new folk studio/Orphe】モーションセンサーとLEDを用いた、パフォーマーに特化したスマートシューズ。タブレットを使って簡単に靴の光り方を操作でき、デザインした色をweb上でシェアすることも可能

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【MESH】さまざまな機能を持つ消しゴムサイズの電子タグと、身の回りのモノを組み合わせて、日常を便利にするような仕掛けや遊びを、簡単に形にできるスマートDIYキット。アイデアと組み合わせ次第で可能性は無限大

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注目のプログラム「メントス×コーク大噴水ショー」

今回の注目のプログラムは、コークゼロを136本使用する「メントス×コーク大噴水ショー」だ。世界のMaker Faireを沸かせてきた、The Eepy Birdのふたりは今回が初来日。YouTubeで1億5000万回以上再生されてきた彼らのショーに、うだるような炎天下(この日の最高気温は35.3℃)に関わらず多くの観客が集まった。コークゼロにメントスを入れると、メントスの表面の凸凹が反応の引きがけとなり、コークゼロすべての二酸化炭素が一気に逃げ出す原理を利用したものだ。使用するコークゼロ(炭酸水)はあたたかいほうが理想的らしく、灼熱に数時間焦らされたおかげで高々と噴き上がった。なお、コークゼロを使う理由は「砂糖不使用だからべたつかない」とのこと。こうした科学に対する愛情あふれる、エンターテインメント作品が楽しめるのも「Maker Faire」のおもしろさだ。

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取材時間の関係で未見だが、「水中ロボットの魅力」「実際のハードウェアスタートアップ」「5億人が必要とするバイオ機器を自宅で作る」「介護+MAKEの提案」など、タイトルからして興味深いさまざまなプレゼンテーションも行われた。

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「Maker Faire」は年一回の開催だが、9月19日~9月20日に山口情報芸術センター(YCAM)で、YCAMで展開する教育普及プログラムとの連携した「Yamaguchi Mini Maker Faire(ヤマグチ・ミニ・メイカー・フェア)」(主催:山口市、公益財団法人山口市文化振興財団/共催:オライリー・ジャパン)が開催されるのでそちらにも注目。

Maker Faire Tokyo 2015
http://makezine.jp/event/mft2015/