JDN編集部の「そういえば、」2020年2月

JDN編集部の「そういえば、」2020年2月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

Deter Ramsのドキュメンタリー「Rams」

そういえば、BRAUNのデザイナーとして知られるDeter Ramsのドキュメンタリー「Rams」をようやく観ました。

9月の「そういえば、」で書いたドキュメンタリー「ヘルベチカ〜世界を魅了する書体〜」とおなじく、監督はGary Hustwitが務めています。「ヘルベチカ」ではポストロックやエレクトロニカの音楽が全編に流れて気持ちよかったのですが、「Rams」ではBrian Enoが音楽を提供していて、Ramsのプロダクトに漂うスタイリッシュで凛とした雰囲気が、電子音とマッチしていて鑑賞者の耳を心地よくしてくれます。

劇中では深澤直人さんが登場し、Ramsへの愛を語っているのですが、「彼は最初で最後のプロダクトデザイナーだ」と話すシーンが印象に残り、観終わってからそれってどういうことなのかなと考えてしまいました。

Ramsがデザイナーとして活動をはじめた50年代は、工業製品が大量生産され、中流家庭の象徴としての電化製品が、多くの人々の暮らしの中に入り込みはじめた時代です。当時のデザイナーたちは、社会のドラスティックな変化がもたらす人々の“ふつう”という概念の変化を、モノのデザインを通して向き合う必要性があったのだろうと思います。

そんな時代の変わり目から、第一線でデザインし続けていたRamsがかかげる「Less, but better」の思想、そしてGood Designのための10の条件は、いままさに議論されていることと符合していて、Ramsの先見性というべきか、本質を見据え続ける姿勢に畏れ入ると同時に、デザインが辿ってきてしまった、必ずしも正しかったとは言えないであろう過程に思いを馳せてしまいます。

映画の後半、Vitra Design MuseumでのRamsの展示制作の過程が映されますが、ミュージアムに展示されたイスなどに歯に衣着せぬ口撃をするRamsの姿は、あまりに痛快で少し笑ってしまうのですが、「ほんとそうだよなあ」とうなずいてしまうことしきりでした。

そういった学びや示唆の多い映画ではありますが、Enoのスコアとともに映し出されるRamsのプロダクトの美しさに、ただただうっとりできるのもこの映画の魅力です。Vimeoで気軽にレンタルできますのでぜひとも。

https://www.hustwit.com/rams

(堀合 俊博)

こだわりの香水選びを楽しめる「LIQUIDES IMAGINAIRES」

そういえば、最近新しい香水を購入しました。「LIQUIDES IMAGINAIRES(リキットイマジネ)」というニッチフレグランスのシリーズのひとつです。

ニッチフレグランスとは、ファッションブランドが出している一般的なものではなく、個性を追求してつくられたフレグランスのことです。

LIQUIDES IMAGINAIRES

この香水と出会ったのは不定期オープンのポップアップ形式のセレクトショップ(Lounge Sai)で、それぞれ個性的な香りと色が並んでいました。シリーズや香りのテーマごとに合わせて珍しい香料や希少性の高い天然香料が調合されていて、まるでワインを選ぶように自分に合うこだわりの香水選びを楽しめます。

私が購入したのは、「Fleuve Tandre」という1本。

LIQUIDES IMAGINAIRES「Fleuve Tandre」

さわやかな甘さがあり、後から少しスパイシーさも感じる表現し難い香りです。主張が強くないので、日常的にも使えています。「LIQUIDES IMAGINAIRES」は、日本での取り扱いがそこまで多くはないため、見かけたらぜひ香りをくらべてみてください。

Lounge Saiオーナー Instagram
https://www.instagram.com/longebose/

(坂 美穂子)

脇田あすかさんの、日々の記録にまつわる展示

そういえば、先日、グラフィックデザイナー・脇田あすかさんの展示「HAPPENING」に行ってきました。

本展は、脇田さんのアートブック『HAPPENING』の出版記念展で、会場では本の中から抜粋したオリジナルプリントの展示・販売がおこなわれていました。

脇田さんは、ブックデザイナーの祖父江慎さんが率いるコズフィッシュに在籍し、雑誌『装苑』のデザインやパルコの広告などさまざまなデザインを手がけています。

アートブック『HAPPENING』は、彼女自身が綴った日々の記録と、それにまつわる人物のイラストが1日分ずつ見開きにまとめられている一冊。東京藝術大学の卒業制作で発表した原作をベースに、新たに2018年の記録を加えて制作された新刊になっています。

展示されたオリジナルプリントは、よく見ると年月を感じさせる加工が施されています。脇田さんに加工法についてお聞きすると、写真用紙にイラストを印刷したものを、一枚一枚手作業で、コーヒーを使ったエイジング加工を施しているとのこと。イラストはもちろんですが、「アイリッシュ・パブにいるわたしの目の前で車がごうごうと燃えていた」「ウェディングドレスっていう名前のバラを買ってみた」など、その日ごとに綴られた一文からも想像力をかきたてられました。

脇田あすかさん Instagram
https://www.instagram.com/wakidaasuka/

(石田 織座)