Vectorworks ベクターワークス活用事例

カルチャーから生まれる、想像力を掻き立てるようなものづくり-SNARK Inc.(2)

[PR]
Photo:Lo.cul.p
SNARK Inc.(小阿瀬直山田優大嶋励

頭で考えた想像の産物をつくりたい――SNARKが掲げる思い

小阿瀬:「社名のSNARKってどういう意味?」と、よく聞かれるんですが、僕の名前「Sunao Koase(スナオコアセ)」と「アーキテクチャ(建築、設計、様式などの意)」を合わせた造語。でもそれだけじゃちょっと弱いかなと(笑)、『不思議の国のアリス』で有名なルイス・キャロルの『スナーク狩り』という小説にも掛けています。これはスナークという怪物を探しに行く話なのですが、結果的にはスナークなんて怪物は実際にはいなくて、みんなが頭の中で勝手に考えた想像の産物だった――というところから、“想像力で新しいものを生み出していく”という意味を込めて、SNARKと名付けました。

SNARKのロゴマーク。ケモノの腕が印象的

SNARKのロゴマーク。ケモノの腕が印象的

小阿瀬:会社のロゴマークも、正体のわからない怪物のイメージです。ただ、手だけが見えるので、何かがいることはわかる。どんな怪物なのか、そもそも怪物なのか何なのか、みんなの想像力を掻き立てるようなものが、ものづくりの中でできればいいなと思っています。

新しい試みにも貪欲にチャレンジするSNARK。2012年に「山小屋に居るように、シンプルで豊かな生活を送るための道具」をコンセプトにした、インテリア、家具などのプロダクトレーベル『Lodge Store』も立ち上げた。

Lodge Store ロゴマーク

Lodge Store ロゴマーク

小阿瀬:内装デザインのたびに新しいオリジナルのプロダクト――例えば、オフィスの設計をやったときにはデスクや棚を毎回、図面を描き直してつくってきたんですね。それをレーベルとしてまとめたのが『Lodge Store』です。どの商品もオーダーメイドで受注しているので、結局は毎回設計し直しているような形です。

目指しているのは、使う人が自分なりに工夫して、制作に参加できること。例えばベニヤ材に色を塗ったり、カットして幅を変えたり。ゼロから全部つくるのは難しくても、板を好きな長さに切るだけだったら、それほどハードルは高くない。これをきっかけに、次は色を塗ってみようとか、新しいパーツをつけてみようとか、いろいろな発想が生まれるといいなと思っています。

SNARK 小阿瀬直さん

小阿瀬:ネーミングは、ロッジ(山小屋)でのシンプルな生活をイメージしてつけました。ロッジでの生活は、住環境として必要最低限の設備しかそろっていない分、なおさら「生活する」ことに敏感になれる気がします。日々の生活も、今あるものを使いながら、D.I.Y.でその時々の状況によってカスタマイズしながらやっていくほうが楽しいんじゃないかなぁと。

大嶋:生活するうえで、自分が使うものを自分でつくれるのはすごく素敵だなと感じています。そのきっかけになれたらいいなという思いから、このレーベルが始まりました。

Lodge Store「Steel series」

Steel series(左が完成した形、右は組み立て前のもの)Photo:Lo.cul.p

大嶋:これは、スチールの骨組みと木のパーツでできている組み立て式の棚です。

小阿瀬:僕たちがデザインしているのはスチールの骨組みのほうで、木のパーツはホームセンターで手に入る材料を想定しています。だから、棚板や背板をカットしたり、木材を新しく買ってくれば後から好きなサイズや材質に変更できます。スチールの骨組みだけあれば、例えば引っ越し先の部屋に合わせてリサイズすることができるんですね。

Steel series 図面

Steel series 図面

小阿瀬:設計する際は、図面だけではどのくらいの重さでどのくらいたわむのかなどの加減がわからないので、自分たちの手で実際につくって確認しています。

山田:それが、次の図面を描くときにフィードバックになります。改良していくのは経験則に頼るしかないので、つくっては改良し、つくっては改良しての繰り返しですね(笑)。

大嶋:天板の厚さも、この厚みだと薄くてたわむから次はもう少し厚くしようとか、重すぎるようだったら軽くするとか調整して。そういうのは、失敗しながらでもつくっていかないとわかりませんからね。

SNARKが手がけた、TRAIL HEADS,Inc Office。左端のターンテーブルもオリジナルでつくったもの

SNARKが手がけた、TRAIL HEADS,Inc Office。写真左のオーディオシステムもオリジナルでつくったもの(Photo:Kei Ohnaka)

山田:写真のオーディオシステムは、レコードのターンテーブルと真空管アンプ、スピーカーをひとつの什器に埋め込んだもの。オフィス設計の際につくったオリジナルプロダクトです。図面を原寸大でも出力し、いろいろ検証しながらつくりました。

小阿瀬:Vectorworksもすごく活用していて、特にビューポートの機能はたくさん使いましたね。描いた図面の一部を切り取って、別の図面にレイアウトしたり。プロダクトやインテリアなどでは、1/2レベルの詳細図を部分的に作成したりしています。ひとつのプロダクトやインテリアで、複数の詳細図が必要な箇所をビューポートで基本図から取り出し、複数の詳細図を同時に仕上げていきます。

トレイルオーディオ什器 図面

トレイルオーディオ什器 図面

大嶋:データを切り貼りするときに、拡大・縮小できるのも便利でした。例えば、1/50の縮尺の図面にも、実は表示しきれないぐらい多くの情報が描かれているので……。これを1/2の縮尺に拡大すると細かい部分も見えてくるんですね。ひとつの図面をつくったら、縮尺を変えて切り貼りすることが簡単にできるのもVectorworksのよさですね。

山田:さらに、取り込んだ画像も貼っていけるので、プレゼン用の資料もつくりやすい。感覚的にビジュアルを操作しやすいのはVectorworksがいちばんだと思っています。

SNARK

山田:新しいプロダクトが生まれるきっかけは、「音楽が好き」「山が好き」といった、みんなのカルチャーから始まることも多いですね。

小阿瀬:僕らは山に登るのが好きなので、ものをつくる以外のところでも仕事と地続きになっているってところはありますね。先日も、山のロッジの改修についての相談があり、3人で2~3時間登って現場に視察に行ったりして。普段から山に登っていないと、こういう仕事はできませんよね(笑)。とにかくなんでもできそうなこと、面白そうなことは全部やりたいと思っています。

群馬・東京の2か所に事務所がありますが、どちらも大事な拠点です。群馬の事務所は、シェアオフィスやイベントスペースの運営もしていますし、東京の事務所も最近、イベントスペースとして貸し出すことを始めました。今後、この2拠点を軸にさまざまなジャンルのクリエイターたちとの交流の場にして、自分たちの視野も広げていけたらいいなと考えています。外部の人たちと何か新しいことにチャレンジできる、そういう場所がもてるのは、会社として重要なことだと思いますね。

取材・文:佐藤理子(Playce) 撮影:田実雄大

SNARK Inc.
http://snark.cc/

エーアンドエー株式会社
http://www.aanda.co.jp