「Adam」は、そんな搾りかすを利用してつくられた新しいシート素材です。この新素材Adamから、デザインスタジオ・21B STUDIOとのコラボによって、バスケットトレイなどのプロダクトが生まれました。本記事では、Adam誕生の背景や特徴などについてご紹介します。
■背景・コンセプト
本州最北端に広がる津軽平野は、日本有数のりんごの産地です。春には粉雪のような白い花が咲き、秋には真っ赤に色づいた実が収穫の時を待ちます。冬には深い雪に覆われながらも、津軽のりんごは次の春を辛抱強く待ち望み、豊かで厳しい四季の移ろいとともに育まれています。

津軽りんご
そんなりんごは、信頼ある農家の方々の手作業と深い愛情によって育てられています。丁寧な手仕事とりんごが生み出す津軽の風土と産業には、心を動かされるものがあります。津軽りんごは生食だけでなく、ジュースやジャムなどの加工品にも幅広く使われていますが、その製造工程では、果汁や果肉以外の部分は「搾りかす」として廃棄されてしまうのが現状です。
確かに、搾りかすには食べられない部位がありますが、それでもなお、大切に育てられたりんごを最後まで活かしたい。津軽の風土と人々が丁寧に育て上げた、りんごに対する敬意があります。「Adam」はこのような背景から、搾りかすとして廃棄されてもなお愛され続ける、津軽りんごに由来する製品として生み出されました。
■特徴
「Adam」は、青森県産のりんごの搾りかすを活用して生まれた、新しいシート素材です。

Adam
日本有数のりんごの産地である青森県では、りんごに関連する食品廃棄が課題となっています。「Adam」では、りんごの果実部分だけでなく、種やヘタまで余すことなく使用しているのが大きな特徴です。これにより、廃棄がほとんど発生しません。
また、「Adam」は、そうした搾りかすをそのまま原材料として可視化することで、素材の風合いや質感をダイレクトに表現。透明感のあるビジュアルと、搾りかすそのものが持つ存在感によって、強いメッセージ性を放つプロダクトになっています。
廃棄されるはずだったりんごに新たな役割を与えることで、りんご産業全体に新しい付加価値と可能性をもたらす——それが「Adam」の目指す姿です。
厚さは0.6mm(2024年1月時点)で、耐水性があり、傷もつきにくいため、アパレル小物や家具の表面材など、幅広い用途に対応できます。さらに、汚れは水や中性洗剤で簡単に拭き取れるなどメンテナンス性にも優れ、EUの環境規制「RoHS2」にも適合しています。
■Adamブランドディレクター・大島頌太郎さんのコメント
私たちは、2024年1月にBEAMS JAPAN 新宿店で開催したポップアップイベントをきっかけにスタートしたブランドです。これまでに前例のない「廃棄りんご×塩化ビニル」という新しいシート素材の表現が評価され、海外のデザイン系メディアに多数取り上げられ、国内外の見本市でも展示をおこなってきました。
さらに、パリファッションウィーク2025年春夏コレクションでは、世界的ファッションブランド「doublet」とのコラボレーションが実現し、コレクションアイテムに「Adam」を提供しました。
そして今回、新進気鋭の若手プロダクトデザイナー・21B STUDIOとのコラボレーションにより、「Adam」を用いた新しい造形や製造技法の可能性を模索しました。今後も「Adam」は、素材が本来持つ力を信じながら、暮らしにささやかな豊かさを届ける提案を続けていきます。
Adam Basket Tray
サイズ | φ250 / H : 60 mm (Mサイズ) |
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素材 | Adam Sheet |
重量 | 330g |
価格(税込み) | 18,000円 |