自分の好きな1冊を発見!「世界のブックデザイン2015-16」。個性が光る世界のデザイン本

自分の好きな1冊を発見!「世界のブックデザイン2015-16」。個性が光る世界のデザイン本

すてきな装丁や、世界観がまるっとデザインされたような本が好き!という方に自信を持っておすすめしたい展覧会があります。

印刷博物館で3月5日まで開催中の「世界のブックデザイン2015-16」。本展は、2016年3月にドイツで開催された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書13点に、6か国(日本、ドイツ、オランダ、オーストリア、カナダ、中国)のコンクール入選図書を加えた、約180点が展示されています。また、会場では日本の「造本装幀コンクール」が50回を迎えたことを記念し、同コンクールにおける過去の受賞作から秀作約50点も同時展示されています。

この展示のうれしいポイントは、会場のほぼすべての本を実際に手に取ってじっくり読めること。残念ながら写真撮影はできませんが、世界最高峰のブックデザインと造本技術を目にじっくり焼き付けてください。このレポートでは編集部目線で記録に残したいと思った作品をご紹介します!

爱不释手(手放すに忍びない)/中国

本の天地と小口がまるで猫に引っかかれたかのようになっており、持った瞬間に「何これ!?」と驚いた一冊。サイズ感と重さは小さな辞書くらい。日本人には発想できない、大胆なデザイン。

デザイン:洪衛

デザイン:洪衛

小口はあえて傷つけたような、インパクトのあるデザイン。中面も手描き文字をそのまま印刷したようになっていて面白い

Hans Fallada – Der Trinker(ハンス・ファラダーのんべえ)/ドイツ

20世紀前半に活躍したドイツの作家、ハンス・ファラダの、アルコール依存症をテーマにした小説を漫画にしたもの。漫画というよりは、グラフィカルな小説といったほうがしっくりくる内容とデザイン。力強いペンの描画と独特の4色で刷られた絵が印象に残ります。

デザイン:Jakob Hinrichs,Berlin

一般的な印刷色のCMYKではない、少し落ち着いたトーンの4色で刷られています

weather forecast another grey start(天気予報:アナザ・グレイ・スタート)/ドイツ

28の新聞から抜粋された天気予報がまるで詩のように記されている本。何の変哲もないように見えますが、ページをめくってみると違和感に気付きます。右ページにはページ数だけが印刷されており、左ページには左右が反転した文章が印刷されています。薄い紙のため、紙を透かした状態ではきちんと文字が読めるという仕組みの本。

デザイン:Marina Kampka,Offenbach

左のページは文字が左右反転して読めませんが、右のページにうっすらと透ける文字は読むことができます

Reprint Karel Martens/オランダ

オランダのグラフィックデザイナー、カレル・マルテンスの4,000点もの作品と、彼が教鞭を取るアーネム芸術アカデミーでの指導法に関するエッセイを集めた見本集。審査員に「爽やかで軽やか、独創性をもった本書は“100パーセントオランダの文化遺産である”」と言わしめた一冊です。色、形、リズム、バランスすべてが洗練された一冊は、1枚1枚めくるたびにちがう魅力があります。

デザイン:Karel Martens、David Bennewith and students of Type and Media,The Hague

本の天部分がカットされておらず、袋とじのようになっていることもひとつの特徴

中村明日美子コレクションⅠ~Ⅷ/日本

繊細かつ大胆な描画と、読者を深く引き込む世界観が人気の漫画家・中村明日美子さんのデビュー15周年を記念した書籍8冊と、オリジナル収納ボックス。コレクションと呼ぶにふさわしい、8冊を1枚の絵として見せる完成度の高さと絵の美しさが最大限に引き出されたデザイン。

デザイン:内川たくや/UCHIKAWADESIGN

デザイン:内川たくや/UCHIKAWADESIGN

福本潮子作品集 藍の青/日本

日本を代表する藍染め作家・福本潮子さんの作品集。本の背は藍染めされたような糸が編まれており、福本さんの世界観を広げるようなデザインです。シンプルな中にも丁寧な気遣いが感じられる一冊。

デザイン:福本潮子、デュウェル八木智紗

本の背には藍染めされたような糸が編まれています

造本装幀コンクール 過去受賞作品

瀧口修造1958-旅する眼差し(第44回文部科学大臣賞)

近代日本を代表する美術評論家の瀧口修造が海外で撮影した、独自の視点をうかがわせる写真を多数収録したもの。別冊の解説書・旅の手帖・夫人宛絵葉書のファクシミリ、またオリジナルプリントを添えて特製ボックスに収められた、贅沢な内容です。

デザイン:中垣信夫、西川圭

すてきなあなたに(第10回 日本書籍出版協会会長賞 教養書部門)

暮しの手帖社を創業した大橋鎭子が、1969年から永年にわたって、情熱をささげ続けたエッセイ集。デザインと装丁画は暮らしの手帖を長年にわたり編集長をつとめた、花森安治によるものです。

デザイン:花森安治

会場ではゆっくり読んでもいいように椅子が置いてあるので、かなり長居してしまう方も多いそう。日常ではあまりお目にかかれないような装丁の本ばかりなので、思わず一つひとつ手に取ってじっくり見入ってしまいます。自分にとっての“この一冊”をぜひ会場で見つけてみてください。

石田織座(JDN編集部)

世界のブックデザイン2015-16
会期:2016年12月3日(土)~2017年3月5日(日)
会場:印刷博物館
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/161203/index.html