Orbit

2022

Orbit(オービット)は、刻々と変化する太陽の光をモチーフに制作しました。この作品の特徴は、見る角度によって常に形状が変化する発光部の設計にあります。これはガラスシェードの特徴的な断面形状によるもので、外見はシンプルな円柱型ですが、内部構造は凸レンズ、凹レンズにヒントを得ており、拡大縮小された像によって内部の光がシームレスに変化していきます。シェードを中心として周回しながら刻々と変化する様子は、「太陽」を中心として周回する私たちの視点を体現しています。

ガラスシェードには適正処理された廃蛍光灯と廃ブラウン管を用いた100%リサイクルガラスが採用されています。手作業によって融解したガラスを特注の金型に流し込むキャスト技法は、ガラス表面に特有の揺らめきを描き出し、リサイクルガラスが持つ自然で粗野な気泡が、光により一層豊かな表情を与えてくれます。

ガラスを保持する金属パーツは放熱を考慮したアルミニウム製です。機械切削によって精密に加工された後にアルマイト処理を施し、アルミニウムカラーとタンタルグレーの2色をガラスと光の色彩に合わせて制作。さらにそのユニットは連結することによって拡張が可能で、空間に伸びていくラインは普遍的でありながらも、私が感じた強烈な太陽光線の直線的なイメージが引用されています。

消え去りつつある蛍光灯とブラウン管は時代を越えて私たちを照らし続けてくれました。さまざまな光の記憶を携えた素材を集め、丁寧に扱い、再び熱を孕み、姿形を変え、新たな光を纏う。「太陽」の存在そのものをすくい取ったような、熱を帯びながら光輝くリサイクルガラスの姿は、まさに過去の光と未来の光を繋ぐマテリアルであると感じています。

Orbit – Glass Studio
Orbit – Recycling Plant
吉添裕人(空間デザイナー・アーティスト)

吉添裕人(空間デザイナー・アーティスト)

1986年生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。独立後、都市開発や商業施設開発等の空間デザインを主軸としたクライアントワークに従事。制作活動では日本の文化背景や宗教観と通ずる「変化」「動き」「時間」といった不完全で流動性のある事象を扱う。なかでも変容し続ける「光と影」の要素を軸に探究。すべての事物(素材)は光と影を瞬間的にかたちに留め、認知するための媒体であると捉え、その間に生じる現象と知覚の関係性を用いて制作を行う。HUBLOT DESIGN PRIZE 2022 Finalist、LEXUS DESIGN AWARD 2017グランプリなど受賞多数。京都芸術大学非常勤講師。

https://www.hirotoyoshizoe.com/
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2024/8/29 14:40