2024年グッドデザイン大賞は、遊具研究プロジェクト「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」に決定
公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、2024年度グッドデザイン賞の大賞が発表された。受賞したのは、遊具研究プロジェクト「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」。また、「みんなの選んだグッドデザイン」には複合型福祉施設の「深川えんみち」が選ばれた。
「グッドデザイン大賞」は、その年に受賞したすべてのグッドデザイン賞受賞対象の中で最も優れたデザインと認められるものに贈られる最高賞。2024年度は審査委員長をクリエイティブディレクターの齋藤精一、副審査委員長はプロダクトデザイナーの倉本仁と建築家の永山祐子が務め、「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに募集がおこなわれた。
5,773件の審査対象の中から1,579件の受賞が決定し、さらに大賞候補となる金賞20件が決定、最終プレゼンテーション審査により大賞1点が選出された。また、新設された一般投票による「みんなの選んだグッドデザイン」も、同様に金賞のなかから1点が決定した。
大賞の「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」は、全国に約2万人いるとされる「遊びたくても遊べない」医療的ケア児に注目し、彼らが遊ぶ日常をつくるプロジェクト。医師やケアスタッフ、遊具デザイナー、地域のプレイヤーが協力し、医療的ケア児と健常児が同じ空間で楽しめる3つの遊具を開発した。現在は130基以上が納入され、赤ちゃんやお年寄り、車いすの方も含め、街のさまざまな人が集う場所をつくり出している。
審査委員長の齋藤は審査プロセスを振り返り、「この数年は、『もののデザイン』と『ことのデザイン』を分けるのではなく、『もののまわりにことがあり、ことのまわりにものがある』という意識で、できるだけユニットを超えて審査員が議論する場を設けてきた。360度の議論を重ねていくのがグッドデザイン賞」と語った。
大賞については、「『もののまわりにあることのデザイン、ことのまわりにあるもののデザイン』をまさに体現しているプロジェクト。インクルーシブということがずっと言われてきているが、そこには乗り越えなければいけないたくさんの問題がある。医療的ケア児とそうではない子どもたちを分け隔てることなく、一緒に遊べる遊具を開発したというのはまさにいまの時代に必要な発想であり、取り組みともののデザインが融合したからこそ実現できたものだと思う」と評した。
受賞した株式会社ジャクエツの遊具デザイナー・田嶋宏行は「コロナという難しい時代にはじまったプロジェクト。そんななか医療的ケア児たちと毎日遊びながら突き詰めていった。小さかったプロジェクトがこんなに大きな賞に選ばれるとは思わず、驚いています」とコメント。
さらに、医療的ケア児たちが実は自分たちの「遊び」を持っているのに、大人の先入観で「遊べない」と決めつけていたという経緯から、「開発を通して、世の中の『しょうがない』『仕方ない』といった当たり前は更新できるのだと思った。こういった活動を皆さんに届けることで、次のやさしい社会を育てるデザインの起点になれば」と語った。