超細密にカットされた紙の模型「1/100建築模型用添景セット」は、葉書サイズのシートに収められたパーツを組み立てる紙のプラモデル。人物や家具など実用的なアイテムのほか、ハロウィンやスポーツクライミングなど、さまざまなテーマで製品化されています。
photo:Kenji MASUNAGA
もともとは建築模型をつくるときに使う添景(建物の脇に添える人物や樹木など)として製品化されましたが、いまでは一般向けのペーパープロダクトとして世界中で知られる人気製品になりました。2011年に「テラダモケイ」という独立したブランドになり、現在、80種類近い製品がリリースされています。
1/100建築模型用添景セット No.1 住宅編
テラダモケイ第1号製品。建築模型に使えるよう、人物や家具などの実用的なアイテムを収録。
photo:Kenji MASUNAGA
1/100建築模型用添景セット No.4 動物園編
建築模型以外のアイテムとして動物が登場。以降、お花見や工事現場など、ユニークなテーマが続々登場します。
1/100建築模型用添景セット No.77 りんご狩り編
9月1日発売の最新作。そういえば「ぶどう狩り編」や「もみじ狩り編」もありました…。
photo:Kenji MASUNAGA
そんな大人気のテラダモケイですが、通常の製品とは別に映像作品がつくられていることをご存知でしょうか? 「テラダモケイピクチャーズ」というレーベルから、いままでに3作品が発表されています。テラダモケイの生みの親である寺田尚樹さんが制作総指揮をとり、NHK Eテレの番組「デザインあ」の『解散!』でおなじみの岡崎智弘さんが映像制作を担当。添景セットのパーツを少しずつ動かして、コマ撮りした画像をつないで映像をつくるという壮大なプロジェクトです。
2015年に制作された記念すべき第一作は、渋谷のスクランブル交差点の様子を映像化した「1/100 SHIBUYA Crossing」という作品。テラダモケイのキャラクター、原器くん約1,000人がいっせいに交差点を渡るという2分半のシンプルな映像ですが、その迫力に圧倒されます。YouTubeに動画がアップされると海外でも話題になり、17万回以上の視聴回数を記録しているとか(2017年9月現在)。
「1/100 SHIBUYA Crossing」撮影の様子。左右の足が交互に動くよう、少しずつパーツを動かしながら置いていく。
続く2016年には、田植えをテーマにした「1/100 RICE Planting」を制作。原器くんが約8万本の稲を淡々と植えていくという作品です。単純な動作のリピートが快感で、ついずっと見てしまう不思議な魅力も。
そして、今年2017年7月末に発表された第3作は、通勤ラッシュ時の駅の情景を描いた「1/100 TRAIN Station」。約3,000人の原器くんがホームで電車の乗り降りをするというコマ撮りのアニメーションです。通常のアニメーションは1秒間に24コマですが、テラダモケイピクチャーズの動画は10コマだそう。コマ数を減らしたことで動きが少しカクカクし、独特の味わいをつくりだしています。
3作品の中で最も撮影に時間を要したのが、この「1/100 TRAIN Station」。原器くんを動かして撮影、また少し動かして撮影、という根気が要る作業を7人のスタッフが11日間かけておこなったとか…。途方もない労力を費やし、ようやく動画が完成したそうです(制作プロセスについては、テラダモケイの新聞「ほぼ月刊テラダニュース」第41号を参照ください)。
1/100スケールのテラダモケイでは、各パーツが極小になるため、普通の型抜きではなく、レーザーカットで抜いているそう。レーザーの出力が強すぎると紙がこげてしまったり、つなぎの部分が切れてしまったりするので、絶妙な加減でカットしているのだとか。製造過程において、すでにかなり職人技が必要なアイテムなのですが、それをさらに細かく動かしてコマ撮り映像にするという姿勢に頭が下がります。
「紙でどこまで表現できるか?」という、あくなき情熱と探究心。テラダモケイこそ究極の「技あり紙もの」ではないでしょうか。
テラダモケイ
http://www.teradamokei.jp/
テラダモケイピクチャーズ
http://www.teradamokei.jp/teradamokeipictures/