仏壇づくりの技術を新しいかたちに「川辺手練団」

photo:Kosuke Tamura photo:Kosuke Tamura

ランドスケーププロダクツが携わる仕事や人を紹介するコラムの第2回目。今回はブランディングディレクションをお手伝いしている、鹿児島県で日々仏壇づくりに励む方々と新たにスタートさせた「川辺手練団(かわなべしゅれんだん)」についてご紹介します。

 

川辺に根づく、仏壇づくりという伝統

鹿児島県の中心部から車で南へ1時間ほどの、南九州市川辺町。緑豊かな盆地に田畑の広がるこの土地は、古くから仏壇の生産地として栄えてきました。元々この辺りは信仰心の篤い土地。町を流れる清水側沿いの岸壁にある磨崖仏(まがいぶつ/岩壁に直接彫られた仏像)も、そのことを物語ります。

photo:Kosuke Tamura

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そんな土地柄を礎に、この町は仏壇のふるさととして成長し、1975年には全国の仏壇産地に先駆けて国の伝統工芸品に指定されました。仏壇業に支えられてきた町は、時代やライフスタイルの変化によって仏壇のある家が急激に減るなか、町を取り巻く現在の状況は決して容易なものではありません。

仏壇づくりの「7つの技」に、新たな輝きを

しかし川辺には、今でも仏壇をつくるのに必要な7つの職人技である、木地→蒔絵→彫刻→宮殿→金具→塗り→箔(仕上げ)というすべてがそろいます。それは全国の主要産地を見渡しても、そうあることでありません。私たちはその細やかな手作業の仕事に惚れ込みました。

蒔絵(photo:Kosuke Tamura)

蒔絵(photo:Kosuke Tamura)

宮殿(photo:Kosuke Tamura)

宮殿(photo:Kosuke Tamura)

箔(仕上げ)photo:Kosuke Tamura

箔(仕上げ)photo:Kosuke Tamura

この守り継いできた技を磨きあげ、他の製品にも応用して現在のライフスタイルに合うものとして世界に送り出したい。引いては、より多くの人に仏壇のある暮らしに再び目を向けてほしい。そんな思いから、2016年に「川辺手練団」のプロジェクトが始まりました。私たちは川辺仏壇の技術を用いた新商品開発のお手伝いと、ギフトショー出展など販路拡大のサポートという大きく2つに携わりました。新商品開発については日頃私たちが付き合いのあるデザイナーに声をかけ、川辺仏壇の技術に触れてもらい、そこから考えられる新商品開発に向けて協業してもらいました。

川辺の「川」の文字やお仏壇を想起させる「川辺手練団」のロゴ

仏壇づくりで培った7つの技術を使って生み出したのは、神棚やキャビネット、キャリーバッグやスピーカーなどさまざま。機能的で洗練されたデザインのアイテムのみ、「川辺手練団」のロゴが押されます。デザイナーとの協働、職人同士の研鑽など、一つひとつのアイテムの裏側には新しい価値に挑む職人の姿があるのです。

フレーム神棚:「宮殿」の技法を使ってつくられた神棚。スペースを取らないシンプルなつくりです(photo:Kosuke Tamura)

フレーム神棚:「宮殿」の技法を使ってつくられた神棚。スペースを取らないシンプルなつくりです(photo:Kosuke Tamura)

フレームキャビネット:脚や角には仏壇づくりの技法をつかった金具が使用されています。また、木地には漆を刷り込んで仕上げる「拭き漆」という技法が施されています(photo:Kosuke Tamura)

CARRY CONTAINER COURI:漆や真鍮の金具をつかったキャリーバッグ(photo:Kosuke Tamura)

CARRY CONTAINER COURI:漆や真鍮の金具をつかったキャリーバッグ(photo:Kosuke Tamura)

スピーカー:漆を表面に使用(photo:Kosuke Tamura)

この取り組みをスタートさせることで、職人から職人へと大切に引き継がれてきた仏壇づくりの技が、新たなアイテムに生かされることになりました。伝統を一歩踏み出した試みやデザインを「川辺手練団」は歓迎します。自分たちの持つ伝統技術を継承しつつも、今までにはない試みによるものづくりを永く目指していきます。

テキスト:黒瀬優佳(Landscape Products)

川辺手練団
http://kawanabe-syurendan.com/

Landscape Products

Landscape Products(デザインチーム)

1997年に中原慎一郎を中心に結成。1940年~60年代の古き良きデザインをルーツに、新しいものづくりを目指すデザインチーム。2000年12月にオリジナル家具、雑貨を製造販売するインテリアショップ「プレイマウンテン」を神宮前にオープン(後に千駄ヶ谷に移転)。独自のモダンなスタイルで家具のみならず住宅やオフィス、店舗のデザイン、そしてカフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、ヴェトナム麺食道「Pho 321 Noodle bar」を同じく千駄ヶ谷にて営業中。
http://landscape-products.net/