自分の中にある“アスリート性”を探る「アスリート展」。21_21 DESIGN SIGHTで開催

Photo:Keizo KiokuPhoto:Keizo Kioku

今年3月に10周年を迎える、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT。記念すべき10周年と同時に開催される展覧会には、「アスリート」という、一見デザインと直結しないようなテーマが掲げられた。日々の積み重ねや試行錯誤を繰り返し、自己の限界を乗り越えていく「アスリート」。目標に向かって真摯に取り組む姿には、スポーツのみならず、あらゆる分野で活動する人々にとってのヒントが数多く潜んでいるのではないだろうか。

会場の様子

本展では、アスリートの躍動する身体を映像や写真で紹介するほか、体感型の展示を通して、身体や心理をコントロールする知覚、戦術における情報解析の先端技術、そして身体拡張を支えるスポーツギアなど、アスリートをかたちづくるさまざまな側面をデザインの視点から紐解いていく。展覧会ディレクターは、トップアスリートの経験を踏まえてさまざまな活動を行う為末大さん、デザインエンジニアの緒方壽人さん、研究者/映像作家の菅俊一さんの3名。

(写真左から)菅俊一さん、為末大さん、緒方壽人さん

(写真左から)菅俊一さん、為末大さん、緒方壽人さん

為末大さん:「そもそもアスリートとは何なのか?」という問いから展示について考え始めました。普段何気なく踏み出している足やコップを掴む腕、ぼんやりとブラウザを眺めている目の延長にアスリートはいます。ある行為を極めていくことで、感覚が鋭敏になり、知らなかった自分に出会えるようになります。そんな、誰にでもあるけど手に入れるのに時間と労力がかかる“アスリート性”を、本展で少しのぞいてみてほしいです。

緒方壽人さん:大一番の極限状態で最高のパフォーマンスを発揮すべく、自らの、そして時には人間の可能性の限界を押し広げていくアスリートたちが、自らの「身体」とそれを取り巻く「環境」をどう感じ、捉え、適応しているのか、その感覚世界をぜひ体験してみてください。

菅俊一さん:アスリートとはいえ、私たちと同じ身体と心を持っています。本展では、デザインの力でどうやってアスリートを身近な存在だと感じてもらえるかを考えました。会場に並ぶたくさんの展示や体験を通じて、「あれ?意外と自分ってバランス感覚あるな……」など、自分でも知らなかった一面を発見してほしいです。

以下、身体の動きの美しさを感じる作品や、アスリートが身体と心をどうコントロールしているのか体験できる作品を一部紹介する。

アスリートの身体や動きの美しさ

驚異の部屋/高橋啓治郎(アニメーション)、菊地絢女(人体造形)
アスリートの超人的な身体能力を、ギャラリー全体を用いて表現。アスリート自身の動きをもとに制作した実寸大のプロジェクション映像により、世界記録(陸上競技)を体感できる。

驚異の部屋/アニメーション:高橋啓治郎、人体造形:菊地絢女(Photo:Keizo Kioku)

驚異の部屋/アニメーション:高橋啓治郎、人体造形:菊地絢女(Photo:Keizo Kioku)

報道写真の視点/アダム・プリティ(ゲッティイメージズ)
人間の身体ってこんな形になるの?と感じるような、普段目撃することができない視点でアスリートの動きや身体特性を伝える写真8点を展示。

報道写真の視点/アダム・プリティ(ゲッティイメージズ)

報道写真の視点/アダム・プリティ(ゲッティイメージズ)

アスリートダイナミズム/Takram
アスリートの「動き」のみをモーションキャプチャーデータから抽出して可視化したアニメーション。スポーツの競技性や記録、勝敗といった要素が排除された、純粋にアスリートの身体が描く動きの軌跡の美しさ、ダイナミックな身体の躍動を体感できる。

アスリートダイナミズム/Takram(Photo:Keizo Kioku)

アスリートダイナミズム/Takram(Photo:Keizo Kioku)

身体と心をコントロールする

タイムプレッシャー/imaginative inc.
アスリートが試合や日常で体験するプレッシャーを身近なもので体験してみようという作品。9つ開いた穴にスプーンでボールをはめていき、何秒かかったかを測る。その後、かかった時間が表示され、今度はその時間内に再度ボールをはめこめるかというプレッシャーがかかる。

タイムプレッシャー/imaginative inc.

タイムプレッシャー/imaginative inc.

アスリートの体型特性/LENS(岡田憲一+冷水久仁江)
フィギュアスケートや相撲など、5競技のアスリートのシルエットに合わせて来場者がポーズを取る。そのポーズや体型がアスリートのものとどのくらい違うかを体感できるという作品。

アスリートの体型特性/LENS(岡田憲一+冷水久仁江)

アスリートの体型特性/LENS(岡田憲一+冷水久仁江)

Analogy Learning/稲本伸司(構成:菅俊一)
「アナロジー=例え」を用いて動きを説明するコーチング技術の一例を紹介するもの。写真のほかにも、「回し車の中のハムスターのように走る」「頭から引っ張られていると思って泳ぐ」など、ユニークな例えがたくさん。

Analogy Learning/稲本伸司(構成:菅俊一)

Analogy Learning/稲本伸司(構成:菅俊一)

デザイナーの視点から見た「アスリート」

動線/大原大次郎
2020年の東京オリンピックから公式種目となる、スポーツクライミングにスポットをあてた作品。本競技のルートを考える「ルートセッター」のための試作ノートを大原さんが「動線」という視点で展示・編集。ノートには月や火星の表面、俯瞰した地上などさまざまなテクスチャーが印刷されており、それらをクライミングウォールに見立ててルートを考えるというもの。

動線/大原大次郎

動線/大原大次郎

メダル“より速く”、“より強く”、“より美しく”/角田陽太
アスリートにとって目標や到達点のひとつである「メダル」は、スポーツにおいて速さや高さ、強さ、美しさ、権威のメタファーでもある。“より速く”は陸上や水泳、“より強く”はボクシングやサッカー、“より美しく”は体操やフィギュアスケートなど、競技の性格によって異なる形にデザインされたメダル。

メダル“より速く”、“より強く”、“より美しく”/角田陽太

メダル“より速く”、“より強く”、“より美しく”/角田陽太

本展で印象的だったのは、名の知れたトップアスリートの写真や映像が出てこないこと。匿名の「アスリート」を題材とすることで、すべてのアスリートに通じる普遍性を感じてもらうべく、そういう方法を取ったそうだ。たくさんの体験型の展示を通して、自分の中に潜む“アスリート性”を探ってみていただきたい。

アスリート展
会期:2017年2月17日(金)~6月4日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT
http://www.2121designsight.jp/