年始にあたり。

元旦、6時54分自室からの初日の出 元旦、6時54分自室からの初日の出

この正月、改めて師匠の黒木靖夫さんの語録を読み返してみた。例えば、1991年の「offer03」に掲載された講演記録には、

「日本人のクリエイティブな力が落ちてきた理由は、産業構造の変化に狂奔したことにあります。世界で生き残るのは、文化をリニューアルできる国だと言われています。産業革命後、工芸家は昔と違い、モノをつくらなくてもデザインだけで評価され、生活していくことが可能になりました。デザイン、すなわちソフトウェアで勝負できる時代になったのです。日本はモノから離れたモノ、伝播力があり相手に対して定着力があるソフトウェアを、どう世界に発信するかを考えるべきです。世界のどこにいても同じように情報が享受できる将来、『なぜ富山か』『なぜ高岡か』という、地方としての特色が問われるようになるでしょう。」

25年前に黒木さんは、この時代を見通していた。

1月6日からラスベガスで開催されたCES2017(コンシューマーエレクトロニクス関連展示会)では、ロボット、センサー、AIが新たな産業基盤技術である事がより鮮明となった。人々の英知は、次の時代を開けようとしている。その時、黒木さんの言葉を借りるならデザイン、すなわちソフトウェアで勝負する時代だ。デザインに身を置くものとして、頭の切り替えが重要な一年のスタートとなった。デザインイノベーションを本格化させる時代である。

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/