ubique

2023 / 荒川技研工業

2023年9月5日に50周年を迎えた荒川技研工業。同社の提供するプロダクトの機能美と佇まいにフォーカスした展覧会のインスタレーションを手掛けました。

ワイヤーシステム「ARAKAWA GRIP」は、建築家やデザイナーに長年愛用され続けているプロダクトであり、空間業を営んでいる私にとって、なくてはならない存在です。「ARAKAWA GRIP」はひっそりと存在しながらも、まるで森の中の環境音のように、さまざまな空間に寄り添います。

それらの美しいプロダクトが生み出される工場では、パーツの元となる金属の光沢やテクスチャーがとても印象的でした。それらの情景をインスピレーションに、「ARAKAWA GRIP」のアイデンティティである金属という素材、ワイヤーの緊張感、そしてそれらを強調するために光の要素を掛け合わせました。

「ubique(ウビークエ)」とはラテン語で「遍在すること」。いたるところに、どこにでも存在するということを意味します。身の回りにささやかにありながらも、確かにそこに存在する。まさに「ARAKAWA GRIP」の立ち居振る舞いそのものであり、空気や風、光と影といった確かに存在しながらも、捉えどころなく揺らいでいる自然風景の要素に通ずるその姿に、私はとても魅力を覚えます。

“ubique” Arakawa’s 50th Anniversary Exhibition -Hiroto Yoshizoe X ARAKAWA GRIP-
吉添裕人(空間デザイナー・アーティスト)

吉添裕人(空間デザイナー・アーティスト)

1986年生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。独立後、都市開発や商業施設開発等の空間デザインを主軸としたクライアントワークに従事。制作活動では日本の文化背景や宗教観と通ずる「変化」「動き」「時間」といった不完全で流動性のある事象を扱う。なかでも変容し続ける「光と影」の要素を軸に探究。すべての事物(素材)は光と影を瞬間的にかたちに留め、認知するための媒体であると捉え、その間に生じる現象と知覚の関係性を用いて制作を行う。HUBLOT DESIGN PRIZE 2022 Finalist、LEXUS DESIGN AWARD 2017グランプリなど受賞多数。京都芸術大学非常勤講師。

https://www.hirotoyoshizoe.com/
https://www.instagram.com/hirotoyoshizoe/

2024/8/29 14:40