MONO JAPAN JAPANESE CRAFT & DESIGN 2017 in Amsterdam

出展者の打合せや交流の場となるメインダイニングカフェ、長坂常さんデザインのテーブルも 出展者の打合せや交流の場となるメインダイニングカフェ、長坂常さんデザインのテーブルも

「MONO JAPAN JAPANESE CRAFT & DESIGN 2017」をプロデュースする在アムステルダムの中條永味子さんから講演を依頼され、15年ぶりにアムステルダムに向かった。

2月2日から2月5日まで開催された「MONO JAPAN」は、日本のクラフトやデザインプロダクトに特化した展示・即売会で、昨年の第1回に続いて今回で2回目となる。会場となったのは、アムステルダムの中央駅から2キロほど離れたロイドホテル。なんでも昔は大航海時代の一時簡易宿、一部は刑務所だったとか。主催団体はJapan Cultural Exchange(JCE)とロイドホテル(Lloyd Hotel & Cultural Embassy)。

ロイドホテルの外観

ロイドホテルの外観

歴史や文化を重んじるヨーロッパで、「日本の工芸の手作り」を体感する機会を設定。日本の「MONO」の魅力に関するトークイベントやアート作品の展示、日本の出展者による「MONO」づくり体験ができるワークショップなど多彩な内容。出展者とプロダクト、来場者が間近で出会い、「MONO」の向こう側に見える歴史や美意識、価値を共有する場として位置づけられている。

「MAKER KAMER(作り手の部屋)」

「MAKER KAMER(作り手の部屋)」

出展者は、2016/ Arita(佐賀県)、830デザインラボ(東京都大田区)、Aizu Creative Japan(福島県)、淡路市商工会(兵庫県)、kitta(沖縄県)ほか合計26組。各出展者にはホテルの部屋が1室あてがわれ、日常生活の延長で展示が行われた。実際に宿泊している出展者も多く、なんともユニークな展示会となっていた。ミラノやパリ、フランクフルト、NYの展示会との大きな違いは、作り手と買い手がゆったりと会話できる点。相互理解の上で実際にその場で購入されるバイヤー、消費者方が多く、他の展示会とは格段の差がある。今回すっかりこのスキームに魅せられたので、来年は私の関係する行政や会社に出展を呼びかけようと思った。

クラフトデザイナー佐藤延弘さんと小松左苗さんによるブランド「PULL+PUSH PRODUCTS.」

クラフトデザイナー佐藤延弘さんと小松左苗さんによるブランド「PULL+PUSH PRODUCTS.」

宇南山加子さんがデザイナー兼ディレクターである「SyuRo」

宇南山加子さんがデザイナー兼ディレクターである「SyuRo」

沖縄県大宜味市の草木染めブランド「kitta」

沖縄県大宜味市の草木染めブランド「kitta」

2016/Arita

2016/Arita

長崎県東彼杵郡東彼杵町の日本茶「TSUNAGU SONOGI TEA FARMERS」

長崎県東彼杵郡東彼杵町の日本茶「TSUNAGU SONOGI TEA FARMERS」

 オランダ人のDaan Kokさんのレクチャーには、「魂は細部に宿る」のスライドの一コマも

オランダ人のDaan Kokさんのレクチャーには、「魂は細部に宿る」のスライドの一コマも

ただ、課題もある。既存のホテルを活用した展開だけにキャパシティーが限られる。せいぜい30室、あるいは40室が限界だろう。いつもこの歴史あるホテルを活用できるのか? 一方、展示会後のルート開拓や販売サポートは「MONO JAPAN」が窓口となって進めてくれる。海外拠点を持つ体力と言葉の壁を担ってくれるシステムに前向きに検討する作り手も現れるだろう。何よりこの主催者と出展者が共に一体となった空気、時間に感動した。概要や出展者については下記サイトを参考にしてください。

http://www.monojapan.nl/jp_home/

また、アムステルダムつながりでお知らせ。3月23日に吉田龍太郎さん率いる「TIME & STYLE」アムステルダム店がオープンします。900平米の歴史ある建造物は元警察署だそうです。こちらも注目です!!

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/