JDN編集部の「そういえば、」2019年9月

JDN編集部の「そういえば、」2019年9月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

クリームソーダ職人・tunekawaのクリームソーダ

そういえば、太陽が照りつけていたある日のイベントで味わった、クリームソーダ職人・tsunekawaのクリームソーダに胸が高鳴りました。

え? クリームソーダの職人?って思いますよね。ひとつのメニューだけの職人だなんて!いえいえその肩書き、決して大袈裟ではないんです。

空色のクリームソーダ、月曜日のクリームソーダ、雪の日のクリームソーダ、などバリエーション豊富で、それぞれユニークなネーミングに合った内容です。

職人いわくクリームソーダの定義は“炭酸+アイスクリーム”だそうで、涼やかなグラデーションと冷たいアイスのコントラストに誰しもがゴクリと喉を鳴らす……。その日のイベントでは「夏の1日をグラスの中に」というコンセプトで、青空・夕空・夜の空の3種類の中から私は夜の空をチョイス。シュワっとソーダ水の喉越しに涼を感じ、溶けゆくクリームの味の変化も楽しめました。

クリームソーダ【夜の空】

クリームソーダ【夜の空】

tsunekawaのSNSに投稿されているクリームソーダはどれもチャーミングで、眺めているだけでも幸せな気分に。その1杯に添えられたエピソードや、ちょっとした作り方のコツなんかもあり、読み物としても楽しいです。“旅する喫茶”と称して、全国津々浦々のイベントに出店中で、シーズンオフと思われがちな秋冬ならではのメニューもあるので、ぜひチェックしてみてくださいね!

Instagram
https://www.instagram.com/tsunekawa_/
Twitter
https://twitter.com/tsunekawa_

(栗木建吾)

絵本に出てきそうな、3つの茶室

そういえば、夏季休暇中に、建築家・藤森照信さんが設計した3つの茶室を見に行ってきました。藤森さんの地元でもある、長野県茅野市の神長官守矢史料館近くに点在している建築で、ちょっとした丘を登っていくと風景の中に突然3つの茶室があらわれます。

空飛ぶ泥舟

可愛らしいキャラクターのようにも見える、「空飛ぶ泥舟」

3つの茶室はそれぞれ、建築の特徴をあらわした、「空飛ぶ泥舟」「高過庵(たかすぎあん)」「低過庵(ひくすぎあん)」という名前がつけられています。どの茶室も時折なかに入れる公開日が設けられるようです。「空飛ぶ泥舟」は中に入ると少しゆらゆらするようなのですが、宇宙船のような外観と、窓から見える眺望を想像すると中に入りたい気持ちが湧きました。

高過庵

ツリーハウスのような「高過庵」

低過庵

「低過庵」。右の写真は、入口のとびらについている取っ手です

自然とまわりの風景に溶け込むように存在している茶室は、まさに絵本や物語に出てきそうな建築でした。駅から少し離れた場所にありますが、ぜひその目で見てみてほしい建築です!

(石田 織座)

Helveticaのドキュメンタリーからリバイバルについて考える

そういえば、前から気になっていたHelveticaのドキュメンタリー「ヘルベチカ〜世界を魅了する書体〜」のDVDを買ってみました。

この映画では、「MUJI」や「Panasonic」、「evian」などのロゴに使用されているフォントとして広く知られる、スイス生まれのHeliveticaについて、その成り立ちや決して無視できない存在の大きさが、名だたるデザイナーたちのインタビューを通して語られていきます。

アメリカンアパレルのロゴに使用されれば“生意気”な感じに、アメリカン航空のロゴからは“穏健さ”を感じると語られるHelveticaは、中立的で、パーフェクトに均整の取れた、きわめて汎用性の高いフォントとして使用されていきますが、映画が後半になるに連れて、その印象が大きく変わっていく過程が描かれていきます。

いたるところに企業のロゴとして存在するその文字は、グローバリズムによって画一化が進んだ資本主義の象徴のようにとらえられ、ある種権威的な存在として、デザイナーたちのなかにアンチを生んでしまう。80年代のポストモダンはその混乱に拍車をかけ、さまざまなデザイナーが手書きでもなんでも好きなようにやりはじめる時代に突入していったそうです。

映画の終盤では、新しい世代の登場によって再びHelveticaの再評価が語られますが、劇中でも触れられているように、プロとアンチの両側に振り切った振り子は、これからどうなっていくのでしょうか。映画は2007年の作品なので、そのさきのことを少しぼくたちは知っているけれど、オンスクリーンの文字表現についての議論が、またこれからの景色をみせてくれるのではと思っています(いま、それに関連する記事を作成中)。

ファッションや音楽でも80年代、90年代とリバイバルが起こりましたが、今後はゼロ年代、テン年代のリバイバルが、やがてやってくるのでしょうか。そういえば、スピルバーグのSF映画『レディ・プレイヤー・ワン』の登場人物が「JOY DIVISION」(70年代後半の英国バンド)のTシャツを着てましたけど、何周目かのリバイバルが訪れた未来ならありそうな話だなと思ったり。未来はきっと懐かしいはずだって、だれかが言ってたような。

(堀合俊博)